禍神の穴剣
光と虚の《アザトース》、その圧倒的な力で大半のプレイヤーは挑む気を失っていた。しかし諦めていない者もいた。
地面を蹴ったアリアを背中に乗せ、地面に降ろしたひよちゃんはアリアの足下に降りた。それを見て、アリアは冷静に戻った。
「さてと、君はマグナか分からないけどね……とりあえず、やられたらやり返すってのが世の中の常識だよ」
「随分と物騒な世界で生きているんだね……」
「そりゃまぁ、アリアちゃんだし」
「アリアだからな」
「アリアだしね」
「アリアちゃんだからね」
「お姉ちゃんだもん」
《魔王の傘下》は螺旋大陸の縁に立ち、《アザトース》と向き合う。他にも多くのプレイヤーが《アザトース》に向き合っていた。
《アザトース》が戦闘を開始するのは攻撃をされてからだ。だが攻撃ではない、全プレイヤーの体力を強制的に0にするのは自然現象だ。だから《即死無効》スキルがあったとしても無駄だ。
「さてと、何か作戦はあるかね?」
「アイテムドロップが無いんだ。ゾンビ作戦で良いだろう」
「はいはい。それじゃ最初は調査ね」
死ぬを前提に作戦を立てた魔王、しかしそれにアリアは首を横に振って
「僕は挑むよ、正面から」
「アリア……」
「私も挑みます。私が相手ならば私が良いでしょう」
「マグナも?」
「だったらあたしも行こうかね」
「シエル……」
最近出番が少ないのを気にしてか、シエルは名乗り出た。そして
「アリアちゃんが行くのなら私も行くわ」
「なら私も行くよ」
シェリルとエミの言葉にシンはため息を吐いて
「僕も行こう」
「シン? 危険だよ?」
「アリアにだけは言われたくはないよね」
《アザトース》はその長い体のまま浮遊している。それを見つめて
「体力は1億、これはクトゥルフ神話系モンスターと同じだね」
「アリア、勝ち目はあると思うか?」
「ジャックこそ。ジャックたちが創ったんじゃないの?」
「そりゃ俺たちが創ったんだけどよ……その俺たちが勝てるなんて思えないんだよ」
「セプトも同意見なの?」
「まさか。俺は倒せると信じているさ」
セプトの言葉にジャックは疑いの目を向ける。するとセプトは笑って
「ジャック、アリアだぞ?」
「……そう言えばそうだったな」
「なんだかさっきから酷い納得の仕方だよね」
僕が不満を口にすると、何故か全員に温かい眼差しを向けられた。アリアはそれに頬を膨らませながら剣を抜いた。それは何故かとてつもなく頼りなく見える灰色の剣だった。しかし
「……さて、それじゃあ攻勢に出ようか。やられっぱなしじゃ終われないからね」
アリアは反りのある、そして剣の背に四角い穴がいくつか空いている剣を構えて
「さぁ、初陣だよ、《禍神達の穴剣》!」
空いている穴にアリアはチップのような何かを差し込んだ。そしていつの間にかその剣は水色に染まっていた。そしてアリアは地面を蹴り、足場も何も無い空中に飛び出した。
「フライ!」
背中から天使のような純白の翼を生やし、空を舞うアリア。叫ぶ必要も翼を生やす必要も無い。そして地面を蹴った勢いに乗せて一閃した。さらにそのまま《アザトース》の胴体を蹴って高く飛んだ。
「水属性は意外と効く、と」
「分かったぜ、《アイスランス》4096!」
ベルは一気にケリを付けるつもりで放った。しかし意外とダメージを受けていない。どういうことだ?
