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高校二年の悩み事

「アリア、次はどれに挑むんですか?」

「うーん、炎の《クトゥグァ》でも良いし闇の《ニャルラトホテップ》でも良いし」

「風の《ハストゥール》に水の《クトゥルー》を撃破したんだよね」

「残るは二体だね」


*****


「炎に挑むんだね」

「うん、そうだよ。だから一緒に頑張ろうね、シェリ姉」

「私は?」

「足手まとい」


アリアはシェリルから強めに頭を叩かれつつ、エミの蹴りを避けた。そのままたはは、と苦笑して


「だってエミが僕たちほどに戦えるとは思い辛いんだもん」

「アリアちゃん、私の時はどうだった? すぐに追いつきそうになったでしょ?」

「追い抜けないけどね」


シェリルの手がアリアの頭に迫る。しかしアリアは超人的な反応速度でそれを回避した。そしてそのままシェリルの体に抱きついて


「さっさと行こ-!」

「はいはい。邪魔だからさっさと離れてね」

「あう」


頭を叩かれたアリアは笑いながら呻いた。


*****


炎のクトゥルフ神話系モンスター、《クトゥグァ》。それは炎を纏った巨大な体を持たない炎のような存在だった。近接系のプレーヤーが近づけば炎で継続ダメージを受けつつ、炎を斬るのは難しい。アリアは困りながら《悪魔龍皇剣》を両手で握りしめた。


「エミ、気をつけてね。僕も妹の丸焼きなんて見たくないから」

「私もだからアリアちゃんも警戒してね」

「ほーい」

「返事しながら突っ込まない!」


アリアは《悪魔龍皇剣》の幅広い剣身を使い、内輪のようにして炎を散らした。そしてそのまま突っ込んで切り裂こうとするが炎を斬ろうとすれば


すかっすかっ


と、空打った。そしてそのまま勢いを殺せずに炎の体に包まれて高速の継続ダメージを受ける。《クトゥグァ》の体を貫通して地面を転がるアリアの体力は7割強、一気に二割も持って行かれたのだ。


「……シェリ姉、少し任せても良い?」

「少しって事は何か手段があるのね?」

「うん」


アリアがそう応えた瞬間、《クトゥグァ》が拳を振りかぶり、アリアに振り下ろした。メニュー画面を操作していたアリアはそれを見てにやり、と笑った。そして


「《獅子の咆哮(レグルスネメア)》!」

「あ、懐かしい」


アリアの剣から放たれたカウンターの閃光が《クトゥグァ》の腕を貫通して胴体を射貫いた。しかしダメージは小さい。そしてアリアはそのままメニュー画面を操作して


「シェリ姉、あと10秒耐えて!」

「タゲられているのアリアちゃんなんだけど!?」


《クトゥグァ》の狙いはすでにアリアに定まっている。それを私が喰い止められるのか、シェリルの頭の中でそんな問いかけがなされーー自然と不敵な笑みが浮かんだ。そして


「《セブンソード・メテオ》《エンチャントーアクア》《フレア=アクア》!」


七本の剣が水色の光を纏った。そしてその剣に触れる炎が水となり、剣を纏う。余りにも水に特化したその剣は一本だけでもかなりの攻撃力を誇った。そしてそれは《クトゥグァ》の纏う炎をも吸収し、威力を高めてーー通り過ぎた。


「あれ?」

「炎自体が本体みたいだね……だったら!」

「「エミ!?」」

「《解放リベレイト》!」


エミの握る剣から劫火が迸った。かつてその姉が握っていた剣、《神炎王龍の天魔皇剣》だ。アリアが受け渡したその日からエミが握り続けている強い意志の込められた剣だ。


「っ!」

「エミ!?」


エミが駆けた。そして放たれる多数の炎の槍を左右に動くことで避け、時に扇で、剣で弾いてどんどん《クトゥグァ》に接近していった。そしてそのまま《神炎王龍の天魔皇剣》を構えて


