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天敵、再び

 ひよちゃんの放つ魔法が空を飛び、襲いかかってくるモンスターが次々と地面に向けて落下していく。その様子を眺め、驚いているサイトとサンセット、そして当然と思っているきり。そして何故か自分も飛んでいるアリア。


「アリアも乗らないの?」

「んー、僕は飛んだ方が楽しいし」

「そっか」


 すでにアリアの二重人格については多少、本人から聞き及んでいる二人は納得していた。世界最強のプレイヤーとしての思考などが表に出ていれば、当然面倒ごとに発展しているだろう、と。だがそれが起きないって考えれば、納得に足るのだ。


「うわ、凄い経験値」

「さっさとスキルのレベルを上げちゃってね。技術プレイヤースキルを身につけるのはそれからでも遅くないから」

「熟練度は良いの?」

「そっちも後からでいけるから。サイト、ちゃんと教えてあげてね」

「うーん……僕よりももっと教わるべき相手がいると思うんだけどね」


 その教えるべき相手は空を飛び、もう一人はサイトに任せた。その事実にサイトが少し呆れていると


「アリア! 前から大きなドラゴンが!」

「んー、おっけー。行ってくるね!」

「行ってらっしゃい」


 きりの言葉にアリアは頷いて、翼をさらに大きく広げた。そしてその翼で大気を叩いた。その衝撃がサイトたちに迫ったが


「よっと」


 きりはその衝撃の中心を見極め、そこを斬りつけることによって霧散させた。そんな目の前で行われた妙技に二人が目を白黒させていると


「何あの剣!?」


 剣のように見えない剣が、例えるのならば龍の顎そのものだった。


「スゲーかっけぇ」

「サイト、今私はあなたの感性を知って心底呆れているのだけど」

「良いじゃないか、カッコいい物が好きでも。可愛い女の子ひゃっほいと騒ぐ寄りは数段マシじゃ無いかな?」

「一理ある、けど呆れている」


 アリアの剣が両手で、背負うように構えられた。そしてそのまま、空中で器用に腰を低く落として


「喰らえ、《龍のアギト》」

「「「名前もマンマ!?」」」


 思わず三人が叫ぶ、そしてそれと同時にアリアの剣が質量保存の法則を無視して肥大化し、その顎で飛来するドラゴンの体を噛み砕いた。


「んー、あんまり、かな」


 アリアは剣を左右に振るい、軽く息を吐いて背中の鞘に元通りの姿になった剣を納めた。そして翼を広げて


「滑空しているよ……」

「自由奔放すぎる……」


 もう慣れてしまったきりは、ほろりと涙を流した。


*****


「てぃてぃてぃのてぃ!」


 アリアの高速の剣戟が次々と迫るモンスターの大群を蹴散らす。その数は20を超え、30へと至った。そこでようやく、モンスターたちはアリアを警戒したのか、少し距離をとろうとした。だが


「生憎、すでに《糸陣結界》があるので切り裂かれますよ」


 忠告虚しく、モンスターたちが糸陣に切り刻まれた。そしてアリアに守られていた三人は、経験値の量に呆然としていた。

 ここは適正レベルが4000を越える地下森林ダンジョン、薄暗い木々の隙間を獣たちが縦横無尽に駆け巡る、そんなダンジョンだった。だが、例えそんなダンジョンだろうとアリアには敵わない。


「星光連斬!」


 スキルではない純粋な高速の七連斬、それが次々とモンスターを切り裂いて――残心。そのまま息を吐いて


「まだ、ダメだな」

「アリア?」

「もう少し続けられるはずなんだよなぁ」


 イメージの中ではコンボを無限に続けられるはずなんだ、とアリアは呟いた。でもそれは、アリアのステータスからしてみれば必要ない物だ。


「サイト、サンセット。ついでにきりもレベルどれぐらい上がった?」

「僕は大体2500くらい上がったよ」

「私は3000くらい」

「私は1000とちょっとくらい」


 サイトとサンセット、そしてきりが同じくらいになった。アリアはそう思いながら翼を広げて周囲のモンスターを薙ぎ払った。威力はさほど無いが、アリアのステータスも併せればモンスターたちは次々と全損するほかない。


