マモン
「マモンとアリスは最後が良いだろう。マリア、アジアン。任せて良いか?」
「うん、構わないよ。マモンを最後にしないと色々とダメそうだしね」
「そうだね、マリア」
「どういう意味かなぁ?」
怖い顔で迫るマモンを軽々と避けて
「マモンが輝くのは最後だからだろうな」
「え? そうかな?」
ベルの言葉であっさりと引くマモン。それに二人が苦笑しながら腰のハーネスに吊した様々な小瓶に触れた。そして二人は歩き
「マリア」
「アジアン」
「名乗りだけ……ですか?」
「他の皆様とは違うのですか?」
「僕たちはあの最強ギルドを名乗るにはまだ、力不足だからね」
「そゆこと」
そんなことはないけど、と誰もが思った。だがそれは誰も言わなかった。何故なら二人がさっさと構えて
「だから認められるために僕たちは全力を出させてもらうよ」
「そういうわけで、ごめんね」
マリアは地面を蹴った。そしてその背後から、影のように付随するアジアン。
「《ライトニングウィップ》!」
「《ライトニングボルト》!」
「燃え盛れ、《劫火》!」
「《scream、baby》」
マリアの握る剣から炎が、アジアンの握るナイフから黒板を爪で引っ掻くような耳障りな音が放たれる。それは、直接的なダメージを与え、
「く、《バインドウィップ》!」
「《アークスラッシュ》!」
「え!?」
鞭が弾かれた。それに呆然としている鞭使いの懐に飛び込んで、逆手に握っている《劫火》で斬りつけた。さらに続けての連続斬りが鞭使いを切り裂こうとするが
「《ライトニングボルト》!」
「おっと」
雷の放射、それを切り裂いて避けて前に出る。そしてそのまま《劫火》を握ったまま、
「《火克雷》!」
「え!?」
「《式神生成》、《急々如律令》!」
スキル発動を加速させるスキルで生成速度を高める。それと同時に小瓶を地面に叩きつけ、それからわき上がった漆黒の煙に手を突っ込んだ。
「《式神》スキル!? あんなネタスキルを使うなんて!?」
「《召喚》スキルと被りまくっているあのスキルを使うなんて!?」
「君たち……言い過ぎだよ」
「でも否定はしないんでしょ?」
「まぁね」
マリアは言いながらその手に巻き付いている炎を煙の中から引き抜いた。そしてそれが形を取り――蛇のような形を取った。
「《式神》軻遇突智」
「読めないんだけど」
「かぐつちだよ」
読めねぇよ、とアジアンはため息を吐いた。すると
「炎の蛇ならば! 《ウォーターランス》1024!」
「《木克水》、《茨の園》」
《陰陽術》スキルは攻撃性のスキルではない。エンチャント系、そして相手の攻撃を利用するスキルだ。だからこそ、様々な攻撃手段をもつマリアにとってはかなり使えるスキルなのだ。
「アジアン」
「うん」
「任せても良いかな?」
「良いよ」
「ありがとう。でも無理はしないでね」
「うん、しないよ。それじゃ、行ってくるね」
「うん、いってらっしゃい。気をつけてね……負けることはないと思うけどさ」
「うん、私もそう思っているよ」
*****
逆手に握っている《泣き叫ぶ短剣》を構えて目を閉じる。この間にも攻撃の手は休んでいないのだが、別段アジアンに当たることはない。アジアンが異常なまでに反応できているのだ。
「どうして目を閉じているのに避けられるのよ!?」
「ありえない!?」
「あり得ないなんて言った時点で可能性を否定しているよ。アリアを見てもなんとも思わないの?」
「「おお!」」
あ、こいつら阿呆だ、とアジアンは思った。まぁ、思いながら避け続けているのだが。
と、いうか相手は本当に阿呆だ、と思っていた。そもそも《感知》スキルや《探知》スキルは別に目で見て何かを感じ取る物じゃないのに、それに気づけないのか、と。
「まぁ、そろそろ良いかな?」
「え?」
「何が、ですか?」
「こっちから攻め込んでも、良いかな? ま、答えは要らないんだけどさ!」
