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ポルックスとカステル

「そういうわけでほい」

「ありがとう、アリア。でも良いんですの?」

「ふふふ、三人お揃いの格好は良いですね。アリアもエカテリーナも良くお似合いですよ」


 三人でお互いの装いを眺めて笑う。そしてそのままエカテリーナたちのギルドホームから出て伸びをする。見た目はただの民族衣装なのだが、その装備はひと味違った。

 《唯三無四のサラファン》という名の服は《防御力+4096》《agi+1024》《飛行》《永劫エターナル》《過剰駆動オーバードライブ》、そして《不死鳥フェニックス》という過剰なまでの性能があった。

 《飛行》はその名前の通り、飛行を可能とする。《永劫エターナル》は耐久が無限、つまり全損しない。ずっと《唯三無四のサラファン》は無くならない。そして《過剰駆動オーバードライブ》は一時的に装備者のステータスを増幅させる効果がある。その量は1.5倍と圧倒的な増幅だ。

 つまり世界に三つしか無い圧倒的な装備がここに産まれたのだ。だがもっとも異常な特性があった。《不死鳥フェニックス》だ。一度だけなら死ねる、そんな体力という概念を覆すような特性。《不死鳥フェニックス》を倒し、その核となる心臓を使った装備だからこそ、その名を継いだのだ。


「アリア、こんな装備、どれだけお金がかかるか分かりますの?」

「ん、んー? 値段的な感じだとどれくらいだろうね? 100Gくらいかな?」

「そうですね……それぐらいでしょう」


 もっと高いはず、とマグナは思っていたが黙っていた。マグナは空気が読めるAIアーティフィッシャルインテリジェンスなのだ。うんうん、と自画自賛をしているマグナ、それはマグナに二人が抱きつくまで続いた。そして


「記念写真撮ろうよ」

「撮りましょうよ、マグナ」

「そうですね。では撮りますよ」


 その日、シェリルに三通、同じ写真がメールで送られてきて、首を傾げるという事態が起きた。


*****


「うっわ~、ちっちゃ~い」

「可愛いよ~」

「持って帰っても良いかな?」

「ダメに決まっていますわ。アリアも」


 アリアは口に差し込まれたポッキーをかりかり、と囓って頷く。そしてそのまま女性プレイヤーたちの輪の中から抜け出して


「ふぃー、人気者は辛いぜ」

「マスコットでしたね」

「マスコットですわね」

「のー!?」


 アリアの騒々しさにみんなが笑いながら、時計を見つめる。一応メニュー画面で確認は出来るのだがそれでは少し、物足りない。


「そろそろ星獣が来ますね。今回は双子でしたわね」

「双子だよねぇ……双子が何カ所に出現するのかなぁ」

「そうですね……三カ所でしょうか」

「それは予想?」


 アリアの問いにマグナはふふふ、と怪しい笑みを浮かべて


「知らない方が良いこともあるのですよ」

「え!? そんな怖いことなの!?」

「違いますよ」


 アリアは本当なの? と、潤んだ瞳でマグナに問いかけたが微笑むだけで流された。そしてその様子を眺めていて女性プレイヤーたちはキャッキャ騒いでいた。


「双子だからジェミニサンダー?」

「1,10,100,1000?」

「万城目サンダー!」


 思わず乗ってしまった、アリアがそう思っていると何故か女性プレイヤーたちに捕まった。そして可愛がられていた。もちろんこの様子も動画として撮られ、シェリルと直美に送信されていた。

 アリアたちがのんびりしている間にも他のプレイヤーたちは星獣に備えて色々と慌ただしい。それを眺めながらアリアは思った。


(どうしてこんなに真剣なのかな?)


 と。アリアの感覚では星獣は大して強くない、といったところなのだ。精々シェリルと同等程度の認識だ。そもそもシェリルが全国的に強いプレイヤーランキングに入ってしまうのだがアリアはそれを知らない。実の姉がトップ32に入っていることを知らないのだ! まぁ、アリアが一位だから下を見ても仕方ないというのもあるのだが。


「エカテリーナ、そろそろだよね?」

「ええ。アリアは落ち着いていますわね」

「んー、そうかな? みんながいないから少し不安だけどね」

「あら、私とマグナでは不足ですの?」

「ううん。でもいつもはみんながいるからね、不思議な感じなんだ」

「まぁ、私もアリアと肩を並べて戦えるなんて不思議な気分ですけどね」

「何だ、同じじゃん」

「そうですね」


 エカテリーナはアリアの頭を撫でながら微笑む。そして


「時間ですわ」


*****


 アリアとマグナ、エカテリーナは少し考えていた。そしてそんな三人に《ポルックス》と《カストル》が襲いかかった。その双子の攻撃は苛烈にして猛烈だった、一般プレイヤーたちにとっては。

 アリアたち三人はその掬い上げるような手の一撃を避けて空を飛ぶ。そしてマグナが引き金を引き、アリアが跳び蹴りを見舞った。さらにエカテリーナも神速の突きを放った。


「なんだか弱いね」

「双子だから力を分散させたのでは? なんにせよ、油断大敵ですが」

「まぁねー。マグナ、撃っちゃって」

「言われずともそのつもりですよ」


 マグナは引き金を引き続ける。しかし存外、《ポルックス》と《カストル》の動きは素早い。だから中々弾丸は当たらないが


「マグナ、後ろ!」

「分かっていますよ」


 攻撃の瞬間は無防備だ。だからマグナの弾丸は《カストル》の肩を貫いた。だがダメージ自体はそれほど大きくない。


「アリア、どうも《カストル》には弾丸が効き辛いようです。《カストル》の対処を任せます」

「おっけー、いくよー!」


 アリアは地面を蹴った。そしてそのまま切り上げる勢いで宙返り、そのままもう一撃を叩き込んだ。だが


「《カストル》って意外と硬い!?」

「アリア、どきなさいな!」

「え、あ、うん!」


 アリアが《カストル》の目の前から退いた瞬間、雷のような高速の突きが《カストル》の腕を貫いた。それに声にならない絶叫をあげる《カストル》。

 しかしエカテリーナはそれに構わず、そっと《春雷真打》を《カストル》の腕から引き抜き、ゆっくりと腰だめに構えた。宙を舞い、その両手でエカテリーナを襲おうとする双子。しかし


「エカテリーナの邪魔はさせないよ」

「生憎と、エカテリーナのすることには興味があるので」


 マグナの弾丸とアリアの剣が《ポルックス》と《カストル》の動きを阻む。さらにアリアは空を飛び、双子の頭上を制した。その時点で《ポルックス》と《カストル》は充分にまずい、と思い、逃げようとしたのだが……


「残念ですが、そこは私の射程圏内です」


 エカテリーナの突きは、まるで突撃槍のように高速で《カストル》の心臓を刺し貫いた。例えボスだろうとそこを貫かれればどうにもならないのだ。

 エカテリーナの握る《春雷真打》が左右に切り払われ、チン、と軽やかな音を立てて鞘に収められた。そしてその背後でアリアの剣が《ポルックス》の両手両足、首を同時に斬り飛ばしていた。


*****


 《双子の釣り合い無き刀》を眺めてアリアは少しため息を吐く。見た目はアリア好みなのだが……その性能はアリアを悩ませていた。

 《攻撃力+10》《str+10》《agi+10》、そして――《並びし時に解き放たれる》。

鳥獣士カステルじゃないよ!


今回も噛ませのような星獣でしたが日本側を次回書くつもりなので


しかしあれだ、学校の図書館で書いていると謎の緊張ががが


次回予告、アリアのいない星獣、それは思っている以上に苦戦を強いられた――

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