オフ会
「アリア、あんまり動くと危ないぞ」
「あー、かもね。んじゃそろそろ降ろして」
アリアはゆっくりと床に降ろされ、振り向く。そしてアヤの体をぺたぺた、と触って
「体の調子はどう?」
「ん、相変わらず大丈夫だぜ。義足もな」
「それ、言って良かったの?」
「別段隠すことじゃねぇし」
アヤの言葉にエミと真白は驚いていた。それは別に、義足だからという理由では無かった。アヤの顔が悲壮感を一切感じさせなかったからだ。
「え、お姉ちゃんはどうして知っているの!?」
「秘密―」
うわムカつく、とエミは思った。だが何も言わず、じっと見つめていると
「良いぜ、アリア。別段隠すことじゃねぇって言っただろ?」
「アヤが良いなら良いけどさ、私は言わないよ?」
「ああ、これは私の事情だからな。アリアが言いたいって言ってもダメだぜ」
「言うつもりなんて無いよ、アヤ」
姉は確実に年上の女性と平然と話している。それに戸惑っていると
「言うまでも無いけどよ、あたしの両足は義足だよ」
「っ、大丈夫なの?」
「ああ、アリアのおかげでな」
「私、何かしたっけ?」
「アリアのおかげで歩けるようになったんだろうが、忘れんなよ。あたしはお前に感謝し続けてやるぜ」
「むぅ」
姉は少し恥ずかしそうに顔を赤くしていた。そして再び扉が開いて
「いらっしゃいませー、って真央?」
「なんだ、意外と似合っているな」
「そりゃー私だからね、似合っちゃうよ」
「コスプレみたいだがな」
「なんですと!?」
「真央、余り言い過ぎると可哀想ですよ」
少しゆっくりと、一人の女性が男性に続いて入ってきた。そしてふと、店内を睥睨して
「あぁ、やはり向こうとまったく同じですね」
「その声……アスカ?」
「そうですよ、エミ。そちらはピュアホワイトで合っていますか?」
「あ、はい。合っています……アスカさん」
「アスカで構いませんよ。店員さん、お仕事はしないのですか?」
アスカの悪戯っぽい言葉にアリアはそう言えば、と思い出したような表情になり
「こちらへどうぞ、お客様」
店員らしく、案内をした。
*****
「それで何故だか分からないけど三姉妹が揃ったわけね」
「んー、なんて言うのかさ、凄い偶然?」
「あっはっは」
必然でしょ、とシェリルは思いながら食器を食洗機に入れる。もはや、手洗いの時代はとうに過ぎ去っていたのだ。衣類も手洗いでないと生地が傷む、というのは過去の話だ。
「アスカ」
「なんでしょう?」
「何か飲みたい物があるのなら注文してね」
「そうですね……ちょっと、酸味が強い物が良いです」
「難しい注文ね……レモンの絞り汁じゃダメでしょ?」
「注文した側ですが不満を口にしますね」
アスカはそう言いながら微苦笑していた。そして
「レモンティーでお願いします。砂糖は少なめで」
「分かったわ」
キッチンの奥に引っ込むシェリルを見送り、アスかは少し頬を緩めていた。向こうでの親しい相手がこうしてリアルで働いている姿を眺めると少し不思議な気分だった。
「アリア」
「なに?」
「柘雄から聞いたんだがお前、料理が上手らしいな」
「そんなこと言ったんだ? なんでだろ」
「さぁな。だが笑顔だったぞ。本気で美味しいと思っているのだろうな」
「えへへ」
「他の家事も出来るそうだな」
「まぁね」
「それで就職が決まっているのだろう? かなりのハイスペックだな……正直、羨ましいな」
アリアはにやにや笑いを止められない。そしてアヤはそれを眺め、結婚しているのか? と、考えていた。
明日香は穏やかな気持ちでそれを眺め、エミは姉の変な様子をいつも通りだと思い、真白は生徒会長がそんな顔をするところを初めて見たため、驚いていた。
*****
「えー!? 4人でオフ会っすか!? 羨ましいっすよ!」
「そうですね、羨ましいです」
