リブラ
「アリア、どうしたの?」
「……うん、少し考え事」
アリアは腰の二本の剣に手を掛け、目を閉じていた。もはやその腰に剣はあまりない。五本しか無い。まぁ、普通に比べれば多いのだが。
「シンはさ、負けたくないなーって思っている奴に抜かれそうになった事ってある?」
「ん……負けたくない相手はいるけど相手が先に行っていたのはあるけどね」
「そっか……」
アリアは床を蹴り、壁に着地した。そしてそのまま壁を蹴り、回転を加えて
「シーンー!」
「はいはい」
「ナイスキャッチ」
シンの腕の中でほにゃほにゃと笑うアリア。それに苦笑しながらシンはアリアの髪に指を通した。現在のアリアの髪型はショートヘアー。それ以外の形容をシンは知らなかった。実際にはエアリーショートという。
「それよりもアリア、そろそろ星獣の時間だよ」
「ん……そうだね。ちょっと今回は……遊んでみようかな」
*****
天秤座の星獣はトーテムポールのような物だった。それの数段から伸びる棒と、その先端から伸びた糸の先の皿。
「エミちゃん、大丈夫? 緊張してない?」
「この程度で緊張するはずないでしょ。エミはもうレベル2000を越えているんでしょ?」
「あ、はい。越えていますよ」
現在のエミのレベルは2013、低めだ。もっともそれは《魔王の傘下》が基準なだけであって他の一般プレイヤーから見たら高い範疇に入る。
エミは扇と剣を構え、星獣に、《リブラ》に向かって斬りつけた。さらに扇を投げて追撃を狙うが
「っ、当たってない!?」
「あん見た目で俊敏……随分とアリアみたいね」
「「ええ!?」」
「だってちんちくりんが早くて力も強いのよ」
「「あー」」
この姉妹は納得できた。そしてそれを聞いて苦笑しているシエルとアリス。そしてアリスは鞭を抜いた。そのまま振るって飛んできていた光の槍や鳥の羽、木の枝を払った。
「なんとも統一性の無い」
「トーテムポールがあった地域ではアレが普通なのでしょうか?」
「さぁ? インディアンに聞きなさいよ」
「インディアンが立てたのですか?」
「さぁ? インディアンに聞きなさいよ」
レヴィの言葉にアリスは苦笑しつつ、鞭を振るった。それは攻撃を受けそうになっていたエミの体に巻き付き、攻撃を回避させた。さらにそのまま手首を器用に動かして空高く、エミを浮かばせた。
「やりなさい、エミちゃん」
「うん!」
シェリルの声と同時にエミは剣を両手で握り、
「《解放》! 《爆炎王龍天魔剣》!」
アリアのネーミングセンスが垣間見える剣の名前にレヴィがため息を吐きつつ、引き金を引き続ける。飛んでくる様々な物を撃ち落としているとーー風を切る何かの音が聞こえた。新手か、と思ったが上を確認する隙は無い。
「アリス、確認できる?」
「無理です。意外と《リブラ》の攻撃が激しい」
「そうね……ちょっと防ぎなさい。攻めに転じるわ」
「分かりました。気をつけてくださいね」
レヴィは頷きながら銃を二丁、握りしめてーー両手を広げた。Tのような姿勢を取って
「《解放》!」
二丁の銃から黒いオーラが立ち上った。そして連射を開始した。放った弾丸は次々と《リブラ》を撃ち抜いていく。だが意外と耐久が高く、大したダメージが通らない。
「《解放》形態じゃ話にもならない、と……面倒ね」
「レヴィ、《ハーディス》を使わないのですか?」
「ちょっと事情があってね、今は使いたくないのよ」
使えることには使えるのだが使いたくはない。レヴィはそう思いながら次々と弾丸を放っていた。
「マモンたちはどこのと戦っているのかしらね」
「さぁ……おそらく一番難度が高い場所でしょうね」
「だろうね……っし、準備オッケー。壁サンキュー」
