ドラゴン征伐
「ドラゴンの討伐、録画しておこうかな」
負けたら記録として残せるし。
だからメニューから設定して
「先手必勝って言うけど格上だもんね」
慎重にその隙を探す事にした。
2本の足に2本の腕。双翼と尻尾。厳しい顔。角はない。真っ赤な鱗に覆われたその姿は色は違えどリザ○ドンみたいだ。
*****
火山の中腹、そこにある大きな穴が眠るための巣のようだ。こっそり近付いても反応しないくらいにはぐっすり寝ている。
風鉄の剣をしっかりと握る。暑いエリアだけど汗をかかないから問題無い。
「スターダストブレス!」
6連撃を放つ。それは弱そうだと思った部位を抉り切る。
そして立ち上がり体を犬のように震わせたドラゴンから飛び降りる。
鑑定スキルのレベルが上がったおかげでモンスターの名前判別を可能とした。
「ヴォルケイノドラゴンってまんまじゃないか!」
飛び降りた勢いを殺さずに走る。元々立っていた位置に爪が振り下ろされたから。
「今の6連撃でようやく1パーセントのダメージ⁉︎」
割合の表示を見て呆れる。なんて膨大な体力なんだ。しかし鑑定スキルが次のレベルになれば数値で表すのだろう。どっちが良いかは分からない。
「動きは鈍重、さらに今は爪と頭による噛みつきだけ」
再び振り下ろされた爪を回避してその足にアークスラッシュ。パーセント表示に変化は見られない。細かく表示はしてくれないんだね。
「片目を潰したから最初から全力で来るんだね」
スタミナが尽きるのを待つのも良いかもしれない。だけど僕は
「ソードリバーサル! スターダストブレス!」
流して叩き込む。それを何度か繰り返し、75パーセントを割った瞬間
「来ると思ったよ!」
ぶわっ、というような勢いで吐かれた炎。それは球となり巣の壁を砕いた。降り注ぐ瓦礫にヴォルケイノドラゴンは心なしか不満そうだった。
「速度なら僕が上だ! ミーティアブラスト!」
ミーティアとリープの違いは速度と移動距離、威力だ。
反応出来ないほどの速度で顔面まで跳躍突進。そして勢いを叩き込む。ブラストがあるから重攻撃。頭が揺れた。しかし
「狙いとは違う!」
振り下ろされる爪や吐かれる火球を駆け続ける事で回避する。スタミナゲージも減っているけど
「速度が高いからあんまり動いてスタミナ消費はしていないんだよね!」
突き出された爪を飛んで回避。続けて振り下ろされる爪をアークスラッシュを放ち、滞空時間を利用して回避。最後に吐かれた火球は地面に着地と同時に回避する。
うん、完全に手玉に取れている。スタミナポーションも量産して(こっちはまだ安定していないから売ってない)いるし余裕だ。
スタミナ回復にはゲテモノって言うけどそれをシステムに持ち込むのは間違いだと思うな。素材、蜥蜴の鱗と薬草と水だからね。ちなみにMPの方は魔力草って名前の外見ブルーベリーと水。簡単。
話が逸れ過ぎた。
「だけど最強の僕にとってそんな事は問題じゃないよ」
残り61パーセント。
*****
「なに?」
「へぇ」
「……どう思う」
「突飛だな、と。セプトは?」
「同感だ」
スレッドに新しく建てられた一つ。そこにはとあるソロプレイヤーが火山のドラゴンに挑むという宣言だ。
そしてその宣言をしたプレイヤーは
「アリア、何を考えているんだ?」
「最強になりたいんじゃないのか?」
*****
「……やっぱり教えるのは早かったかな?」
「何を?」
「アリアちゃん、ヴォルケイノドラゴンに挑んでる」
「「「え⁉︎」」」
「ヴォルケイノドラゴン?」
「火山のドラゴンで今現在最強のモンスターだね」
*****
「50パーセント切った!」