「水属性近接が効くのか……? アスモ!」
「分かってるさ! 《エンチャントーアクア》! 《ミーティアメテオ》!」
飛び、斬りつけた。しかしダメージは軽微だ。
「どういうことだ!?」
「何か条件があるのかな!?」
アリアはレーザー光線を避けつつ、《禍神の穴剣》からチップを抜き、新しいチップを差し込んだ。目映い薄緑色となった剣を構えてアリアは飛ぶ。飛びながらレーザー光線を避けている。
ちなみにレーザー光線は全方位、全層に向けて放たれている。今この瞬間も数多くのプレイヤーが光となって消えていく。ちなみにアイテムドロップは必ずないようだ。
「アリア! その剣の素材はクトゥルフ神話系か!?」
「え? あ、うん!」
「総員クトゥルフ神話系モンスターを素材にした装備を使え! じゃないと時間が掛かる!」
アリアの剣が《アザトース》の体力を削るのを見て確信した。魔王は即座に全員の装備を眺めて
「エミ、サタンが飛んで前を務めろ! シェリルとベル、アスモはアリアたちに補助を!」
「うん!」
「了解!」
「《エンチャントーストレングス》!」
「《エンチャントーアジリティ》!」
「《エンチャントーダークネス》!」
アリアと握る剣が光に包まれた。それをアリアは見つめーー微笑んで
「ありがと!」
斬りつけた。《アザトース》のレーザー光線はアリアに狙いを定めておらず、無差別に撃ち続けているだけだ。だからこそアリアは《アザトース》のレーザー光線を軽々と避け続けていた。しかし
「《ダークシールド》2048!」
「っ。避けろ、ベル!」
「あ!?」
レーザー光線が軽々と闇の盾を突き破った。とっさにベルを蹴り飛ばした魔王、その二人の隙間にレーザー光線は突き刺さりーー地面を貫通した。
「助かった……つか受けたら即死前提かよ!?」
「みたいだな……弾幕ゲーみたいだな」
魔王は言いながら全員に広がるように指示を出して
「全員、攻勢に出るぞ!」
*****
「風も水も効く……? だったら炎も試さないとね」
《ハストゥールチップ》を剣の背から抜いて新たに《クトゥグァチップ》を差し込んだ。真紅の剣身で《アザトース》に斬りつける。総体力1億の内から1万ほどを削り取りつつ、アリアは思った。
(武器に前提条件があるなんてマグナらしくない……)
マグナが手を加えていないのか、とアリアは安堵しつつ、剣の背に一気に《クトゥルーチップ》と《ハストゥールチップ》、そして《ナイアルラトテップチップ》を差し込んでーー剣が漆黒に染まった。
「ん!」
その状態の《禍神の穴剣》を《アザトース》に向けた瞬間、《アザトース》の講堂に変化が訪れた。何のことは無い、体力が一割削られただけなのだがアリアはそれに気づかずに戸惑っていた。そして
「うわ!?」
レーザー光線がアリアを狙った。それを避けて《アザトース》の胴体に向けて一撃を加えた。その瞬間、吹き飛ばされた。ダメージは与えたが……
「アリアちゃん!? 《スターライトヒール》!」
「あっぶねぇ……助かったよ、シェリ姉!」
「良いから攻めなさい!」
え、引かせないの? アリアは珍しく姉の言葉に戸惑いつつ、斬りつけようとした。瞬間、嫌な予感がした。そして
「《ミーティアリープ》! は!?」
アスモが一瞬で消えた。全損したんだ。圧倒的な攻撃力を誇っている……そう思った瞬間、僕も、全員で全損した。
*****
「時間制限で即死か……中々面倒なシステムだな」
「魔王、どうするよ?」
「離れれば攻撃は仕掛けてこない。それが分かっただけでも重畳だろう……さて、そろそろのはずだ」
魔王が手元の時計を見た瞬間、全員が全損し、カーマインブラックスミスの中で蘇生した。
「……五分、かよ」
「中々面白いじゃないか」
アリアはそう言って《真天魔王鎚アスタリスクハンマー》を肩に担いだ。
禍ってマガツじゃ変換できないんですね
現在はカと入力して変換しているぜ
現在プレイ中がつり乙2
買ったけど未プレイがΦ
新たに買おうとしているのが涼風&舞風またはハピメア&ハピメアfd
クリアしてから買おうよマジで
《アザトース》戦が終わると夏休みに突入します
だからネタをください……




