表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
242/401

七剣魔女

物理のテストマジ無理

「ジャック、あなたと剣を交えたいと思っていた」

「そりゃありがたいけどよ、俺の得物は鎌だぜ? 剣を交えるってのはおかしくないか?」


ジャックはそう嘯きながら相手を眺めた。名前は知らないが、確か《聖堂騎士団テンプルナイツ》の副団長だったと思う。

まぁ、それはさて置いて鎌を肩に担ぐ。薙げるような構えだ。


「最強ギルド、《魔王の傘下》の初期メンバーのあなたと戦ってみたかった」

「あ、そう」

「《聖堂騎士団テンプルナイツ》副団長、ヴェルネンド」

「《魔王の傘下》平社員、ジャック」


鎌を放った。首を飛ばそうとしたその一撃は剣で受け止められた。そしてもう片方の剣で鎌を跳ね上げ、回転しながらの一撃を放ってきた。だが


「意外とやんのな」

「上から目線ですか!」


鎌の柄で剣を受け止め、ジャックは感嘆の息を漏らした。しかしそれはヴェルネンドには舐められている、と思われたかのようで剣戟の速度が増した。


「おっとっと」


ジャックは鎌の刃と柄を器用に扱い、全ての攻撃を防ぐ。鎌に限らず、長柄の武器は守りに向いているのだ。だからその守りを打ち崩せないヴェルネンドは焦り、剣を振るう速度が増していった。だがそれは逆にその剣から威力を奪いーー


「この程度なら手でも充分だな」

「なっ!?」

「速さと威力を共存させられれば強くなれるだろうな」


ジャックは剣の柄を蹴り上げ、すっぽ抜かす。そのまま浮いたその剣を掴んで


「擬似的な二刀流、これで剣を交えられるかね?」

「……返して欲しいと言ったら?」

「良いぜ」


ジャックは執着せず、剣を投げ渡した。そしてそのまま鎌を構えて


「それじゃ、行かせてもらうぜ」


薙いだ。そしてそのまま地面を蹴って跳び膝蹴り。鎌を避けたヴェルネンドもこれは予想外だったのか、吹き飛んだ。さらに追撃として投げられた鎌が腕を断った。


「っっっ!?」

「最強と言う名前に執着は薄いがーー残念だったな。俺はそこそこ強いぞ」


いつの間にか背後にいたジャックの鎌による一撃は、ヴェルネンドの胴体を真っ二つに切り裂いた。

それを確認し、ジャックは鎌を担いで


「残党狩りか……ベルの役目だろこれ」


そうぼやきながら鎌を振るった。


*****


「アスモ、どうする?」

「ブブこそどうするんだよ。もう強そうなのは残ってないぞ」

「ふん……」


ブブは二本の槍のうち、一本だけを抜いて無造作に振りかぶり


「《グングニール》」


投げた。それはかなりの貫通性を持った槍となりーーたくさんのプレイヤーを薙ぎ払った。そしてブブは槍を掴んでため息を吐いた。

ちなみに《投擲》スキルを除いた投擲系のスキルを使った場合は手元に投げた物が戻ってくる。逆に、落としたり取られた場合は戻ってこない。


「アスモ、左は任せる。左利きのお前にちょうど良いだろう」

「両方使えるお前がどっちもやるってのはどうよ?」

「ふん。お前も二刀流に挑戦していたな、ちょうど良い練習相手がぞろぞろいるぞ」


二人は軽口を叩きながら両手にそれぞれの得物を構えた。二本の槍と二本の剣を持ったプレイヤーは頷き合い、何も言わなかったのにも関わらず意思疎通をしたかのように左右に分かれた。そのまま


