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明日は星獣

「アリアちゃんを止めるのは不可能よ」


かつてマモンが言っていた言葉が脳内でリフレインした。それは目の前で実現しようとしていた。

エミの首をはね飛ばそうと高速で閃く剣。それを私も、マモン求められない。だが


「っ!?」

「お姉ちゃんならそう来るって思っていたよ!」


エミの反撃カウンターがアリアちゃんに向かって放たれた。しかしアリアちゃんも然る者ながらそれを剣で逸らし、剣で斬りかかった。そしてその剣を扇で受け流し、攻撃を仕掛けるエミ。


「エミ、いつの間にあんなにやれるようになっていたのよ……」

「違う……エミちゃんが強くなっているわけじゃない」

「はぁ? 本気で言っているの?」

「対アリアちゃんに仕上げている……それも尋常じゃないほどに」

「……それって、エミが強いってわけじゃないの?」

「ううん、違うよ。エミちゃんはアリアちゃんに対策を練っただけであって……アリアちゃんじゃないなら、相手がシンやエミリアなら勝てない」


*****


エミの剣が右耳の辺りを掠めた。アリアはそれを体感で感じながら《乖離天連》と《乖離地連》で斬りつけた。扇に防がれても、剣は二本ある。だから扇を握っている手を切り落とす。そのまま連続して腕を切り裂くが


「《プレリュード》!」


高速の剣戟が。咄嗟に二本の剣を交差させて防ごうとするが


「今だよ! シェリ姉! マモン!」

「《セブンソード・メテオ》16384!」


6桁を超える本数の剣が降り注いできた。思わずアリアは目を見開いてーー剣を振り抜いて


「《二重解放リベレイトーディスチャージ》! 《比翼乖離双刃ナラビハナレシツバサ》!」


叫び、二本で空を切った。そしてそのまま地面を蹴って剣を避けようとするが


「ほら、こうすると思ったんだ」

「マモンまで!?」

「ふふふ」

「あ、エミが《オリュンポス》を殺そうとしている」

「何ですと!?」


マモンが叫び、振り向いた。しかしそこにはエミはいない。エミはアリアに襲いかかろうとしていた。だがアリアはエミの動きを呼んでいた。だからそのままエミの残っている腕を掴み、放り投げてマモンにぶつけた。さらにそのまま双剣を鞘にしまい、剣を抜いた。その剣は《禍神の穴剣》だ。


「うわ、ガチだ!?」

「っ、《セブンソード・メテオ》!」


放った七本の剣が倒れている《オリュンポス》に向かって放たれた。それを見てアリアは地面を蹴って《オリュンポス》の前に立ち塞がってーー剣を振るった。そして七本の剣を爆発させて


「……シェリ姉、らしくないよ」

「それが? 自分らしさなんて自分で創るものよ」

「何故今哲学なのよ」

「さぁ……シェリ姉だし」


マモンとエミの言葉を聞いてもシェリルは何も言わない。そして錫杖を《オリュンポス》に向けて……


「撃つわよ」

「え!? それが?」

「アリアちゃんが殺したいんじゃなかったの?」

「あ……ま、良いか」


アリアちゃんはため息を吐いて剣を鞘に収めた。そのまま一歩下がって


「もう良いよ。それを殺すのも譲るよ」

「譲ってくれるの?」

「エミを助けようとしたはずなのにエミと敵対しているからね……もう、良いや」


アリアちゃんはため息を吐きながら手を高く掲げて


「《バニー》」


兎のような状態を解除した。そしてにんまりと笑って


「それじゃ、お先に……あぁ、そうだ。エミ、世界大会の予選でやろうね」

「え?」


アリアちゃんは何も答えず、体を丸めた。そしてその背中から四本の翼が生えた。瞬間、その姿が消えた。


*****


「アリア、それで良かったの?」

「良かった? どういう意味なの?」

「なんて言うかさ、アリアらしくないなって思って」


シンは不思議なことを言う。アリアはそう思いながら逆立ちを止めてシンに抱きついた。そして


「良いんだよ。僕は世界大会の予選で全部決めるつもりだし」

「うん、それも気になるんだよね。どうもギルド戦らしいし」

「え!?」


慌てて魔王にそれを確認すると


「そうだが……知らなかったのか?」

「知らなかったよ!?」


夏休み最初の週、アリアの絶叫がカーマインブラックスミスの中に響き渡った。


*****


「星獣が来るのって明日だよね?」

「ああ、そうだな。でもよ、どうすんだ? 全員でボコるのか?」

「シエルの言う通りだろうな」


来る星獣は天秤座だ。それを知っているマグナは何も言わず、うどんを啜った。そして


「アリア、七味唐辛子を入れすぎました」

「そうなの? 一口もらっても良い?」

「構いませんよ、アリア」


マグナからお箸を借りてうどんを啜る。うん、確かに辛い。


「入れすぎだね」

「はい、入れすぎました」


マグナは苦笑しながらうどんを食べて


「マモン、どうしたのですか? 元気が無いように見えますが」

「大学はまだ夏休みじゃないのよ……」

「そうですね。ですがレヴィもベルも元気ですよ?」

「私狂は4限目まで全部入っているの」


マモンの言葉にマグナが頷いていると……AIのマグナから連絡が入ってきた。


「どうしました?」

『星獣イベントでZodiac MonsterのAIを手伝って欲しいのです』

「断ります」

『何故ですか?』

「一度、挑んでみたいと思っていたんですよ。だから私はあなたの敵です」

『……分かりました。ではあなたは私の敵ですね』


マグナは通信が切れたのに苦笑する。短気のようだ、と思いながら笑う。すると


「どうしたのですか?」

「何がですか?」

「マグナが微笑んでいたので」

「そうでしたか……アスカは何か食べないのですか?」

「そうですね……アリア、何か甘い物をお願いいます」

「ほーい。重め? 軽め?」

「軽めでお願いします」


んー、とアリアは考えながら


「果物系シャーベットとか?」

「あぁ、素敵ですね」


アリアの好みで常時冷凍庫には果物を切った物が保存されている。それを取り出して小さく斬って


「ほい、スプーンでね」

「ありがとうございます。ちなみにお値段は?」

「んー、100円で良いよ」

「消費税は込みですか?」

「抜き抜き」

「では120円ですか」


アスカは安い、と思いながら食べていると目の前でもアリアが食べ始めた。ちゃっかり自分用のも作っていたようだ。それにアスカとマグナが苦笑していると


「よし、寝る!」


威勢よく言い切った。何を言っているんだ、と二人が思っていると


「二人が食べ終わったら今日はもう閉店!」

「「え!?」」

「眠いからまた明日」


なんともマイペースなアリアに二人は笑い、手を動かす速度を上げた。


*****


アリアは《禍神の穴剣》を片手で握りしめ、目を閉じる。そのスロットには何も差し込んでいない。なんの補助も無い状態で剣を振るう。真下からの切り上げ、右上からの切り払い、左下からの横薙ぎーー


「随分と真剣ね」

「……それがどうかしたの?」

「別に。鬼気迫るって感じでも無いし。とりあえずアリア、お客さんよ」

「……そっか」


アリアは背中の鞘に剣を収めて


「エミが強くなっていた。いつか負けそうだって思ったよ」

「……あ、そ。でもギルド戦なんでしょ?」

「うん……総力戦だと面白いんだけどね」


口ではそう言いながら、アリアは笑っていなかった。

タイトルは次回予告


誰かアリアちゃんのキューティな絵を描いてくれ……

絵を描けない作者のために……


ちなみに作者はアリアちゃんを好みとは真逆にした結果、親心が芽生えました

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