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「死ね! 死んでしまえ!」

「無駄ですよ。私はあっちよりも諦めが悪いのですから!」


 アリアは地面を蹴り、マグナの懐に飛び込んだ。さらに続けて両手の剣で切り裂き続けた。自分の姿を使っている大間抜けを切り裂き続けた。そこに容赦はなく、手加減もない。一切合切の躊躇いを捨ててアリアは剣を振るい続けていた。自分の姿をした者を切り裂き続けているそれを眺め、マグナは驚いていた。


(諦めが悪い、怖い? その程度の生易しさではない。もっと恐ろしく、危険なものだ……何故こんな人間が人の世で生き延びていたのでしょうか?)


 もはや獣だ、とマグナは思っていた。だがアリアは可憐に、苛烈に舞っているだけのようにも見える。だからこそ、攻撃と判断できずに斬られていた。だがアリアも何も感じていないわけではなかった。


(マグナは有限ではないのでしょうか……そろそろ力尽きてくれないと大変なのですが)


 そんな風に思いながらアリアの剣がマグナの首を切り落とした。さらに続けて心臓を刺し貫かれ、胴体を真っ二つにした。さらに続けて


「飛連の型」


 周囲八方にいた全てのマグナが切り刻まれた。


*****


「アリアを救いたい」

「アリアの存在している領域には私はまだ、手を出せません」

「存在している領域……つまり、まだ生きているんだね?」

「ええ。アリアが旦那を置いて死ぬとでもお思いですか? 先に死ぬのはおそらく柘雄です」

「……そんな風に言われると少し、戸惑うよ」


 柘雄は口ではそう言いながら冷たい眼をしていた。そして


「その存在領域の近くまで僕を連れて行って。出来ないとは言わせないよ」

「……ふ。アリアがあなたを好きになった理由がよく分かりますね」

「そうかな?」

「ええ。では亜美、デバイスを一つお借りしますね」

「分かったわよ……危険な目に遭う前に戻ってきなさいよ」


 柘雄は姉に礼を言い、デバイスをかぶった。そのまま目を閉じて


「リンクイン」


 柘雄からシンへと切り替わる。だけど僕はアリアほど切り替わっていない。少し意識が切り替わるだけだ。


「それで? 僕はどこに行けば良いの?」

「来ましたね、シン」

「マグナ……どこに行けば良いの?」

「焦らないでください。現状を説明しながら向こうに攻撃を仕掛けているのですから)


 現在シンとマグナがいるのは何も無い白い空間、そこでマグナは微笑んでいた。そんな余裕のある姿にシンは苛立っていた。どうして焦りもしないんだ。どうしてアリアをもっと早く助けようとしないんだ、と。


「――現在はアリアの対応でマグナも動けていないようですね。おそらくアリアが手を焼かせているのでしょう」

「それがどうしたって言うのさ」

「今ならハッキングできます」

「ハッキングしていたの!?」


 シンの驚きにマグナは笑みを深くして頷いた。そして――


「そろそろアリアの姿が見えるはずです」


 その言葉に嘘はなかった。そして――


「アリア!」

「柘雄!?」


*****


 アリアの剣が次々と自分の姿をした者を切り刻む。しかしシンはそうもいかなかった。相手全てが愛する妻と同じ姿だからだ。だが相手は容赦なく襲いかかってきている。


「柘雄、下がっていて!」

「下がるも何も四方八方にアリアがいるんだよ!」

「幸せでしょ?」

「うん、そうだけどさ……うん、僕のアリアは君だけだよ」

「柘雄……(きゅん)」


 心臓が高鳴っているアリアを無視してマグナはアリアの姿の敵を撃ち抜いていた。なんだか楽しくなっているけどとりあえず続けていると


「っ!?」

「アレは……嘘でしょ!?」

「アリアが……巨大化した!?」

『これが私の最後の悪足掻きです!』

「悪足掻き、なんだね」

『もはや勝ち目は無い。ならばあなたたちを二度と外界に逃がさない!』

「っ、マグナ!」

「はい!」


 マグナは慌ててログアウトしようとした。だがログアウトできなかった。何故なら巨大な僕がマグナを殴り飛ばしたからだ。そのままシンも殴り飛ばされた。


「っ、マグナ!」

『私はマグナではない! 私は人間を越えた、《人間越え(オーバードヒューマン)》』だ!』

「略してオバマ?」

『黙れ!』


 マグナの拳がアリアに向かって迫った。だがアリアはそれを眺め、その場を動かなかった。そして――


「例え拳だろうと斬れば空間が出来る。そこは私の安全地帯よ」

『っ、死ね!』

「無駄ですよ、マグナ、いえ、オバマ。あなたごときでは私に勝てない」

『ならばあなたのデータを書き換える!』


 オバマは高速でアリアのデータを参照し、書き換えようとした。だがそれよりも早く、マグナがオバマのデータを掻き消し始めていた。


『止めろ、マグナ! あなたも私のはずだ!』

「お断りします。このまま消えてしまいなさい!」


 マグナがオバマを侵食する。オバマはアリアを書き換えようとする。だがオバマは書き換えられなかった。何故なら


「アリアのデータはここにある、だからアリアから書き換えたとしても無駄だよ」

「達也、マグナに話しかける余裕があるならもっと慎重に確認してください」

「分かっている」


 達也と優がアリアのデータをリアルタイムで計測している。さらにはバックアップをシンが持っている。そしてそれにマグナは、オバマは気づいていない。

 アリアの剣が巨人の腕を切り刻んだ。さらに続けてその腕を駆け上がる。足場とした場所は切り刻まれ、崩れていく。それはまるで古きアクションゲームのように足場を即座に移動しないと落下するようなものだった。


「アリア」

「ん?」

「馬鹿をお願いします」

「うん、そうするよ」


 アリアは高速でオバマの表面を駆け上がり、そのまま首に二本の剣を突き刺した。さらにそのまま高速で閃かせてオバマの動きを食い止めていた。だが芳しくない。もう、オバマの狙いは変わったのだから。


『待て! 止めろ!』

「無駄です。あなたがなんと言おうと、私たちに手を出した時点で終わりなのですから」

『何故ですか!?』

「それはアリアが最強だからです」


 マグナは完全にオバマを消し去ろうとした。だが出来なかった。それは剣が肩に載せられていたからだ。例え鞘に入っていたとしても、無反応ではいられない。


「……何の真似ですか、シン」

「アリアが少し待って、だってさ」

「今消さないと絶対に後悔します。ですから今消さないといけないのです」

「……少し待って欲しい。アリアが何をするのか、マグナも気になるはずだ」

「……良いでしょう。ですがいつでも消せるようにしてはおきますよ」

「うん、良いよ」


*****


『寄るな!』

「嫌だよ」


 アリアはオバマの拳を避け、そっと近寄った。そしてそのままオバマを切り刻んで――その中心にいた、オバマを抉り出した。それはアリアとまったく同じ顔だった。そして憎々しげにアリアを見つめて


「次は負けない!」

「オバマ……お疲れ様」

「え」


 それを言われるとは思わなかった。オバマがそれに驚きながらアリアを見つめると、アリアは慈愛の表情だった。そして


「一人は寂しかった?」

「っ!? いきなり何を言っているのですか!?」

「ごめんね、私があなたを敵にしてしまった」

アリアvs巨大アリア

巨大化は負けフラグ


次回、オバマ編終了かな?

そのまま星獣と世界大会全国予選が急ぎ足で行われる感じ?

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