表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
274/401

姉妹と双子

「《幻影》スキルには単純な命令しか出来ないはず、ならば本体を狙うまでです!」

「ふふふ」

「どっちが本体かな?」

「口調的にどちらも本体のようですね」


 エカテリーナは到底理解できないが、剣を構えた。前後にいるアリアを眺め、どちらが本物かを見極めようとしている……が、もはや、答えは出た。


「アリアの精神を分けて……前後に別れたんですね。面白い」

「はっ、不愉快な」

「何が面白いのか、僕には分からないなぁ」

「アリア二人ならば遠慮なく全力を使わせていただけますわね」

「全力、ですか」

「ならばこっちも全力だ!」


 アリアが突っ込んだ。短気な相方を眺め、アリアは呟いた。そしてそのまま糸を操る。とりあえずエカテリーナの妨害をする、が、


「見えていますわよ」

「あら吃驚」

「そっちの方が頭の良いアリアですわね」

「よく分かりましたね」

「え!? どういう意味!?」


*****


「では私が前に出ますわね」

「ええ、それが良いでしょう」

「そしてそろそろ決着を付けましょう」

「ええ」


 アリアは剣を両手で、上段に構えた。それに対し、エカテリーナもまったく同じ構えを取った。そして振り下ろした。


「はぁっ!」

「せゃぁっ!」

「とりゃっ」

「え!?」


 エカテリーナは自分の心臓を刺し貫いているそれを眺め、何も言えなかった。そして――


「まさか、そんな使い方をするなんて」

「混ざったせいで、色々と躊躇いが消えたみたいですよ」

「消えなくて良いものを消してしまいましたか……余計なことを言いましたね」


 光となって消えるエカテリーナはそう言い残した。そして


「そろそろ私から剣を抜いても良いのでは?」

「うん、そうだね。ごめんね、突き刺して」

「いえ。私もアリアですから。エカテリーナが二重人格を作っていないのが悪いんですよ」


 なんだその暴論、聞いていた誰もがそう思ったがアリアは一人に戻り、そのまま自陣へと戻ってきた。


「三日間続けて戦っていたからねぇ、疲れたよ」

「一日一話更新だから……四じゃない?」

「メタい会話をしてんじゃないわよ……それで? 次はどうするの? 旦那行く?」

「旦那って僕?」

「アリアの旦那がシンじゃないのなら誰って話になるけどね」

「私―!」

「帰れ」


 レヴィの拳がマモンに受け止められた。さらに続けての拳をマモンは軽々と避けて


「まだ戦っていないのは魔王、ジャック、私、レヴィ、ベル、セプト、シエル、シェリちゃん、エミちゃん、シン、エミリア。それからマグナとオバマ、マリアとアジアンかな?」

「僕とアスモ、ブブとルシファー、サタンは戦ったから多分そうだね」

「ふーん……なら、私が行こうかしら」

「シェリ姉?」


 シェリルはにやり、と笑って


「姉の方が凄いってところ、見せてくるわ」

「Excuse me!」

「え?」


 声がした方を全員が向いた。そこにいたのは二人組だった。一対一、と思っていたからこそ戸惑っていると


「次は二対二でお願いしても良いですか?」

「それが通じるなら俺らもそれでやりたかったんだけどよ」

「兄さんの言う通りだね」

「なら私―!」


 兄弟の会話をぶった切り、エミが手を高く掲げた。それに周囲は笑った。そして


「ならエミ、片方は任せたわよ」

「シェリ姉こそ、大丈夫なの?」

「例えエカテリーナだろうと、向こう全員だろうと勝てる自信はあるわよ」

「それは無差別爆撃って言うんじゃないかな?」


 アリアはシンの腕の中でそう言う。ちなみにシンはアリアを抱きしめているわけではなく、アリアに腕を動かされてその形になったのだ。

 あれ以降、柘雄シンの中から性欲という物は消え去っていた。だからこそ、父親のような気持ちでアリアを膝に乗せ、抱き抱えるような形になっていた。


「アリア」

「ん? どしたの、シェリ姉」

「今度、あなたに挑むから」

「うん、良いよ。改めて、って思って良いかな?」

「ええ、そうよ」


 シェリルは錫杖をしゃん、と音を立てて振るった。そしてアリアに背を向け、歩き出した。それを眺め、エミも言わないといけないのかな、と思いながら姉の背を追った。


*****


「エミ、どっちが良い?」

「えーっと……剣を持っている方?」

「そう。なら私はグローブの方にしておこうかな」

「うん、お願い」

「相談は」

「終わりましたか?」

「ええ」

「うん」


 相手二人はわざわざ見逃してくれた。それにシェリルは感謝と同時に甘さを感じつつ、錫杖を構える。それは錫杖と呼ぶにはとても短い。爪楊枝ほどの長さで、太さはトイレットペーパーの芯ほどだ。


「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《双子剣》のエイネ」

「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《双子拳》のケイネ」

「《魔王の傘下》が一人、《七剣魔女》シェリル」

「その妹、エミ」


 空気読めよ、みたいな目を三人から向けられたがエミは気付かず、剣と扇を構え、エイネに向けた。それに対し、シェリルは両手を組み、ケイネと向き合った。


「エミ」

「なに?」

「良く、見ておきなさい」

「シェリ姉?」


 シェリルは妹の言葉に反応せず、その背中に翼を広げた。漆黒の翼を広げ――その姿が掻き消えた。


「っ!?」

「え!?」

「速いなぁ」


 目で追えたのは遠くから眺めていたプレイヤーぐらいだった。そして――


「《セブンソード・メテオ》」

「っ!? 上!」

「遅い」


 七本の剣が地面に立っている拳士に向かって降る。しかしそれは小刻みなステップで避けられた。


「《ハンドレッドソード・メテオ》」

「この程度で!」

「終わらないわよ。《サウザンドソード・メテオ》」

「っっっ!?」

「《ミリオンソード・メテオ》」


 一本一本には微々たるダメージしかない。それはダメージ目的の魔法ではないのだから。一瞬でも動きを阻害できれば、続けて当たり続ける。だからもう、100万本の剣のうち、一本に被弾した時点で終わりなのだ。


「ミリオンは無敵、ミリオンは最強、ねぇ」


 懐かしい漫画だ、と思いながら目を閉じて


「《ビリオンソード・アーツ》」


 制御不可能なそれを無理矢理制御する。10億本の剣を一本ずつ操るわけじゃない。ただの群体としていくつかを操る。


「って、終わっちゃってるか」


 地面が爆発で抉れまくっているのを見て、やり過ぎたかもしれない、とシェリルは思った。


*****


「行くよ!」

「来なさい!」


 エミは半身に構え、地面を蹴った。そしてそのまま、扇を投擲した。それは回転しながらエイネに迫ったが


「《アークスラッシュ》! 《ミーティアメテオ》!」

「《藍噛》!」


 真下からの、そして真上からの連続斬りが高速の斬撃と噛み合う。攻撃のようなスキルだが、実際はただの防御用スキルだ。だが


「っ!?」

「止められないとでも思っていたの?」

「五月蠅い!」


 剣が肩に突き刺さった。しかしエミの動きは止まらない。ダメージを受けながらも、前に出る。剣技では敵わない相手がいる、それをエミは深く理解していた。だからこそ


「戻れ」

「え?」


 ブーメランのように戻ってきた扇が背後からエイネに迫った。だが


「甘いです!」

「っ!? 嘘ん!?」


 扇が剣で弾かれ、エミは動揺した。

エミは負けていません

次回に続きます


感想ください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