僕は新しく増えた行動パターンを読むために一旦下がる。そして風鉄の剣の耐久がやばいのに気付く。
「余裕はあるけど……ねっ! ふぇっ⁉︎」
余裕があったはずの風鉄の剣が一回切っただけで折れた。もっともヴォルケイノドラゴンの体力もさっきよりも減った。
「2本目!」
新しく取り出した錫の剣の耐久を確認する。減っていて42。それでも実現には十分だ。
「やぁっ!」
切りつけて下がる。そして耐久が32に減っているのを見た。耐久が一回で10も減った。だけど
「その程度なら問題無い! スターダストブラスト!」
振り下ろされる爪の付け根に向けて3連撃。続けて打ち上げるための一撃。さらに飛び上がって2連撃。爪の付け根から滴る血が現実と錯覚させる。
「だけどこれは現実じゃない」
殴るように突き出された爪が地面を砕く。その破片が僕の体力を削る。それに一瞬気をとられた。まずい。
「きゃぁ⁉︎」
殴り飛ばされた。そう思った瞬間にはすでに立ち上がろうとしていた。痛みは無い。衝撃だけだ。だけど
「絶対にやり返す!」
残り38パーセント。そう理解した瞬間表示が変わった。残り89,712。
「数値で表示かな」
少し嬉しく思いながら駆け続けて
「ミーティアスラスト!」
股と尻尾の隙間を抜けて切りつける。ダメージがしっかり通っている。でも
「片目を潰したのにこんなにノロノロ動くの?」
疑問を感じながら手玉に取っていると
「25パーセントってえええええ⁉︎」
紺碧の空に雄々しい翼翻して飛翔するヴォルケイノドラゴンが。しかもその状態で火球を吐いてきた。
こっちの攻撃の届かない場所からの遠距離攻撃って無理ゲーだよ!
「だけど案外低いね」
僕は地面を蹴ると同時に初めて使うスキルの名を叫ぶ。同じ系統なのに表示されたそのスキルを。
「ミーティアッリィィープ!」
その翼を断ち切るべく、僕は紺碧の空へと飛び上がった。
*****
「やっぱりアリアちゃんは早いね」
「そうかな?」
「普通そんなに早く現最強を倒すのはおかしいと思うよ?」
僕はマモンの言葉に首を傾げながら畑に薬草とブルーベリーの素を植える。1日経てば育つらしい。
「さてと、マモンとセプトとシエルって知り合いなの?」
「このお店、カーマインブラックスミスの前で2人が仲良く話していたからね、連れて来ちゃったの」
「ちなみにセプトか名付け親ね」
僕の言葉に目を丸くするマモン。すると
「付与素材採ってきたぞ」
「あ、貸して」
「火山にとある無謀なソロプレイヤーの挑戦を眺めに行ったついでに狩ってきた」
僕は少し顔を逸らす。そうなのだ、終わってドロップを確認して帰ろうとしたら拍手で出迎えられたんだ。あれには驚いたよ。
「結局ソロで勝ったんだけどね」
「ソロで挑む相手じゃないだろう」
「え? 普通じゃないの?」
セプトの呟きにマモンが驚いている。僕も驚きだよ。
「さてと、話は戻るけどその素材で剣、作ってくれる?」
「んー、鋼鉄インゴットに余りがあるから良いよ。もちろんお金は取るけどね」
「……お手柔らかに」
「やだよ」
僕は裏の部屋に移動する。そこには鍛冶屋の金床と炉がある。3人も入って来た。
とりあえずアステリスクハンマーを取り出して耐久を確認。これ自体の耐久も減るから他の即席ハンマーで耐久を回復させたりもした。
これは初めての試み。僕が僕のためじゃない。他の誰かのために武具を作るのは。
「……始めるよ」
僕は炉に火を灯した。
今回はドラゴン征伐
順番的には6個目の街の後に戦う相手
特徴はもう書いた
SF日間ランキングの34位って……作者は夢でも見てるの?