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星獣装備

 アリアの剣とエカテリーナの剣が交錯し、その衝撃が髪を散らす。しかしアリアもエカテリーナもそんな些事には捕われない。アリアの剣がエカテリーナの首を貫こうと迫り、エカテリーナの剣がアリアの首を切り落とそうと迫る。一進一退どことか零進零退だ。


「しゃあっ!」

「おや?」


 エカテリーナは戸惑った。アリアが猫のように毛を逆立てて吠えているからだ。だがその頭に生えているのはどう見ても


「ウサちゃん!?」

「バニー!」

「っく!?」


 見惚れていた、そんな一瞬をアリアは見逃さない。アリアの剣がエカテリーナの首を刺し貫こうとした。だが寸前で割り込んだエカテリーナの手が逸らした、が


「っつ!?」

「まさか間に合うとは思わなかったけど……もう、勝負あったんじゃないかな?


 このゲームの中では大会などではアイテムを使用できない、というルールが適用されている。だからエカテリーナの斬り飛ばされた腕が元に戻るなんてあり得ない、そんな風にアリアが思っていると


「《この身は雷となる(サンダリオン)》!」

「え!?」


 アリアは加速したエカテリーナの剣を間一髪で避けた。しかしさらに続けて振られる剣を避け切れはしなかった。切り裂かれる足、そのせいで体勢を崩しながら、僕は咄嗟に叫んだ。


「《アストライアー》!」

「っ!? 小賢しい!」

「見せてあげる、これが私の全力よ!」

「リアル側のアリアですか!」

「ええ、エカテリーナ!」


 アリアの翼が羽ばたき、体が高速で回転する。そしてそれを乗せた蹴りがエカテリーナの体を吹き飛ばすが


「《アストライアー》! 《エウローペー》! 《レグルスネメア》!」

「え!?」

「《カストル》! 《キャンサー》! 《アルゴナウタイ》! 《リブラ》!」


 エカテリーナの前身が目映い光に包まれ、目視が不可能になった。アリアは咄嗟にサングラスを取り出し、掛けようとしたが、それより速く光は収まった。だが


「なんなのさ……なんなのよ、それ」

「全ての星獣装備の能力を同時に使いましたの。これからは、そう簡単には負けませんわよ?」

「っ、上等だ!」

「良い返事ですが、些か行動と釣り合っていませんわね」


 アリアは動けなかった。エカテリーナの手に巻かれているブレスレットのような、円環。それらは全て、光り輝き、力強さを感じさせた。。そして僕は、七つのそれらから感じる力で動けなかったのだ。だが


「この程度なら……僕は!」


(強がって何かになるのなら自由にしなさい)

(でも!)

(エカテリーナが試しているのに気付きなさいな。だから(あなた)は馬鹿なのですよ)

(え!? 僕が馬鹿だって言うの!?)


 自覚していないのは本人ばっかり、と(アリア)は思った。だがそれをなんとか無視して


((アリア)、一つだけ言っておきますわね)

(なにを?)

(エカテリーナから感じる圧力ごとき、軽々と越えないと最強の名はエカテリーナの物になりますわよ)

(……むぅ)

(ほら、さっさと構えなさい。エカテリーナは待っていてくれますのよ)

(うん、そうだね……でも、もうそろそろ心の準備が出来るから)

(覚悟を決めましたの?)

(うん)


「お待たせ」

「あら、もう準備は出来ましたの?」

「うん、もう良いよ」


 アリアは両手を広げ、構えた。その両手にはいつの間にか、二本の剣が握られていた。《聖剣エクスカリバー》と《無銘真打》だ。そしてアリアは地面を蹴った。

 どうやら装備の差で、気圧されていた。僕は客観的に見てくれていた私のおかげでそれが分かった。だからこそ、今の僕は恐れない。もう、僕たちは恐れない!