「一応名乗っておくか」


あいつらのノリに合わせておこう。


「《魔王の傘下》が一員、《双槍》ベルゼブブ」

「《魔王の傘下》が一人、《魔法剣士》アスモデウス」


二人は競い合うように名乗り、同時にプレイヤーたちへ攻撃を仕掛けた。


「槍と剣が戦う場合、剣は三倍の技量が必要だと聞く。だとしたら二本の槍ならばどうなのだろうな」

「二乗すれば良いんじゃね?」

「9倍か、妥当なところだ」


傲慢とも取れる言葉を否定できる者はその場にいない。何故なら敵対した者は必死に身を守ろうとするだけで散っていったからだ。


「……シエルめ、一番楽しめそうなのを取りやがって」

「しかもさ、エレナは《解放リベレイト》形態使ってないぜ? アリア曰く《二重解放リベレイトーディスチャージ》形態まであるらしいし」

「手加減をしていたのはどっちだろうな」

「ま、シエルも《解放リベレイト》形態も《リンク》スキルも使ってないから良いか」

「《変身》はどうなんだ?」

「さぁ?」


余りにも場違いな雑談は戦闘中だというのを忘れさせるようだった。だが


「……圧倒的過ぎる⁉︎」

「そりゃあな」

「曲がりなりにも最強ギルドを名乗っているんだ」


ブブ徒アスモが回りに誰も残っていないのを確認しーー光に包まれた。そして


『圧勝にして完勝っっ! たったの四人で五百人のプレイヤーを殲滅したーっ! これが最強! これぞ最強! 《魔王の傘下》っっっ! 強い! 強過ぎる!』


*****


「シエルってばどうして手を抜いたのさ?」

「抜いちゃいねぇよ。向こうが本気出したら出すつもりだったよ」

「むぅぅ、エレナもエレナだよ……っ!」


アリアはプンスカ怒りながら腰の剣に手を掛けた。そしてそのまま引き抜いた。


「アリアちゃん?」

「シエルーっ!」

「ん? ってはぁ!?」


アリアは剣を器用に使い、シエルの頭に飛び乗った。そして


「もー! どうして手を抜いたのさ!」

「だから向こうが抜いていたんだってば」

「だからってそれは理由にならなーい!」


アリアの両手で背中をぽかぽか叩かれつつ、シエルは苦笑して


「正直悪かったよ。《魔王の傘下》らしく全力で叩き潰さないとな」

「《魔王の傘下(うち)》らしさってなんだ?」

「さぁ? 自分勝手?」

「天上天下唯我独尊?」

「圧倒的な力?」


出てくるのはどれも酷かった。


*****


「さぁ、2回戦だよ」

「気のせいかもしれないけどもの凄い時間がすっ飛ばされた気がするわ」

「気のせいだよ、シェリ姉。それよりも準備は良い?」

「ええ、大丈夫よ」

「エミは?」

「なんとか」


エミは腰の剣の刃を覗かせ、ため息を吐いた。そして目を閉じて深呼吸をし


「いけるよ」

「あっそ。だったら行こうか」


魔王がスカイと言葉を交わしている。そしてスカイがちら、とこっちを見て


「そっちが出すのはあの三人なのか?」

「ああ。だがそっちは全員で来い」

「負けフラグびんびんじゃねぇかよ……ったく、分かったぜ」


スカイは握手をし、そのまま自軍へと戻っていった。


『さて続いての試合は1回戦を瞬く間に勝ち抜いた総勢200名以上の《勇者達ブレイバーズ》と! 1回戦を圧勝した《魔王の傘下》っっっ! そして《魔王の傘下》が出すのはたったの三人! されどその三人は負けるところが想像できない! 《七剣魔女》シェリル! 《剣扇》エミ! そして知らないプレイヤーは一人もいない! 総合店カーマインブラックスミスの店長にして最高の鍛冶師! 《最強》アリア!』


勇者達ブレイバーズ》の説明は一切ないらしい。それを思い、少しアリアが笑っていると


「シェリ姉、《サウザンドソード・メテオ》は使わないでね」

「え? なんで?」

「シェリ姉のアレは広域殲滅魔法だからだよ。僕たちの出番が無くなっちゃうじゃん」


はぁ、とシェリ姉はため息を吐いて


「ま、《七剣魔女》なんて呼ばれているからね……仕方ない。そっちだけにしよう」

「うん、ありがと。お姉ちゃんもそれで良いよね?」

「うん、良いよ。それじゃあ、行こうか」

七剣魔女セブンソード・ウィッチ》。ルビを振っていないのは忘れていたからです

次回から振るから

ちなみにエミのの読み方は《剣扇けんせん》、アリアは《最強さいきょう》です


次回はスカイたちが殲滅されます

次回の展開を容赦なく明かしていくスタイル


それではまた次回


今さらながらですけど誤字脱字は作者が読み返していないため、気づきません

ですから感想などを使って教えてくださると助かります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