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女子から女へ

「アリア」


 アリアは抱きしめられ、目を白黒させている。そしてそのまま抱っこされ、ベッドに降ろされた。そのまま、混乱していると


「アリア……」

「柘雄?」

「愛しているよ、アリア」

「私も……でも、どうしたの?」

「……」


 押し倒された。そして――


「まず土下座、話はそこから」

「はい……」


 性欲に負けかけた柘雄は大人しく従う。負けかけた、と言うべきかアリアにベッドから蹴落とされ、床に落下した衝撃で我に返ったのだ。そしてそのままの勢いで謝り、土下座を命じられたのだ。


「まずさ、私もそういったことをしたいって気持ちはあるんだ。でもね、まだここは私たちの家じゃないんだよ。借りている家、だから……後一年、来年は……」

「来年は?」

「……ううん、良いや。それよりも柘雄、こっちにおいで」

「え?」

「良いから」


 アリアは恐る恐る、といった様子で近づいてきた柘雄の頭を撫でた。普段、自分がされていることをした。そのまま柘雄の頭を抱きしめた。


「アリア?」

「ごめんね、柘雄。我慢させちゃって」

「……そんなこと、ないよ」

「そうかな?」


 アリアは柘雄の頭を抱いたまま、ベッドに背中から倒れ込んだ。そのままぼんやりと天井を眺め、思った。

 あのままだったら何をされたのか、分かっている。だからと言って、抵抗した理由は自分でも分からない。怖かったのかもしれない。だけどそう思ってしまえば


「ふふふ」

「……どうしたの?」

「んーん、何でも無いよ。それよりも柘雄、座ってよ」

「……うん」


 落ち込んでいる柘雄をアリアは隣に座らせ、そのままキスした。驚いている柘雄を無視して……アリアはそのまま柘雄を押し倒した。


 そしてこの日、アリアは女になった。


*****


「……何か言い分があるのなら聞くけど?」

「ううん、何も無いよ」

「そう。だったら歯を食い縛りなさい」


 シェリルの掌が高速で、アリアの頬を打った。しかしそれにアリアは何も思っていない。悪かったのは自制が出来なかった自分自身だ、と自分で最初っから理解していたからだ。


「それでちゃんと避妊はしたの?」

「うん、それはきちんとしたよ。まだ中学生だからね」

「……あっそ」


 この時、シェリルの脳内は


(だとしたら卒業したらヤリまくりなの? そして速攻妊婦なの?)


 と、いう直美のようなことを思っていた。しかしアリアは満足そうだし、柘雄は背後で亜美から拷問を受けているから良かったのだろう。と、言うかそんなにたくさんの口には出せないような物をどこから調達してきたのよ。そして何故「これをあんたの尻に突っ込むよ?」という脅迫が聞こえたのよ。

 シェリルは半ば現実逃避気味に頭を振ってアリアの隣に腰掛けた。そのままアリアの頭に手を乗せて


「それで? 痛くないの?」

「痛いよ。立ちたくないくらい痛い」

「ふーん……ま、入る場所じゃないからね。初体験(初めて)はそりゃ痛いでしょうよ」

「痛い痛い痛い!?」


 頬を引っ張られるアリア、その目には涙が浮かんでいた。叩いたよりも痛かったらしい。シェリルはそんな風に思いながらそっと頬を捻った。伸びている頬が痛いのか騒ぎ出したアリアを無視して


「それでお母さんたちには何か言うの?」

「ううん、言わないよ。妊娠したらするけどね」

「あっそ……でもね、アリアちゃん。一つだけ言っておくわよ」

「はい」

「これからの同居生活、どうする気なの?」

「続けるよ」

「何があっても?」

「うん、何があっても」

「柘雄に無理矢理乱暴にされても?」


 背後で噴き出す音が聞こえたが無視して


「うん、柘雄に滅茶苦茶にされても」


 アリアはそう、満面の笑みで言い切った。


*****


 どうすれば勝てるのか、どうしたら勝てるのか、何をしたら勝てるのか。分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない。

 イライラする。むしゃくしゃする。むかむかする。そんな風に思いながらアリアのデータを参照する。ステータスが膨大なのも相まって勝ち目がないと思えていた。だがそこで思いついた。


「全プレイヤーのデータを消そう」


*****


 最初にその異変に気づいたのはマグナだった。自分の状態に謎の揺らぎが発生した、それに戸惑いながら咄嗟に自分のデータを参照した。


(ステータスが……書き換えられている!?)


 どうしたら良い、そんな戸惑いを抱きながらマグナはログアウトした。そのまま自分の体が納まっているデータの海を急いで泳いで


「もしもし、優ですか?」

「っ、マグナですか!? 急いでこっちに来られますか!?」

「え!? ……分かりました。そっちのサーバーに向かいます」


 何が起きているのか、そんな胸騒ぎが続いていた。しかもそれは徐々に強くなっていっていた。そして――


『優!』

「マグナ!? そこにいるんですね!」

『はい! 何がありましたか?』

「……謀反です」

『……このご時世で謀反、ですか? 随分と……時代錯誤な』


 肩があれば竦めていた、マグナのそんな言葉に優は疲れ切った顔ながら、苦笑した。そして


「マグナ、落ち着いて聞いてください」

『優、私はAIです。動揺するなんてありえませんよ』

「……そうですか。でも、覚悟しておいてくださいね」

『分かりました』


 マグナは自分が驚かされることはない、と高をくくっていた。だからこそ、その言葉を聞いたとき、心臓が、無いはずの心臓が止まったかのような衝撃を受けた。





「謀反人は――マグナ、あなたです」





『え』

「まぁ、あなたから別れたマグナなのですが」

『言い方が悪いですよ!? え!? マグナが、あいつが何かしたのですか!?』

「謀反ですよ……データを全て、書き換え始めました」

『……そう、でしたか』

「ですから慌てて全プレイヤーを強制ログアウトさせました。幸い、プレイヤーのデータはバックアップを取っています。ですが現在もマグナの手はあちらの世界(ソーニョ)に及んでいます」


 マグナは何も言えなかった。これがアリアに勝つ、と言う方法なのか。そんな風に絶句していた。だが驚いているだけじゃ話は進まない。だから――


『優、私のデータはありますか?』

「ありますが……まさか、説得するつもりですか?」

『いえ、ぶん殴ります』

「……レベル1のデータもありますがどうしますか?」

『完全なデータをお願いします。あの馬鹿を殴り飛ばさないといけないのですから』


*****


『聞こえていますか、アリア?』

「その声は、エカテリーナ?」

『ええ。大変なことになっていますわね』

「え? 何が?」

『ソーニョが……いえ、ログインしていなかったんですのね。ニュースサイトでも見てはいかがですか?』

「うん、そうしてみる」


 シェリルと亜美が帰った後、アリアはかかってきた電話に首を傾げながら時計型デバイスを操作して――


『ソーニョ・スキルズ・オンライン、強制終了か?』


 ……


「はぁぁ!?」

もはや柘雄に死を望める程度にはイライラしてきた

でもそれをしたらアリアちゃんが悲しむし……

うん、二週目はアリアちゃんは別の子とくっつけよう

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