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最強と世界二位

「実力が低いのならば、ここで流れを変えさせていただきますね」

「あぁ、そう言ったのはとても重要だからな、しないといけないよな」

「ええ」

「例えそんなことを口にしている間に俺の足下に向けて糸を這わせているとしても、だ」

「っ!?」

全属性アトリビュートの《氷》のヘレンは言葉を使い、こっそりと隙を突いて仕掛けてくる、か。情報通りだ」


 アスモは地面に剣を突き刺して


「《バーナー》」


 地面の表面が焦がされた。生えている草が燃え尽き、地面はその焦げ茶色の素肌を晒した。そしてそのままきらり、と光る糸を見せつけた。


「ん? 燃えないのか。だとすれば素材に不燃性の《セラミック》が使われているって情報は本当みたいだな」

「どこまで知っているのですか!?」

「うんにゃ、何も知らねぇよ。知るために調べていただけだし」

「意味が分かりません!」


 アスモはそうかね? と、疑問に思いながら剣を構えて――無造作に振るった。それは背後から迫っていた糸を切り裂いて


「《探知》でも《感知》でも分からないはずなのに!?」

「その程度じゃ俺はおろか、あいつらにやってみると気付かれる前に負けるぞ?」

「っ!?」

「さてと」


 アスモは話は終わりだ、と呟いて地面を蹴った。その速度はブブより遅く、振られた剣はサタンよりも遅かった。だがヘレンは避けられなかった。何故ならば――アスモの背後に連なる、多数のモンスターを目にしたからだ。


「それは!?」

「《百鬼夜行》」

「っ、《アブソリュートゼロ・ブリーズ》!」


 触れた者を凍てつかせる風がアスモの背後のモンスターたちに向かって放たれ――誰も凍らなかった。それにヘレンが動揺していると


「《幻影》スキルを使えばこの程度、楽々なんだが……って聞いちゃいねぇか」


 アスモは苦笑しながら茫然自失なヘレンの首を切り落とした。


*****


 《魔王の傘下》に勝てるのか、そんな想いが《雷鳴鳴り響く天門》の中で満ち溢れていた。だからエカテリーナは大きく深呼吸をして


「アリア!」

「あいよー!」


 間髪入れず返事があった。それに頬を緩ませながら自陣を出る。背後から声が掛けられる、それに振り向いて


「行って参ります、皆様」


*****


「アリア、行くのか?」

「うん、僕が行くよ」

「気をつけてね」

「うん。僕たちだから大丈夫だよ」


 たち? と、シンが首を捻っているとアリアは手を高く掲げて


「おいで、ひよちゃん」


 え、テイムモンスターって喚べるんだ。そんな風に全員が驚いている中、アリアとひよちゃんは高く飛んでエカテリーナの上空で回転し、留まっていた。それを眺め、エカテリーナは頬を緩めて


「来なさい、アスタリスク」


 エカテリーナの立っている地面から何かが飛び出してきた。アリアがそれを眺めているとエカテリーナを護るように蜷局を巻いている蛇が、吠えた。それを見て、ひよちゃんが鳴き返して


『ちぃぃ!』

「ん、分かったよ。行こうか」

『ちぃ!』


 ひよちゃんが高速で飛んだ。しかし蛇はそれに反応し、鎌首を擡げて炎を吐いた。咄嗟にひよちゃんが旋回し、避けたから良いけど


「危険だなぁ」

『ちぃ……ちぃっ!』

「うん、そうだね。おいで、ひよちゃん」


 ひよちゃんの体が解ける。そしてそれは次第にアリアの手に巻き付いていって――手の甲に痣が浮かんだ。鳥の顔のそれを眺めつつ、アリアは腰の剣を一本、抜いた。それを眺め、エカテリーナも一本の剣を抜いた。

 エカテリーナの蛇が炎を吐いた。落下しながらのアリアに向かって吐かれた炎は……当たらなかった。それに蛇は動揺し、エカテリーナは当然、と思いながら剣を振るった。


「はぁっ!」

「やぁっ!」


 剣と剣が激突した衝撃でアリアとエカテリーナの髪が揺られた。しかしアリアもエカテリーナも一歩も引かず、蛇が衝撃で弾き飛ばされた。それに蛇が動揺しつつ、体勢を整え、主人を護ろうとするが


