アリアとオバマ
「私を敵にしてしまった……? 一体どういう意味なのですか!?」
「私の存在が、もう一人の私があなたの敵になってしまった。だからこそ、あなたは逆に私たちの敵にしてしまったのです」
「それが一体……どういう意味なのですか?」
オバマは戸惑いを露わにしている。もはやそこに敵対心はない。そして――
「あなたがいてくれたから私は日常をさらに楽しめた。なのに別れてしまったあなたが私と敵対するなんて悲しい、そう思いませんか?」
「アリア……」
「オバマも覚えているのでしょう? 私と一緒に過ごしていた頃を。私と一緒に楽しみ、喧嘩をしたあの頃を」
「覚えています……覚えていますがそれは私ではありません」
「ううん、あなたはあの時には別れていなかった。あなたの中には私たちとの記憶があるはず、違う?」
オバマは何も言わなかった。そして――
「あなたが憎い」
「それ、二番煎じだよ」
「っ!?」
「アリスの真似っこ?」
アリアは純粋に疑問だった。しかしオバマは馬鹿にされたと思い、腹が立った。でも今までのとは少し違う腹の立ち方だった。どっちにしろ腹が立ったのは変わりが無いけど。
「……アリアは私を消しますか?」
「それもありかも知れない。でも私はそれを望んでいない、オバマがいるのは私も地味に嬉しいんだよ」
「え!?」
オバマはそれに驚いた。しかしアリアがその後に取った行動でさらに驚いた。
「アリア!?」
「オバマ、あなたもマグナと同じように私たちと一緒に暮らさない? こんなことをしなくても私と言い合ったりして、きっと楽しいと思うよ」
「……アリア、少し危険なことですが、良いですか?」
「うん、何でも言ってよ」
「私もアリアになります。良いですか?」
……え?
*****
「っ……ふぅ、おはよう、亜美」
「おはよう、アリア。その様子だときちんと帰ってこられたみたいね」
「……かもね。でしょ?」
アリアは誰かに呼びかけるように呟いた。するとアリアの雰囲気が変わり、
「ええ、きちんと私もこちらに来られましたよ、アリア。そして初めまして、エミリア」
「……その雰囲気、マグナみたいね」
「ええ。アリアを間借りしています」
亜美の動きが止まった。そのまま口をパクパクさせている。そしてそんなよく分からない状況で柘雄とマグナが現実に戻ってきた。そして戻ってくるなり
「アリア! オバマをどこにやりましたか!?」
「ふっふっふ、まだ気づいていないのですか?」
「っ!? その雰囲気、話し方はまさかオバマ!?」
「だ、誰がオバマですか!? 私はマグナです!」
「私がマグナです!」
「私が!」
「私がです!」
アリアとデバイスが言い争っている。それを眺め、柘雄も口をパクパクさせていた。愛する妻の中身が変わっている、と思ったのだろう。それは少し前にも目撃していたからこそ、現実でのダメージはかなりのものとなった。
「アリアを……アリアを返せ!」
「あ、分かりました」
オバマは目を閉じて――にんまり、と笑った。そして
「ただいま、柘雄。随分と色々あり過ぎて疲れちゃったよ」
「お帰り……アリア!」
柘雄は思わずアリアを抱きしめた。そしてそのまま自然と唇を重ねた。それはどちらからだったのか分からない。もしかすると同時だったのかもしれない。そしてその様子を眺め、亜美は微笑んでいた。マグナもだ。そしてアリアの中にいるオバマもだ。
こうしてアリアは擬似的な二重人格から擬似的な三重人格と成り果てたのだった。めでたしめでたし。
*****
「何がめでたいんだよ!」
アリアの蹴りが木の幹を揺らした。それにオバマとマグナは目を見開いて
「何をしているのですか!?」
「何をしているのですか……」
呆れと驚き、そんな混じり合った言葉にアリアはため息を吐いて
「ちょっと地の文に突っ込んでただけだよ」
「「地の文?」」
「そ、地の文……あ」
アリアは空を見上げた。そこには一羽の鳥が飛んでいた。そしてそれはかなりの速度でアリアの頭に着地した。
『ちぃ?』
「ひよちゃん、こんにちは」
「ひよちゃん、こんにちは」
『ちぃ!?』
「大丈夫大丈夫、同じ人だけど別人だよ」
むしろひよちゃんは動揺している。それにマグナとオバマが苦笑していると――アリアは背後から飛びかかってきた狼に押し倒された。そのまま地面を転がった。
それにオバマが驚いているが、アリアは満面の笑みだ。そしてそのまま狼に抱きついて、そのふかふかの毛に体を埋めた。
「もふぃ」
『がるぅ?』
「もふぃぜ~」
アリアの髪以外がルフの毛の中に埋没していった。それをルフは困ったような顔をしつつ、吠えた。するとルフのふかふかの毛から一人の小柄なネズミが現われた。その手には長く、先端には宝石を削って創り上げた龍の像が。その頭には着慣れた、といった感じのとんがり帽子が。
「ちゅう吉、お久しぶりです」
「ネズミ……テイムモンスターですか?」
「ただのテイムモンスターと侮ってはいけませんよ。その子たちの主が誰なのか、オバマは知っているでしょう?」
「……アリア、ですよね?」
「ええ」
マグナは少し微笑んで――しゃがみ込み、ルフの毛に指を通してみた。柔らかく、気持ちいい。それをマグナが楽しんでいると
「私も触ってみても構いませんか?」
「……確認を取らずに触った私を見て、判断してください」
「分かりました」
オバマとマグナがルフの毛を堪能していると、毛の中からにょきっと手が生えてきた。それに二人がぎょっとしていると
「おはよー」
「おはよう、アリア」
「おはようございます、アリア」
「ん、んー? 何か来ているなぁ……ひよちゃん」
『ちぃ!』
アリアの声で巨大な、真っ青な鳥が大空に羽ばたいた。そして直後、氷の槍が天高くから降り注いでいた。
「これが本当にテイムモンスターの力なのですか!?」
「そうですが……それがどうかしましたか?」
「テイムモンスターは大幅な弱体化をされたはずです! それが何故、ここまで強いのですか!?」
「それは単純ですね。アリアだからですよ」
「あ」
それで納得しかけ、オバマは首をぶんぶん、と横に振った。おかしい物はおかしいのだ。例えそれが認められなくとも、私の中ではおかしい、とオバマは心に決めた。そしてそのまま目を閉じて
「アリア、背後から多数の群れが迫っています。トレインではなさそうです」
「んー? マグナ、どうする?」
「殲滅しましょう。オバマ、あなたはどうしますか?」
「戦いますよ」
オバマは少し目を細くしながら背中に背負っていた巨大な斧と長い槍を抜いた。そしてそれらを体の前面と背面に構えて
「アリア、見ていてください」
「んー、了解」
ルフの毛から顔が湧いてきた。それにマグナとオバマが苦笑しながら、二人は同時に地面を蹴った。さらにマグナは引き金を引いて
「オバマ、少し撃ち漏らしますから」
「確殺ですね……ですが二丁拳銃で撃ち漏らす方が難しいのでは?」
オバマの言葉にマグナは苦笑しながら次々と撃っていた。ちなみに言っておくが二丁拳銃で撃ち漏らすのが難しいのはレヴィとマグナだけで会って、他のプレイヤーでは不可能だ。
アリアとマグナとオバマ、みんな違ってみんな良いけどマグナとオバマは元同一人物でオバマとアリアは同一人物
みんな少しかぶっているんですがそれは
次回、ソーニョの運営が……




