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最強の紛い者

「アリア、一体何をしているの?」

「うん……ちょっと調べ物だよ。あ、ちょっとパジャマとか洗うの待ってて」

「ん、分かった。それで何を調べているの?」


 柘雄は元通り、と言うには難しいが元気を取り戻していた。アリアはそれに安堵しつつ、そのページを柘雄に見せつけた。


「……AIの暴走で全データが狂った、ねぇ。強制ログアウトもあったらしいよ」

「ふぅん……暴走?」

「うん、暴走。まぁ、信じられるか結構疑わしいんだけどね」

「そうだね……暴走するAIなんて聞いたこともないよ」


 柘雄はそう呟き、気づいた。一人だけ知っている、一人だけがかつて起こした。


「マグナだ」

「え? マグナがどうかしたの?」

「マグナが暴走しているんだ」


*****


「いや……いやいやいや、いくらマグナだからって、もうしないよ」

「アリア、それはマグナに失礼だよってのは置いておいて……マグナは二人いるんでしょ? そしてそのマグナはこの前、アリシアを襲撃してきた」

「あ……」


 そうだ、言われてみればその通りだった。でも、私がそんな目に遭う理由がない。思いつかない。まぁ、何にせよ、


「私たちには何も出来ないね」

「全くだね……でもアリア、現在のアリアの収入源ってあの会社でしょ? もしも潰れてしまったら収入源が無くなるだけじゃ無くて卒業後も大変なんじゃないの?」

「……おお!?」

「だから何かしらした方が良いと思うんだよね」

「むむむ、これは由々しき事態だぜい」


 アリアはむぅ、と悩みながらテキパキと取り込んだ洗濯物を畳んでいった。そして――また、電話がかかってきた。


「もしもし」

『アリアさんですね? 今から会社に来られますか?』

「……マグナの件ですか?」

『はい』

「……わかったよ。急いでいくけど時間はかかるよ」

『承知の上です――が、急いでください』

「地下鉄に言ってよね」


*****


 幸いなことに、スムーズに地下鉄に乗れ、そのまま天神まで着けた。人波に押し流されそうになりながらもなんとか歩いて……


「アリア、無理しないで良いよ」

「うぅ……ごめんよマイダーリン」

「はいはい」


 柘雄の言葉に少し頬を膨らませつつ、歩いて会社の受付へ。すると受付嬢は私たちの顔を見ただけで慌てたように立ち上がって


「アリアさん! 急いでください!」

「うん、分かってる」

「柘雄さんも!」

「分かっています」


 二人で急いでエレベーターに駆け込んで7階を押す。そのまま扉が開いたと同時に飛び出して


「アリア!」

「ジャック!? え!?」

「良いから来い!」

「優とは別の部署でしょ!?」

「もはや部署なんかどうにもならないくらいの問題になっているんだ!」

「そりゃ大変だ」


 柘雄は運ばれているアリアに併走している。それをジャックは横目で眺め、


「なんだ、雰囲気が変わったな」

「そう?」

「ああ……なるほどな。童貞を捨てたか」

「っ!?」

「おぅ!?」

「何だ、図星か」


 呆れているようなジャックの声に苦笑していると


「着いたぞ」


 そこは、たくさんの人々の騒ぎが充満して、騒乱と化していた。


*****


「マグナ、あなたはアリアにこんな方法で勝って満足だと思えるのですか……?」

「――アリアに何を持って勝ったというのか、それの定義の違いでしょうね。私はこれで勝った、と心の底から思えていますよ」


 マグナは銃を構え、マグナを見据えた。洋紅色の髪を持ち、一見ではただの私服にしか見えない星獣装備。その背中にはたくさんの剣が鞘に収まっていた。

 誰もが知るその者の名は――《最強》。アリアだ。

 そしてそのアリアは背中から剣を抜いて、構えた。その剣は純白の、触れれば折れてしまいそうなほどの細さの剣だ。その名も――《無銘真打》。《最強》が勝とうと思って創り上げた剣だ。


