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開け、《煉獄の門》

「《魔王の傘下》が一人、《最強の旦那》シン」

「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《苛烈》のアイラ。あのアリアの旦那と手合わせできること、光栄に思います」

「僕はアリアほど強くないから光栄に思われても困るんだけどね」

「ご謙遜を」


 いや、謙遜していないから。シンはそう思いながら腰の剣に手を添えた。そしてそのまま腰を落として


「《居合い》系統のスキルですか? 分かっているのならば、対処も出来るというもの」

「――それは思い上がりだ、とだけ言わせてもらおう」

「思い上がり、ですか?」

「分かっているのなら対処できる、それならば僕たち、《魔王の傘下》に所属するプレイヤーは良くも悪くも有名だ、だからこそ対策を練ることは用意だったはずだ」

「……そうですね。あなたは純粋な剣だけで戦う、アリアとは違うプレイスタイルなのも知っていますが」


 アリアとは違う、だからなんだろう。そんな風に思っているとアイラは眼を細くして


「純粋なんですね……妻と、違って」

「……それ、どういう意味かな?」

「え?」

「アリアがまるで不純に、聞こえるよ」

「……そう言っているのですが?」

「うん、死ね」


*****


「あ、シンがぶち切れているみたいね」

「まったく、僕がなんと言われたって良いのにね」

「アリア、ならシンが貶められたらどうする?」

「ぶっ殺すぞテメェ」

「私言ってないんだけど」


*****


「っ!? 何故!?」

「何故も何も無いな。今のお前は殺すに足りてしまった」

「……雰囲気が、変わった?」


 シンは無造作に剣を振るった。それだけで腕が宙を舞った。だがシンの動きは止まらない。さらに続けて振られ、残る腕も舞った。足も舞った。そして脳天から真っ二つにした。


「……」


 シンは深いため息を吐き、意識を切り替える。《夜色の殺戮者》と呼ばれていた、名乗っていた頃の自分から切り替える。いや、切り替えるんじゃない。意識を消す。


「はぁ……思わず、キレちゃったな。これがキレる若者って言うのかな」


 だとしたらもっともな言葉だ、そう思いながら自陣に戻る。きっと姉から叱責があるだろう、そう思っていると


「よくやった!」

「っ!? いきなり何をするのさ」

「良くやったよ、あんたは」


 何故か姉はうんうん、と何度も頷いていた。その意味がさっぱり分からずにいると


「まさかシンがあそこまで僕のことを想っていてくれるなんて、ねぇ。ちょっと顔が熱いよ」

「ちょっと?」


 カーマインの髪に勝るとも劣らないくらいには真っ赤だけど? そう言おうとした。でも、言えなかった。だって、アリアの顔はこれ以上無いってくらいに笑みが浮かんでいたからだ。


「――アリア」

「なに?」

「愛しているよ」

「僕もだよ」


*****


「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《忍者》レレン」

「…………《魔王の傘下》が一人、《斬姫》エミリアよ」

「……気が立っているようですが?」

「ええ。目の前で弟とアリアがキスしていたのよ、鬱憤を晴らさせてもらうわ」

「……心中、お察しします」


 レレンは心からそう思いながら短刀を、忍者刀を構えた。そしてそのまま体勢を低くして


「《分身の術》!」

「っ!」


 4人増えた、そして4人消えた。それにレレンが動揺しつつ、手を複雑に動かして


「《火遁の術》!」

「《焔纏い》!」


 刀に吸い込まれるようにして炎が収束して――高速の一閃が何も分からない、と言った表情のレレンをぶった切った。上半身が下半身からずり落ち、光となる。そんな様子にエミリアは目を向けず、ただただ嘆息するだけだった。


「弱過ぎ……それとも九州サーバーが異常なの……? 異常だったか」


 そう言えば、と思いだして嘆息した。そして自陣に戻ろうとし――いちゃついている二人を見て、舌打ちをした。


*****


「そう言うわけで鬱憤が晴れそうな戦い方で勝ちなさい」

「いや……無茶ぶりにもほどがあるぜ?」

「シエルなら出来るでしょ。大気圏外までぶっ飛ばしなさい」

「そんなとこまで行けるのかよ?」

「雲に激突して落下してくるから大丈夫よ」


 何がだよ、シエルはそう思いながら前に出る。しかしその背中に背負われている二本の大剣は抜かれていない。さらにその顔にやる気は一切見えない。


「――ぶっちゃけ長い」

「「「「「デスヨネー」」」」」


*****


「そう言うわけでマグナ、オバマ。マリア、アジアン。ベル、レヴィ。マモン、アリス。二人戦になったから頑張れ」

「俺は?」

「お前は奇数だからな……まぁ、何とかしろ」


 セプトが絶句していると、相手側から最初に余り一人からと言われ落ち込んでいた。それなのに一撃も受けず、全てを盾で捌ききっていた。


「ではオバマ、足を引っ張らないでくださいね」

「こっちの台詞ですよ、マグナ」

「「……」」


 にらみ合う二人、それを眺めて深いため息を吐いて


「オバマ、替わりなさい」

「レヴィ?」

「啀み合っている相手の実力を眺めているのも楽しいと思うわよ」

「――なるほど。さすがはレヴィ」

「ふふ」


 レヴィは笑いながらマグナの肩を叩いた。そして


「行くわよ、マグナ。全力で叩き潰すわよ」

「ええ、レヴィ。全力を持ちて、薙ぎ払いましょう」


 二人はそう言いながら前に出て


「《魔王の傘下》が一人、《魔弾》のレヴィアタン」

「同じく《魔王の傘下》が一人、《魔銃》のマグナ」

「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《地獄へのバスガイド》ジェリコ」

「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《地獄へのスチュアーデス》ケイローン」


 なんともご大層な名前だ。でも


「生憎と魔王の庇護下にいる私たちが」

「地獄ごときに落ちるとは片腹痛し」


 二丁の銃が火を噴いた。それはどちらもジェリコとケイローンに向けられていたが


「弾道が読み辛い!?」

「ううん、読めないよ!?」

「そりゃそうでしょ。交差した銃口から放たれる弾丸が接触なしで飛べるとでも思っているの?

「逸らし、激突し、穿つ。その程度の計算も出来ないのならば人間とはつくづく不便な生き物ですね」

「その人間に作られたのを忘れないようにね」

「ええ」


*****


「ベルとオバマはどうなると思う?」

「どうにもならないと思いますが?」

「私の予想だとね、ベルが強くってオバマが拗ねちゃう感じ」

「あぁ、それは愉快な想像ですね」


*****


「ベル、どうするのですか?」

「俺一人で終わるんだけどどうする? お前も戦いたいなら譲るけど?」

「む、そこまで言うのならお手並み拝見しましょう」

「ああ、そうしろ。さてと……《魔王の傘下》が一人、《魔道王》ベルフェゴール」

「《魔王の傘下》が一人、《新入り》オバマ」

「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《剣聖》アストレイ」

「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《剣聖》フリアエ」


 ベルは手を高く掲げた。そしてそのまま、地面に拳を振り下ろして


「開け、《煉獄の門》」


 地面が、口を開いた。そこから漏れ出した深紅の涎が4人を一気に濡らした。だがオバマとベルにダメージはない。一切合切を燃やし尽くして――地面がどろどろに溶け、溶岩の海と成り果ててしまった。そしてベルはオバマの攻めるような視線から顔を逸らすほか無かった。

マリア、アジアン、マモン、アリスが未戦闘

ランキングをふと覗いたらランキングインしている嬉しさ

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