結婚後の生活
「これが《リブラ》の力か」
「慎重に行けよ、ガイア。まだ行動パターン読めてないんだし」
「読む必要なんて無いよ」
マモンの声と同時に多数の矢が放たれた。それは《リブラ》を貫いた。そして次々と矢が突き刺さっていき……
「マモン!?」
「邪魔したら殺すから。それよりもベル」
「分かっている」
ベルは剣を握りしめて走り出した。そのまま剣を振りかぶって
「《霊剣榊》……初めての近接武器だな。だが」
ベルは一閃した。それは《リブラ》の胴体に叩き込まれ、確実にダメージを与えた。さらにそのまま
「《バニッシュ》!」
アリアから買った剣とアリアから買ったスキルを使い、《リブラ》の体力をごっそりと削った。さらに続けて切ろうとするが
「っ!?」
「ベル、ちゃんと避けなさいよ」
「いや、なんであんな至近距離から一気にぶっ放されるんだよ」
「それが星獣よ」
「なんだその万能感ある言葉」
「それが星獣よ」
「……会話が成立しねえ」
「それが星獣よ」
「……」
ベルは会話を諦め、剣を振るった。しかしその剣は飛来する様々な物を受け止めたり切ったりは出来ない。ベルはそこまで技量があるわけではないのだ。
「アリアなら切り落としたのかね……」
「多分ね。でも私だってそれぐらいなら出来るよ?」
そう言いながらマモンは双剣を使い、軽々と打ち払っていた。
「使い慣れない物で挑んだのが間違いだった……っ!」
「熟練度を一気に上げようとしたからこうなるんだよ」
「何してんだよ過去の俺!」
思わず叫びつつ、剣を鞘に収めた。そしてそのままメニュー画面を開き、装備を変更する。いつもの杖を握りしめて
「マモン、射線からどいてくれ」
「はいはい。最初っからそうしていれば良いのにね」
「五月蠅い。《メテオアーツ》!」
空から隕石が降ってきた。そしてそれは《リブラ》に直撃したが
「っ、倒せてないだと!?」
「手抜きして一発しか撃ってないじゃん」
マモンはそう言いながら地面を蹴り、《リブラ》に接近した。そしてそのままリブラの体を駆け上がって
「星降ル夜ニ!」
一瞬で大量の矢を纏めて放つ。それは《リブラ》をハリネズミにした。そして《リブラ》が光り出し……輝きだして……爆発四散した。
*****
「土曜日に星獣イベントで日曜日に世界大会の予選、かぁ……」
夏休みのイベントを確認してアリアはため息を吐いた。
「そもそもさぁ、ギルドでやるんならさぁ、もっとさぁ、色々さぁ、あるじゃん?」
「アリア、我が儘を言っちゃいけないよ」
「我が儘かなぁ?」
「さぁ?」
シンの撫で撫でにアリアはにゃー、と泣きながら笑顔になった。さっきまで怒っていたのは忘れてしまったのだ。そのままシンの肩に乗っている。
「危ないから降りなさい」
「にゃー」
「人語で話なさい」
シェリルに掴まれ、ぽいっと投げられた。そしてアリアはくるくると回転しながら壁に着地してシェリルの背中に飛びついた。
「もぅ……重いんだけど」
「なぬ!?」
シェリルの一言でアリアの表情が固まった。そして床に逆立ちのような感じで降りて
「シンシン! 重い!? 重くなってた!?」
「そんなことはないと思うよ?」
「だよね!?」
「シンは優しいから本当のことを言わないだけだったりして」
「ええ!?」
「シェリル……」
「嘘だよね!? 軽いよね!?」
アリアが泣いているのに気づいたシンは少し睨むようにシェリルを見た。それにシェリルは肩を竦めて
「なんてね。アリアちゃんが重くなれるようなパーツなんて無いし」
「重くなれるパーツが……無い?」
アリアは絶望したかのような表情で自分の胸を撫で下ろした。引っかかりなど無い。すとん、と行ってしまう。そのまま真っ暗な表情でシンを見上げる。
「ごめん……シン」
「良いよ」
シェリルはそれを眺めながら
(なんであの状況から甘い空気を醸し出せるのよ……)
と思っていた。もうすでに目の前ではアリアがシンとキスしていた。何を経たんだこいつら、とシェリルは内心毒を吐きそうになっていた。
