《勇者達》
アリアたち三人は《勇者達》に向かって焦りも恐れもなく、のんびりと歩いていた。そして彼女たちとは裏腹に、その様子に《勇者達》は気圧されていた。
「スカイー、どこー?」
「んだよ。何の用だ?」
「ふっふっふ、トップをさっさと片付けようと思ってね」
「……ガイア」
「ああ、分かっている。アリアには二人がかりで挑むぞ」
「良いともさー」
アリアは気楽に笑いながら地面を蹴った。それは誰にも反応できない速度で二人の体を吹き飛ばした。それはダメージ目的では無い。ただ、吹き飛ばしただけだ。
「っ、《フライ》!」
「ち、《フライ》!」
二人が靴から翼を生やした。そしてそのまま空中で姿勢を整えたが
「悪いけど降りてもらおうか」
「……逆らえば?」
「叩き落とすよ♪」
マジか、とスカイはため息を吐いて靴の翼を畳んだ。そしてそのまま着地して剣を抜いた。《過ぎ去れし思い出》と《約束なお守り》だ。
それに続いてガイアも剣を抜いた。《|《黄昏の道》だ。
「《リンク》! 行くぜ!」
「《リンク》、行かせてもらう!」
スカイの二本の鍵剣を避け、ガイアの悪魔の翼のような、しかし背に天使のような翼がついている剣を避ける。踊るように回転し、軽々と避けるアリアに二人の表情が強張った。
「《リンク》スキルでも届かないのか!?」
「スカイ、時間を稼ぐ。さっさとやれ」
「だが!」
「良いから速くしろ!」
アリアが何をするのか、と期待しているとガイアが斬りかかってきた。邪魔をするつもりは無かったが、とりあえずその剣を受け止めて
「別に邪魔しないんだけど」
「ふん!」
ガイアの剣を逸らし、カウンターで振り上げる。それがガイアの懐に迫るが
「《ダークフレア》!」
「わぉ」
闇色の炎を避けて地面を蹴る。そのまま後ろに跳んで
「っし、準備完了したぜ!」
「えっと、何をしたのかな?」
「《リンク》スキルに《変身》スキル、それに《オーバーブースト》だぜ」
「……随分と大がかりだね」
「はっ、余裕を見せていられるのも今の内だぜ!」
そう言ったスカイの動きは確かに速かった。アリアが驚き、一撃を受けるには。そして浮かされた体に高速の連続斬りが放たれたーーはずなのに
「何故ダメージがない!?」
「あはは、それは残像さ!」
「なんだと!?」
「そして僕がーーっ!」
スカイはその声の方に剣を振り下ろした。そしてそのアリアを切り裂いたが
「これも残像だと!?」
「うん、そうだよ」
アリアの剣が高速で振り抜かれた。しかしスカイは倒れていない。防具も壊れていない。剣も折れていない。
(むぅ、硬いなぁ)
アリアは不満そうに思いながら、しかしその顔はとても楽しそうに笑っていた。だがアリアの背後から闇の剣が振り下ろされた。そして正面からスカイが斬りかかった。
「ガイアも強化系のスキルを使ったんだね」
「ふん!」
「でも遅いよ」
アリアは二本の剣を使い、前後からの剣を防いだ。そしてそのまま笑って
「それじゃあ行くよ! 《バニー》!」
*****
「《セブンソード・アーツ》」
七本の剣の内、二本は右手で、二本は左手で、三本は思考で操作する。それを放つわけではなく、自分で完全に使いこなす。前からの剣を右の剣で払い除け、左の剣で貫く。飛んできた魔法を思考操作で切り裂いていると
「あれが《七剣魔女》……」
「そんなご大層な名前で呼ばれているなんて光栄ね」
「全員囲め! 剣はたったの七本なんだ!」
「あら、ようやく気づいたのね」
シェリルは嗤う。その程度のことに気づくのが、今なのか、と。だから
「《セブンソード・メテオ》」
放った。新たに放たれた七本の剣はプレイヤーたち七人を突き刺し、爆発した。その影響は他のプレイヤーたちも全損させーー残っているのは僅かとなった。逃亡を図る者、戦意を失わない者、それを眺めてシェリルはため息を吐いた。