「ですが何故あなたはそこにいるのですか? 私の敵とでも言うのですか?」

「はい、よく分かりましたね。私がマグナですから、あなたを打倒しませんと」

「あなたが私に優っていると? それはとんだ思い上がりですね!」


 アリアの剣が一瞬で目の前まで迫っていた。咄嗟に引き金を引き、アリアを狙ったが


「遅い」

「っ!?」


 剣の腹で弾丸が逸らされた。そしてそのままアリアの姿のマグナは剣を引き絞り、矢のように放った。それをマグナは避けきれない。マグナはそう割り切って銃で剣を逸らそうとした。だが


「《ダブルサイクロン》!」

「っ、《キャンサー》!」


 自分自身を包み込む圧倒的な質量の水。それが高速の25連撃から勢いを奪う。だが例え勢いが奪えても《無銘真打》の半端じゃない攻撃力と呆れるしかないアリアのステータスが大ダメージを与えてきた。

 マグナはこの全てを受けきれば死ぬ、全損してしまうと理解していた。だからこそ極めて冷淡に言い切った。


「アリアが来ます」


 その言葉と同時に、まったく同じ容姿の少女が背後から斬りかかった。


*****


「マグナを説得する!? それが出来たらこんなことにはなってないよ!」

「アリアの言うことももっともだけどさ、出来るとしたらアリアしかいないんだよね」

「アリア、アリアって……他には何の手も打たなかったの?」

「柘雄!」


 亜美の叱責するような言葉、それを優は手で制して


「柘雄さんの仰る通りです。現在は私たちの打った手は全て不発に終わっています。シャットダウンから、データ削除も無駄に、徒労に終わりました」

「……優、一つだけまだ続いているよ」

「え……では一体、どれが?」

「――マグナです」


 マグナ? と、アリアと柘雄は思った。そしてその目の前で優ははっとした表情になり、テーブルに乗り出した。


「アリアさん、マグナが現在マグナへ向かって戦っています!」

「っ、ど、私も行きます!」

「アリア!?」

「柘雄は、シンは足手纏いだよ」


 アリアは冷たく、突き放した。それに柘雄は一瞬、目を閉じて


「行ってらっしゃい、アリア」

「言ってくるよマイダーリン……っ!?」

「アリア!?」

「う……お股が痛い」


 走り出し、いきなり止まったアリアの言葉でなんとも言えない微妙な空気が流れた。


*****


「来ましたか、アリア!」

「うん、来たよ……来たんだけどどうして僕のコスプレをしているの?」

「コスプレではありませんよ。私自身がアリアとなること、それが私のアリアへの勝利のつもりでしたが……まさかデータのバックアップがいくつもあったとは思いもしませんでした」

「マグナの手が届かないようにUSBに保存していたらしいよ」


 ふむ、とマグナは思った。そこまでは手が回らないのだ。だが


「そちらの負け犬はどうするのですか?」

「負け犬?」

「あなたに勝ちたいくせにあなたの隙も突かず、あなたと仲良くしている負け犬ですよ」

「むむむ」

「負け犬と言う他ありませんよね?」

「むぅ……犬って言うよりマグナは……キリンだよね」

「「はぁ?」」

「首を伸ばしてこの機会を待っていたのなら、キリンじゃないの?」


 ほら、よく言うじゃん。


「首を長くして待っていたって」

「っ、黙れ!」


 地面を蹴ったアリアの姿のマグナは一瞬でアリアの懐に飛び込んでいた。そのまま斬りつけたが


「悪いけど、僕が最強なんだよ」


 軽々と防がれ、マグナは動揺した。

次回、アリアvsアリア

最強と最強の紛い者、どちらが勝つのか――

まぁ、大体分かっているけどさ


つり乙2,Φ、涼風、舞風を未クリアなのにも関わらずはつゆきさくら購入!

作者は馬鹿じゃなかろうか

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