*****
『第二回ソーニョ・スキルズ・オンライン世界大会予選九州大会、開始!』
アリアはニュースサイトのトップに燦然と輝くそれを眺め、タップして開いた。公式が賭けを認めているからなのかオッズが出ている。もっともアリアには理解できないので記事だけに目を通していると
「あ、私が」
写真を撮られていたようだ。まぁ、それは別に良い。だが
「なーんだかアイドル扱いみたいだね」
シンといちゃついている写真を見てにへら、と頬が緩む。そのままニマニマしていると
「あら、こんな時間に起きているなんて珍しいね」
「お母さん、おはよ」
「おはよう。何かあるの?」
「うん、私たち三人はちょっとね」
「そうなの? 大変ねぇ」
「まぁねー」
世界クラスのプレイヤーたちがいるかもしれないから。まぁ、僕たちが世界最強のギルドなのは疑いようが無いけどさ。
「それってあのゲームの大会のこと?」
「なんだ、知ってるんだ」
「そりゃあエミに頼まれたからね……愛娘三人が頑張っているゲームなら興味が湧いちゃうもの」
「……もしかして、やってたりしないよね?」
「うん、していないわよ。それよりも三人はテレビに映るのかしら?」
「うーん、多分ね」
*****
「そう言うわけでエミとシェリ姉を活躍させてあげたいです」
「……構わないがお前はどうするつもりなんだ? 二人だけを戦わせるつもりなのか?」
「ん、ぶっちゃけシェリ姉だけで終わりそうなんだし良いかなって思ったんだけど」
「確かにそうだが……いや、お前たち三人で出ろ。それ以外は譲れ」
「うん、良いよ」
魔王は気にするな、と言いながらアスカと一緒にのんびりとコーヒーを飲んでいた。その様子は大人といった雰囲気があり、地味にアリアは憧れていた。
「ねぇ、魔王」
「なんだ?」
「魔王ってアスカとどんな生活を送っているの?」
「……私生活に踏み込んでくるか?」
「んー、シンと結婚した後の参考にしようかなって」
「止めておきなさい。俺たちは同じ職場だから良いが……」
魔王はそこまで言って達也がラーメン屋で柘雄を勧誘していたのを思い出した。アレはアリアのためだったのかもしれない、と思いつつ、
「アリア、結婚した後の生活についてはどう考えているんだ?」
「えっとね、た……セプトに頼んで仕事を家で出来る感じのを回してもらうって感じ?」
「感じ、が二回入っているぞ……それはセプトに、他の職場の者には頼んだのか?」
「うん、もう大体通ったよ」
アスカが苦笑している。自分ではそうはできないだろう、と思っているのだろう。
「家事はどうするんだ?」
「ふっふっふ、きちんと料理も洗濯も掃除も出来るようになってきているぜ」
シェリルは及第点だ、と思っていたがそれを口に出していないだけだ。エミは呆れているだけで、母親と父親は親馬鹿なので褒める一方だった。調子に乗る一方だが向上心を捨てていない、それがシェリルにとって頭を悩ませていた。
「結婚後の生活ですか、長い話になりますよ?」
「む、むむむ。長いの? どれくらい?」
「そうですね……アリアの髪ぐらい長いです」
アリアは自分のエアリーショートな髪に触れて
「凄い長いね」
「ショートの意味は!?」
毎日更新ってさ、意外と疲れるんだね(240話書いて気づく孤面の男19歳)
ちなみに孤面の男グループで一番書いている人が400話を超えているんですけど文字数的には毎話500程度。
毎話3000書いているので一番長いのは243話なんですよね
ちなみに初期メンバーの「召喚された~」という奴です。序盤はなんだかあれですが、後半は面白いはずです(それの作者談)
つまりそろそろ越えそうです
次回は予選です
予選のつもりです
にゃにゃにゃのにゃ~(直訳:ネタ切れ)
ネタ切れにも関わらず、毎日投稿しているところを見るとネタ切れでは無いのかも知れないと思った午後22時