「いえ、構いませんよ?」
アリスはそう言いながら鞭で払い落とし、こちらを向いた。何をするつもり、と言う目で。それに頷いて
「《二重解放》! 《超電磁加速銃》!」
充分に溜めた。だから
「100パーセントチャージ……受けて散れ!」
放った。
*****
「うわ!?」
オレンジ色の閃光が飛んできた。咄嗟に避けるが《リブラ》にそれが突き刺さり、尋常じゃ無いダメージを与えた。
エミは動揺しながら地面に着地した。そして顔を上げて気づいた。《リブラ》の体力の残量が5割を切っていることに。
「エミ! 避けなさい!」
「っ、間に合って!」
鞭が手首に巻き付いた。そしてそのまま引っ張られた。だけど遅かった。体力が一気に無くなった。
「体力が!?」
「どういう効果なのよ!?」
レヴィは自分の体力が減ったことに動揺を隠せない。どこからどうやって体力が減ったのかも分からない。
アリスはそっと目を細くして《リブラ》、ではなく他のプレイヤーたちに目を向けた。たくさんのプレイヤーの体力を見て……判断した。
「体力を《リブラ》と同じ程度にされるようです。とりあえずは攻撃を続けましょう」
*****
アリアはその様子を眺めながら剣を両手で握りしめた。そしてそのまま空を蹴った。高速で落下しつつ、剣を振りかぶり
「去れよゴーストーー《バニッシュ》だ!」
高速の四連続攻撃が《リブラ》の頂点に叩き込まれた。その威力を受け止められず、地面にめり込む《リブラ》。さらに続けての《悪魔龍皇剣ー五禍神の縛鎖》と《禍神の穴剣ー五禍神》での連続斬り。《リブラ》の体力ががりがりと削られていく。しかしそこでまた、《リブラ》は自分の力を使った。アリアの体力を減らし、一撃を加えて終わらせるつもりだった。だが
「《獅子の咆哮》!」
閃光が槍のように伸びて《リブラ》を貫通した。
*****
「とりあえずアリア、一つだけ聞いても良い?」
「んー? 何?」
「どうして半分を切ってから攻撃したの?」
「あの程度なら速攻で終わらせられるかなって思って」
「横取りに近いわよそれ」
「んー、言われてみればそうかも」
アリアは少し困ったような顔でそれを取り出した。その形状は一本の長い、《大太刀》だった。
「アリア、それはいったい何? 星獣装備?」
「うん、星獣装備だよ。《アストライアーの用いた天秤刀》」
「……はぁ? 《アストライアー》? 乙女座でしょ?」
「うん、でも神話では天秤をアストライアーが使っていたんだって」
知らないわよ。レヴィはそう思いながら銃で地面を撃った。するとその弾丸があたった地面が揺れた。
「お!?」
アリアが揺れ、体勢を崩した。しかし地面に手をついて、そこから跳ね上がって背中から翼を生やす。とことん何をしているんだ、とレヴィは思っていると
「地面を揺らすって言われても……随分と使い勝手は悪いわね」
「それが特殊装備の常だよ」
「あっそ」
レヴィは地面を蹴り、跳び上がった。すると思っていた以上に跳べた。
「これが《調和を求めし天秤銃》の力ね……アリア、交換しない?」
「やだよ。だってレヴィは僕の銃より《リブラ》の靴が良いんでしょ?」
「まさか。アリアがこれをあっさりと越えてくれるって信じているわ」
レヴィ、と感動しているアリアを見つめてレヴィはチョロい、と思っていた。
リブラはレグルスと同じステータスです
そのため、あれからどれほどの差があるのかを示すためにあっさりと終わってしまいました(ヴァルゴ? エウローペー? 知らんな)
ネタ切れ切れ切れ~
誰か感想ください(切実)
そう言えばヤフーとグーグルで「そーにょす」と「そーにょ・」と入れたら予測に出てきました
感動しましたマジで