「《七剣魔女》ね。中々良い名前よね」
「《ライトニングランス》1024!」
「《セブンソード・メテオ》1024」
七本の剣が1024セット迫る。それは雷の槍、1024本ごときに押し負けたりしない。一瞬で全てを消し飛ばし、誘爆した。そしてその爆発に飲まれ……
「呆気ないの。アリアちゃんみたいに剣を使えば良かった」
つまらない。もっと強いプレイヤーと戦えば良かった。
*****
「あらよっと。《飛舞》!」
エミは剣を受け止め、扇を投げて全損させる。さらに手元に戻ってきた扇をエミは掴んで
「《炎舞》!」
連撃。それはまた一人のプレイヤーを全損させた。そのまま剣を振るった。エミは一人一人を確実に倒していく。レベルよりも技術に拘ったエミ、その真価が発揮されていた。だが
「魔法を撃て!」
「うげ」
エミの顔が歪んだ瞬間、魔法が一斉にエミに向かって放たれた。思わず叫びたくなるが、エミはため息を吐きながら地面を蹴った。魔法の雨の中央から離れてーー敢えて一発に被弾する。その衝撃を生かして距離を取る。
減った体力は2割程度。やっぱりレベルが高いプレイヤーたちだ。そう思いながら地面を蹴り、木に着地し、幹を蹴り、枝を踏み、地面へ、そしてプレイヤーたちへ急降下攻撃を仕掛けた。まさか上から来るとは思っていなかったプレイヤーたちが動揺した好きをエミは見逃さない。
「《アークスラッシュ》! 《連転演舞》!」
奉納の演舞、それは自身のステータス向上。舞いながらの攻撃はプレイヤーたちを次々と全損させてーー
「ようやく終わったみたいね」
「シェリ姉!? シェリ姉も終わったの?」
「とっくにね。あの程度、歯牙にもかからないわよ」
「使い方、違うと思うよ?」
「良いのよ」
*****
スカイとガイアは戸惑っていた。基本的には《変身》スキルは相手の虚を突くためであって、相手に何になるのかがバレるのは阻止しなければならないからだ。だがアリアは大きな声で《バニー》と叫んだ。《兎》だ。
「ガイア! お前も!」
「分かっている! 《オーバーブースト》! からの《バット》!」
黒が混じった瞳でガイアは剣を構えた。そしてゆらりゆらりと揺れているアリアに剣を向けて
「スカイ、続け」
「……任せろ」
「ああ」
ガイアは剣を振りかぶり、空いている片手をアリアに突き出した。そして
「《ダークランス》!」
「遅い」
「く、《ダークインパクト》!」
闇の槍を避け、闇の衝撃波を避け、アリアはゆっくりと近づいて来る。速度に大幅な強化がある《兎》状態なのにゆっくりだ。それに二人が戸惑っていると
「スカイは来ないの? だったらもう、全力で行くよ?」
「……ガイア、やるぞ」
「合わせる……か」
ガイアはにやりと不敵に笑った。それに笑い返して……スカイは両手の剣を腰だめに構えた。高速の一撃を放つつもりなのだろう。アリアはそう思いーー敢えて、何もしない。正面から打ち破るのが《最強》だから、言うように。
アリアの手に握られているのは漆黒の、小柄なアリアの細腕では持ち上げることすら不可能と思えるほどの巨大な剣。それはサーバーに一本しか存在していない剣。
「何を見せてくれるのかな?」
「……面白えの魅せてやんよ」
アリアの顔がにんまりと笑みを浮かべ、漆黒の剣を鞘に収めた。
懐かしの《勇者達》登場
ガイアとスカイ意外は名前すら出てこないぜ
評価してもらえるって嬉しいですよね
例えテストの点数が酷くても嬉しい者は嬉しいです
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ちなみに評価が960を越え、総合pvが28万を超えていました