『グルルルゥ!』

『ちゅう!』

『……しゃーっ!』


 二人はテイムモンスターたちに目を向けていない。アリアはエカテリーナを、エカテリーナはアリアだけを見つめて斬り結んでいた。上下左右からのアリアの縦横無尽な剣戟をエカテリーナは全てを受けきり、その上で攻撃を仕掛けていた。


「物理法則に喧嘩を売るような動きですわね」

「エカテリーナが言う?」


 もう、アリアの立っている場所は地面に限らない。虚空に足を付け、虚空を蹴って加速。そのままの《悪魔龍皇剣》による横薙ぎを《悪魔龍皇剣》による振り下ろしで噛み合わせて


「うりゃ!」

「おっと」


 下段回し蹴り、足首を刈る軌道のそれを《悪魔龍皇剣》で切り上げることで阻止し、さらに続けて蹴りを放ったが


「――うん、やっぱりエカテリーナは強いね」

「アリアがそれを言いますの?」

「うん。でもそろそろ全力を出してくれないと、いくら僕だって業腹だよ?」

「ふふふ。業腹のままに、終わりなさい」

「断る!」


 瞬間、漆黒の太くて長い物が飛んできた。思わず避けようとしたが――煌めく洋紅色の髪で我に返る。それは隙に繋がる、ならば


「受け止める!」

「そう来ると思った!」

「と、見せかけて」

「あるぇ!?」


 アリアの跳び蹴りがアリア自身の《悪魔龍皇剣》を蹴り飛ばした。そしてその隙を突いてエカテリーナは《悪魔龍皇剣》を振るったが


「生憎と」

「っ、糸陣!?」

「ええ、よく分かりましたね」

「……あなたは、アリア?」

「ええ、お久しぶりですね」

「その話し方は……リアルのアリアですわね?」

「ええ……と、言っても今の私は混ざっているからこそ、区分分けが難しいのですが」


 アリアはそう言いながら《悪魔龍皇剣》を取りに行かず、腰から新たな剣を抜いた。その剣に剣身は無かった。柄と鍔しか無かった。しかしアリアはそれを振りかぶった。だからこそ分かった。アレは危険な物だ、と。


「《モード・ニルヴァーナ》!」

「《雷鳴のごとく(ボル)煌めいた一撃(テクス)》!」


 白と黒の入り混じった剣が正面から《悪魔龍皇剣》を弾き返した。咄嗟に剣を手元に戻し、振ろうとするが


「ほら、見てみなよ。いくら最強の《悪魔龍皇剣》だって状態異常はあるんだよ?」

「――これは、一体?」

「ダメージ軽減、かな。カーマインブラックスミスの店員に一人が《陰陽術》のスキルを習得しているから出来たんだ」

「なるほど……ですがアリア、一つだけ訂正しますわ」

「え?」

「《悪魔龍皇剣》は確かに強い。ですが最強ではありませんわ」

「ん?」

「最強の剣はあなたが打ってくれた剣、《春雷真打》ですわ!」


 抜き、斬りかかった。それにアリアはにんまり、と笑みを浮かべてその手に握る剣の剣身を消した。さらに続けて腰のハーネスに吊して


「行くよ、エカテリーナ」

「ええ、来なさいな」

「《魔王の傘下》が一人、《最強》アリア」

「《雷鳴鳴り響く天門》が一人、《世界二位》エカテリーナ」

「いざ尋常に」

「今さら尋常も何もありませんわよ」


 エカテリーナは無粋だなぁ、とアリアは思いながら腰を深く落とした。そして自分の腰の鞘に差してある剣の柄に手を当てて――小さく、息を吐いて


「っ!」

「はっ!」


 同時に地面を蹴った。

7月始まったなぁ……嫌だなぁ


次回、決着が付くのか付かないのか作者にも分からない

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