アーニャの不満そうな言葉にシアが続く。それに少し申し訳なく思いつつ、エミは笑った。それにアーニャが頬を膨らませていると
「今度は6人でオフ会しようよ」
「あぁ、それは少し無理かもしれません」
「ええ!?」
「私は妊婦ですからね、あまり出歩くことが出来ないんですよ。オフ会したい気持ちはもちろんあるんですよ?」
それなら仕方がない、と全員が納得した。しかし
「とりあえず店内で買い物もせずに話し合うのは止めて欲しいなーって思っていたり」
「良いじゃん、お姉ちゃん。いつか買うからさ」
「先に買ってよ……」
アリアはカウンターの向こうでグラスを磨きながらため息を吐いた。影響を受けたのは古き良きドラマなどであるバーテンダーだ。カッコ良かったから仕方がないのだ。アリアは自分の理論だったそれに満足しつつ、グラスを置いた。磨く必要は無い。
「アリア」
「んー? どったのレヴィ」
「そろそろ挑もうかなって思って。言っておくけど私以外もそんな感じに思っているらしいよ」
「ん……それは、僕にって事で良いんだよね? でもさ、なんで?」
「世界大会で改めて分かったの。私たちが全力を尽くしてでも戦える相手は《魔王の傘下》の中にしかいなくて、そして挑むべき相手はアリアしかいないのよ。《世界最強》のプレイヤーである、アリアしかいないのよ」
*****
アリアは目を閉じて瞑想していた。もっとも考えているのは簡単で、答えが出ている。自分が何をすべきか、を。
「――準備は良い?」
「うん、良いよ。レヴィのタイミングで始めて良いよ」
「そう、ありがとう。珍しく気遣いが出来たわね」
「ありがとう……で良いのかな?」
アリアは背中の剣の柄に手を添える。そしていつでも抜剣できるように腰を落として――レヴィは二丁の銃を構えた。
「《魔銃プライムフォトン》と《魔銃ネオタキオン》だね」
「そうよ。それでアリアの触れている剣を初めて見るのだけど……教えてくれたり?」
「教えませーん」
「でしょうね」
アリアの触れている剣は忘れられている剣、かつて振るった剣だ。もう、僕以外の誰も覚えていないだろう、とアリアは思っている。そして――
「全員同時でも良いけど、どうするの?」
「一人ずつ、が私は良いわね。そういうことだから邪魔するのは全員撃つから」
それはつまり、邪魔しても良いけど殺すという脅迫だ。アリアが愕然としているのを無視し、レヴィは両手を閃かせた。
「《ショットガントリガー》」
「《朧太刀》!」
拡散する弾丸、それに向けてアリアは高速で抜いた剣を一閃させた。その件は白銀の剣、全てを切り裂く事は出来なさそうな剣だ。
「《天空竜と超天魔皇龍錫の剣》」
「……ごめんちょっと待って。色々突っ込みたいんだけど、それ確かジャックに折られなかったっけ?」
「うん、折られたよ。でも柄だけは残っていたからね、作り直して鍛えたんだ」
「何のための?」
「何だって良いさ。この剣がレヴィを斬ること以外はね」
「あ、そ。でも斬れると思っているの?」
「うん」
アリアは地面を蹴った。そして自分を撃ち抜こうとする銃口を冷静な瞳で見つめて
「《透き通りし翼》!」
アリアの背中から2対4本の翼が生えた。それは薄緑に透き通って――アリアの動きが加速した。そしてそのまま銃口を避け、レヴィの背後に回り込んだ。
「《バニシングバレット》!」
「《飢えた毒》!」
消し飛ばすための弾丸が、喰らい融かす毒の剣に触れ、消滅した。そして――アリアは首を狙って剣を振るった、が
「《ペインバレット》! 《パラライズバレット》!」
「わ!?」
咄嗟に剣の腹で弾丸を受け止めようとしたが
「はっ!」
レヴィの蹴りが、小柄なアリアの体を吹き飛ばした。
私、ネーミングセンスが皆無だから真似もといパクリくらいしか出来ないんですよね
誰かアイデア欲しいっす
困ったら遊戯王に逃げるスタイル