(真正面から愚直なまでの特攻? 破れかぶれ……では無さそうですわね)


 ならば警戒し、一撃を打ち込む。エカテリーナは胸元に《春雷真打》を寄せ、そっと、しかし高速で突き出した。心臓を狙ったその突きは、アリアの剣が交差した防御に阻まれた。さらに振り払われた二本の剣によって《春雷真打》が弾かれるが


「見せてあげますわ。アリアの選ばなかった選択肢を!」

「っ!?」

「輝きなさい、《獅子王の円環レグルス・サークレット》!」


 エカテリーナの腕輪の一つが光り輝いた。そしてそこから炎が吹き出し、エカテリーナの体に纏わり付いた。それはエカテリーナと剣を交わしていたアリアに少なくないダメージを与え、その体を縛るかのように巻き付いた。


「重たい!?」

「《縛炎の獅子》、というスキルですわ」

「《レグルス》の腕輪……かぁ」

「アリアのは確か、剣でしたわね?」

「うん!」

「でも私には届きませんわ!」


 確かに、と思いながら纏わり付いているそれを剥がそうとするが


「片手とその状態ならば中々釣り合いが取れそうですね」

「っ、え!?」


 エカテリーナの剣が真上から降ってきていた。咄嗟にそれを避けようとしたが、蹴られた。地面を転がり、勢いのままに立ち上がろうとしたけど


「《春雷真打》、《解放リベレイト》!」

「《無銘真打》、《解放リベレイト》!」


「「《最強アリア》!」」


 自分と、ライバルの名を冠する剣を二人で構え、激突した。そしてその衝撃で二人とも弾き飛ばされた。


*****


「何よあのネーミング」

「実はあのネーミング、エカテリーナが思いついてアリアちゃんが抵抗したけどじゃんけんで負けて仕方なく、って設定があるのよ」

「メタい」


*****


 アリアの剣が頬を切り裂く。しかしそこで剣は止まる。私の剣がアリアの首を切ろうと迫っていたからだ。だがアリアも然る者ながら、斬る手を止めず、もう片手を複雑に動かして私の腕を切り落とそうとした。それだけはまずいので、距離を取って


「片腕だとここまで辛いんですのね」

「それは僕にはなんとも言えないなぁ」

「そうですわね。ですが」


 片腕にも慣れた。だから


「《稲妻の小夜曲ライトニングノクターン》! 《喰らい尽くす者(ヴェルズビュート)》!」

「ランク4!? ってわわわ!?」


 アリアが動揺している中、エカテリーナの高速の突きが放たれた。しかしそれは軽々とアリアが逸らして、追撃の拳がアリアの横腹に突き刺さった。


「っ!? 体力が!?」

「暴食の悪魔、《ヴェルズビュート》は触れた者の体力を喰らいますのよ」

「……なるほどね。ちょっと、警戒しないとね」

「警戒した程度で全てを防げるなんて思わない方が良いと思いますわ」

「うん、だろうね……でも、エカテリーナ。僕にも同じ事が言えるんじゃないかな?」

「ええ、言えますわね。ですが――今までの全ての星獣装備を揃えた私に勝てると思いますの?」

「勝つしかないさ」


 まさか、剣を手放して拳を放つなんて思いもしなかった。僕は少し、感心しつつ、二本の剣を鞘に収めた。そしてそのまま、新たに二本の剣を抜いた。護りに特化した二本の剣、双剣だ。


「《乖離天連》、《乖離地連》。この二本なら多分何とかなるはず、だよ」

「あら、それはそれはっっっ!?」

「対プレイヤー用スキル、《天都魔アマツマ》!」

「あ」


 心臓が二本の双剣で刺し貫かれている。エカテリーナは淡々、とそれを眺めて――勝ち誇った表情のアリアの首を切り飛ばした。

全ての星獣装備を揃えている圧倒的な絶望感を描けなかった私を許してくれ


しかし何故エカテリーナは光となって消えていないのか、答えは今までに出てきています

ちなみに《幻影》スキルで創り出した分身ではありません

答えが分かった方には粗品を送ります(大嘘)

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