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マモンvsベル、シェリル、レヴィ

 マモンは動じない。むしろコレを待っていた、というのもあったからだ。そしてその表情は歓喜の笑みを浮かべていた。


「《バニシングレフト》! 《エクスプロードライト》!」

「あれ? それって対アリアちゃん専用の魔法じゃなかったの?」

「マモンはアリアちゃんよりも強い雰囲気があるのよ」

「酷い!?」


 妹が何かを言っているがそれを無視して両手を構える。そしてそのまま殴りに行くが


「シェリちゃんに喧嘩の仕方を教えたのは私だよ?」

「護身術よ!」

「それでも喧嘩に使えるんだよ?」


 マモンの攻撃は止まらない。シェリルの両手を避けつつ、矢を放ち続けている。それが狙うのはシェリルを除いた三人、そしてシェリルを狙うのは足による蹴りだ。


「護身術を教わったからこそ、マモンのくせも分かるわ!」

「生憎だけど、そのくせは気分で創り出していたり?」


 初動が完全に存在しなかった蹴りがシェリルの細い体を浮かばせた。そのまま拳が顔面を狙うが


「シェリルから離れなさい」

「レヴィも銃じゃ弓矢に勝てないって分かっているでしょ?」

「それはどうかな」

「と、言えるデュエル哲学」


 外野の言葉に少し頬を緩ませつつ、引き締める。そのまま銃口をマモンの額に向けて引き金を引いた。右の銃、《光銃プライムフォトン》と《闇銃ネオタキオン》が次々とマモンに弾丸を浴びせていくが


「あはは、あはははは!」

「五月蠅い黙れ! さっさと顔面ぶち抜かれて死ね!」

「無駄無駄無駄ぁ! レヴィの弾丸が私に届くことはない!」

「アンタの矢も届くわけがないでしょうが!」


 同じ男を取り合う親友同士は睨み合いながら銃弾と矢による弾幕を張っていた。それは一発の弾丸も通さず、一本の矢も通さなかった。だからこそ二人は動けない。だが動く者はいた。そして


「アリアちゃん、空気読もうね」

「ええ~?」

「二人が楽しんでいるんだから。割り込んだら二人に狙われるよ?」

「大丈夫だよ。だって僕が最強なんだからね」

「アリアちゃん」


 マモンに呼びかけられた。アリアはそれを不思議に思い、マモンに顔を向けた、その瞬間


「矢が!?」

「《バニシングシールド》!」

「っち!」


 ベルは魔法を使おうとし、使ってもシェリルの《消滅のバニシングシールド》によって消されると理解していた。だからこそ使えない、範囲外の自分は動くことで避けようとしたが――まぁ、あれだ。


「うん、無理だ」


 どうしてレヴィを避けて放たれた矢が全方位から迫っているのか分からない。ベルは淡々と思いながら――その身で矢を受けた。


*****


「シェリ姉、そろそろ無理そうだよ」

「うーん。マモンの矢は無限にあるのよね?」

「うん。でもレヴィの銃にそれは無い。あー、いや、まぁ、あることにはあるんだけどさ……」


 妙に歯切れの悪い妹に目を向けていると


「ぶっちゃけるとね、無限って付与するためには作成時の能力取得時の可能性以外の方法が無いんだよ。だからレヴィはあの二丁しか使っていないんだ」

「今その二丁の理由は?」

「まだ、無いよ。あの二丁の銃は僕が創り上げた銃の中でもTop10(ナンバーズ)って呼んでいるくらいのできだからね」

「ナンバーズ……62と107ね」

「うん」


 決闘者出なければ通じない会話、それをしながらシェリルは《消滅の盾(バニシングシールド)》で矢を消し飛ばし続けていた。だが盾は少しの方向しか防げない。残る方位は――全て、斬られていた。


「よっ、ほっ、せりゃっ」


 アリアの手の剣が閃く度に二桁を超える本数の矢が地面に落ち、その途中で光となって消える。それに終わりは無い。マモンがレヴィと撃ち合い続けている、そんな最中にもシェリルたちに向けて放たれ続けられているそれにレヴィは内心、舌を巻いていた。だが、それ以上に負けたくないという気持ちが強過ぎた。