「喰らえ、《龍の顎》!」


 巨大な顎がモンスターたちをかみ砕く。その様子はまるで


「ゴッドイーターにあんなのあった気がする」

「し、言っちゃダメよ」

「もう遅いでしょ……」


 アリアの姿は天使のようだが、握っている剣は龍の顎そのもの。形容しがたいその姿を眺めていると、何故か、不安を覚えた。


「っ、アリア! 上!」

「へ?」


 直後、上から降ってきた巨大なそれにアリアは反応した。が、そこから動くことは出来なかった。何もすることは出来なかった。何故ならアリアの体が光となり、消え去ったからだ。


「……デカいと、きもいね」

「あ、あぁ……」

「アリアが消えたことに関してノーコメントな二人に疑問」


 きりは何故アリアが消えたのかを理解していた。アリアの唯一苦手なモンス多-、それが


「蜘蛛、ね」

「蜘蛛だね」

「気持ち悪いなぁ」


 三人はそれぞれの得物を構えて


「とりあえず倒さないといけないよね」

「そうだね」

「うん」


 きりとサイトは剣を構え、サンセットは弓矢を構えた。そして、かさかさ、とこっちを向いた蜘蛛を眺めて


「《パワーアロー》!」

「《アークペンタゴン》!」

「《エンチャント―フレイム》、《エンチャント―ウィンド》。《スターダストスプラッシュ》!」


 威力を高め、速度を高めた15連撃が蜘蛛を切り裂き、そこに高速の5連撃、そして矢が放たれた。それは蜘蛛の足を二本、吹き飛ばしたが


「っ!?」

「毒!?」

「解毒剤、持ってないよね?」


 反応できなかったサイトとサンセットを眺め、きりは少しばかり顔を顰めた。そしてそのまま剣を構え、蜘蛛と相対した。一人で支えるつもりだ。だからこそ、手を出さない。


「さぁ、来なよ。捌ききってみせるから」


 蜘蛛は何も言わず、地面を高速で駆け回った。それはきりたち三人を囲むようにして――アリアが先ほど見せたような、意図による結界を創り上げていた。そしてそのまま、三人の逃げ場を奪って


「毒液を吐く蜘蛛なんていて堪るか!」


 咄嗟に避けつつ、前に出る。顔が前に突き出されている隙に、《致命的位置クリティカルポイント》を刺し貫こうとしたが


「思った以上に素早い!?」


 アリアを見習ってSTRAGI型にしているのだが、それでも適正レベルが1000ほど足りないのだからまぁ、無理だろう。そんな風に冷静に考えつつ、きりは蜘蛛の足を避けようとした。だが蜘蛛の方が動きは速い。そして――きりは踏みつぶされていた。


「ヘルプ!」

「こっちは毒なんだよ!?」

「どっちもどうにもならない……」


 二人はすでに諦めムードだった。だが、直後


「っ!?」


 空から降ってきた巨大な斧が、蜘蛛を叩き潰した。そしてその斧の柄にとん、と軽やかに着地する影一つ。


「やれやれ、アリアの異常に気付けばこういう絡繰りでしたか。仕方ないと言えば、そうなのでしょうか? まぁ、なんにせよ問題無しですね」

「あ、あなたは?」

「――あなたは確か、アリアの友人の桐ヶ谷雛でしたね。こちらではきりですね」

「え!?」


 なんでリアルが割れているんだ、と驚いていると


「アリアの三重人格の一人、オバマと呼んでください」

「え……え!? 三重人格!?」

「さてと、ここから立ち去りましょうか。来なさい、《カルマ》」


 オバマの足下の影から漆黒の腕が這いずりだした。そして徐々にその全貌が露わになるが……巨人と言う他無い。身長20メートルはあるだろう。


「あのー、オバマさん?」

「サンセット、動かないでください。プチッと潰れたくなければ」

「はいぃ!?」


 そしてサイト、サンセット、きりが巨人の片手に乗せられ、オバマはその頭の上に立っていた。そのまま何事もなく、カーマインブラックスミスへと到達した。


明日も休み~


感想ください


現在ユニーク総合が5万未満、日本の人口を1億と仮定したならば2000人に一人、一度は読んでくださっている

そしてブックマークを500とすれば4人に一人がブックマークしてくれている

ある意味奇跡のようなものですよねこれ

さすがに海外の人は読んでいないですよね?

いましたらごめんなさい

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