「《スターダストスプラッシュ》!」

「……炎に炎って意外と通じるんだね」

「等倍でしょ……耐性でも無い限り」


シェリ姉と共に呆れつつ、杖を構える。そのまま使用魔法を選択して


「《エンチャントーアクア》! 《アクアレイン》!」


広範囲に継続的な水のダメージを与える魔法を使う。そんな妹の様子を見てシェリルはため息を吐いて


「《アクアボルト》512!」


水と雷の混合魔法が《クトゥグァ》の胴体に叩き込まれる。それは次々と《クトゥグァ》の体力が削れていく。雷の高速性と水の鎮火性が混ぜられたそれは絶大な力を発揮してーー


「アリアちゃん、止めを!」

「うん!」

「私は!?」

「エミも!」


シェリ姉の言葉にアリアとエミが駆け出した。そしてそのまま剣を構えて


「秘剣伍の型ーー絶影!」

「《ヴェルガモット》! 《不転雅楽》!」


アリアの高速の一閃とエミの連続攻撃が《クトゥグァ》の体を形成している炎がどんどん消えていく。そしてーー


「去れよゴーストーー《バニッシュ》だ!」


アリアの握っている剣が光り輝く。そしてそのまま高速の連続斬りが《クトゥグァ》を切り裂き、光となって消滅させた。


*****


「さっきの技、何だったの?」

「ん? 《聖剣エクスカリバー》の《解放リベレイト》形態で放つ高速斬りだよ。僕が創ったスキル」

「あぁ、《スキル創造》のね」


シェリ姉はドロップアイテムを確認しながら頷く。そして


「あ、珠ゲットしてた。アリアちゃんは?」

「ん、僕もだよ。これで水の《クトゥルー》、風の《ハストゥール》、炎の《クトゥグァ》の珠が揃ったよ」

「これで残るは闇の《ナイアルラトテップ》だね」


アリアはふぃー、と疲れたような息を吐いて


「シェリ姉はもう手伝ってくれないよね?」

「そんなこと無いわよ。頼まれて、時間があるのなら手伝うわ」

「そっか、ありがと」


アリアはほにゃり、と笑って……妹に目を向けた。そしてそのまま手を伸ばして妹の頭に手を乗せて


「エミもありがと。助かったかも」

「……そうなの?」

「うん、エミがいないと負けたかもしれない。ま、勝っていたかもしれないけどね」


姉の言葉にエミは呆れつつ、アイテムドロップで珠が手に入っていないのを確認した。そしてわずかに落胆していると


「エミはゲットしていないみたいね」

「そうみたいだね。じゃあ、また挑もうか」

「ええ、そうね」


二度目以降はさくさくと、スムーズに戦えたのだが


「やっぱり《悪魔龍皇剣》に《解放リベレイト》形態が無いのが辛いなぁ」

「それは贅沢でしょ。アリアちゃんが持っているのはサーバーに一本しか無い最強の剣なんだから」

「微弱な闇属性と強大な物理属性、その二つだけでも良いじゃん」

「良くないよー」


アリアは《クトゥグァ》の珠を両手に乗せながらくるくる回転している。そして


「明日の投稿は闇の《ナイアルラトテップ》戦だよ!」

「「メタい」」


謎ポーズのアリアに姉妹が突っ込んだ。


*****


真理愛マリア、どうしたの?」

「うん……少し考え事」

「もしかして実家関係のこと?」

「うん」


真理愛はシャーペンをくるくる回転させながら天井を見つめて


「僕、卒業したら跡継ぎにならないといけないんだよね」

「うん、知っているよ」

「だとしたらいつまで、遊べるのかな」

「……それは……卒業までだね。でも真理愛は受験勉強しないんでしょ?」

「まぁね」


羨ましいなぁ、と杏奈は呟いて


「ちなみに真理愛のご両親はどんな感じなの?」

「さっさと結婚して跡を継げってさ」


杏奈は顔見知りの真理愛の両親の顔を思い浮かべて苦笑した。

真理愛たちは高校二年です


ピュアホワイトが最近出てない件について

もう彼女の出番はしばらく無いものと考えても良いでしょう

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