「あぁ、もう! さっさと死ね!」

「お断り!」


 痺れを切らしたレヴィは叫びながら前に出た。そして握る銃を交差させて


「《黒十字ブラッククロス》!」

「ここでスキルは愚策だよ」

「っ!?」


 胸を手が刺し貫いている。レヴィはそれを客観的に見て、理解し――


「貫手?」

「レヴィの加速が仇となったのだよ」


 手を振るい、まるで血を払うかのようにしてレヴィの体が地面に落ちる、その途中で光となって消えた。そして


「次はシェリちゃん? それともアリアちゃん? はたまた、二人同時の姉妹?」

「シェリ姉が一人で行くってさ」

「はぁ……良いけど。でもさ、アリアちゃん」

「なに?」

「アルカが教えてくれているんだけどね、マモンに何をしても私は敵わないって」

「アルカが?」

「アルカの能力に《未来予測》があるの」


 そんなチート臭い能力があるのに勝てないんだ、とアリアは思った。だがアリアはシェリルがマモンに負けるのは当然だと思っていた。何故なら全力を出したマモンは《魔王の傘下》の誰と比べても負けそうにないのだ。唯一僕を除いて。


「シェリ姉」

「なによ」

「大丈夫、マモンが勝つからって諦めなくたって何とかなるさ」

「なると思うの?」

「マモンに一発くらい掠らせるくらいなら出来ると思うよ」

「その程度ならしない方がマシじゃないのかしら」


 シェリルは嘆息しながら両手を広げて


「行くわよ、マモン」

「おいで、シェリちゃん。弄んであげる」

「エロ同人みたいに?」

「もちろん」

「もちろんじゃねぇよ糞が……」


 シェリルは両手をパン、と音を立てて合わせて


「《セブンソード・ワン》」

「七本の剣を一本にした感じかな?」

「さて、ね」


 シェリルの手に握られた剣が振るわれた。それは飛来する数多の矢を切り裂き、光と化して消していくが――一向に、その終わりが見えそうにない。それにシェリルが辟易していると


「うん、その魔法は理解したよ」

「は?」

「七本分の剣の威力を凝縮した剣、それが《セブンソード》シリーズの最新作?」

「そうね……最新作ではあるけど、最高傑作では無いわ」

「へ?」

「《ミリオンソード・ファントム》」


 百万本の剣が空から降り注いだ。マモンはそれを眺め、地面を蹴った。避けられないから、ではない。もっと別の理由があった。


「隙あり」

「隙無し、よ」

「お?」

「《セブンソード・アーツ》」


 対至近距離用のスキルを使い、斬りかかった。だがそれはマモンの拳や蹴りを止めるには至らなかった。そして――


「《バニシングレフト》!」

「危ないなぁ」


 ずばん、と音を立てて右腕が宙を舞った。それを成したのはいつの間にかマモンの手に握られていた双剣だ。


「《エクスプロードライト》!」

「無駄だって理解しなよ」

「っ、無駄だったかな?」


 ダメージに顔を顰めつつ、シェリルは嗤った。そして


「《ファントムソードレイン》!」

「おー?」


 幻影の剣の雨、それがマモンに向けて降り注ぐ。しかしマモンの動きは――加速した。そのまま一歩で距離を詰めようとして


「おっと危ない。《ミリオンソード》って名前で騙されるところだったよ。本当は100万(ミリオン)を越えているんだねぇ」

「違うわよ。見えている剣が偽物で、見えていないのが本物だったのよ」

「なんとなく感覚で気付いてはいたけどね」


 マモンは双剣を振るい、軽い金属音と共に鞘に収めた。そして目を閉じて弓矢を構えて――放った。


「この程度なら届かない……って、あれ?」

「届かないのはただの矢、でしょう?」

「だからって……そんな発想はないわよ」


 放たれた矢、と思っていたのは一本の短剣だった。それが自分の心臓付近を刺し貫いているのを眺め、即死ではないと理解した。だが――


「終わりよ、シェリちゃん」


 蹴りが腹部に叩き込まれ、シェリルは光となった。

タイトル通りだ!

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