アジアンの動きが加速した。少なくとも相手二人はそう思っていた。だがそれは別段間違ってはいない。ただただ、アジアンが全力を出していなかっただけで、今も少し速く動いている程度の認識なのだが。
「《ライトニングボルテックス》!」
「《サンダースネーク》!」
「《screambaby》」
握っている《泣き叫ぶ短剣》から金切り声のような、脳を内側から破壊しようとするような音が放たれた。それはスキルを打ち消し、その存在を掻き消した。
放たれた魔法も、召喚されたモンスターも消され、二人はもう、何もすることが出来なかった。そしてアジアンは無慈悲にその首を落とした。
*****
「さてと、ここからが一番問題なんだよな」
「問題って言われても困るんだけどなぁ……アリスは?」
「私も問題ないと思いますが……まぁ、魔王が言うのなら問題があるのでは?」
「え!?」
マモンがアリスから大げさなほどに距離を取った。そしてそのまま両手を広げ、頭を回して
「な、なんだってー!?」
「五月蠅い馬鹿」
「ごめーん」
無駄に歌舞伎っぽいモーションで完璧に似ていない。それに誰も何も言わず――
「それじゃ、最後だから頑張りますね」
「アリス」
「はい、なんでしょう?」
「マモンを止めてくれ。絶対あいつ、よからぬ事を企んでいる」
「……やっぱり、ベルもそう思いますか?」
「ああ、結構長く眺めていた横顔だ。そのくらい分かる……あ」
「一途なんですね」
顔を真っ赤にしてどこかに向かって走って行ったベルを眺め、アリスはからかい過ぎたかもしれない、と少し後悔した。そして
「マモン、そろそろ行きましょう」
「んー、了解。それにそろそろ、良い感じだし?」
「え?」
マモンの目はぎらり、と鈍い刃物のように輝いていた。それを眺めているとどうしてか、心臓が萎縮したようにも感じた。
*****
「シェリル、ベル。それからレヴィとアリア。万が一の時は頼むぞ」
「万が一?」
「ああ」
「あの馬鹿もそこまで馬鹿しないと思うけど……」
「マモンだからねぇ……ありえそうだよ」
深刻そうな魔王の言葉に、シェリル以外の三人が頷いた。そして――
「万が一の時はお前たちがマモンを潰せ」
*****
魔王の想像は間違っていなかった。何故ならマモンは開始と同時に相手二人の全身を針鼠と化していたからだ。しかしマモンの動きはそこで止まらなかった。
相手は全損していない。だから追撃を加えるのだろう。アリスは自分の存在価値を考えて――それに気づけなかった。マモンが自分に弓を向けていたことに。
「マモン!?」
「アリス、ごめんね」
「何を
脳天を射貫かれ、光となって消滅した。そしてそれを眺めていた魔王たちは大きく舌打ちをして
「シェリル! ベル! レヴィ! アリア! マモンを、あいつを止めろ!」
自分に比肩するのはやはり《魔王の傘下》、他には誰もいない。だからこそマモンは相手を、《雷鳴鳴り響く天門》の生き残りを背に立ち塞がった。そしてそのまま弓矢を構えて
「私は全力で戦える相手が欲しいのよ。エカテリーナならともかく、あなた方程度が私と敵対するなんて愚かしいとしか言えませんね」
「……え?」
「なんで私たち、全損していないんですか……?」
「そこでよく見ておきなさい。世界最強ギルド、《魔王の傘下》の全力の一端を」
引いた矢が放たれた。それは高速で飛び、シェリルたちの脳天に迫ったが
「《炎の罪》!」
「《セブンソード・メテオ》!」
「《バニシングバレット》!」
「《滅びの疾風炸裂弾》!」
四人はそれを防ぎ、マモンへと襲いかかった。
うん、Wordで初めて書いたからどこかおかしいかもしれない
あったら教えてください
現在の予定としては今年度中ソーニョは完結します
ですが終わらせたくないって言う思いがあるんですよね
さてどうしたものか
びっくりするほどユートピア!
びっくりするほどユートピア!
さすがゆずソフト




