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やだこの人、浮いてる

五属性のクトゥルフモンスター、そのうち一角は《クトゥルー》だ。アリアはそれを思い、少し悩んだ。


(あのクラスが出てくるのなら……辛いかもね)


そう思いながら廊下を歩く。そのまま体育館に向かった。今日は終業式、夏休みが始まる素敵な一日だ。アリアはそう思いながら鼻歌を歌いたい気分で全校生徒の中で唯一テンションが高かった。


*****


「アリアちゃん、宿題やってる……ってうわ!?」

「五月蠅いよシェリ姉、今は真面目にやっているんだから」

「……ごめん」


妹が真面目に宿題をしていた。シェリルにとってはそれだけでも驚きだったのに真剣に机と向き合っているなんて……ほろり、と泣きそうになった。もっともアリアも宿題をしている理由は遊ぶためである。

柘雄とデートする予定もあるしエカテリーナの家に遊びに行く予定もある。星獣イベントもある。アリアのスケジュールはぎっしりと詰まっているのだった。だからこそ、最初の一週間で宿題全部を終わらせる意気込みなのだ。


だが


「よし、これで8本の鍵が揃ったね」

「そうですね。ですがアリア、宿題は良いのですか?」

「モチベーションを保つためだから良いの」


マグナは呆れつつ、アリアの隣に立つ。そのままアリアが鍵を開け、開く扉の隙間に飛び込んで


「モンスター名は《ハストゥール》、風の神話生物ですね」

「だねだね」


アリアは《乖離天連》と《乖離地連》を構えて少し、本当に少しだけため息を吐く。だってそこにいたのは烈風を纏った巨大な何かだった。風が激しすぎて中身をみることが出来ない。


「マグナ、どう?」

「ダメです、弾丸が届きません。やはりこの相手はーー」

「うん、そうだね。この相手はマグナ自信だよ」

「まったく、これだから妹は。姉の威厳を見せてあげましょう」

「え、マグナって姉なの?」

「言うなればお母さんですね」


銃で迫り来る旋風を受け止め、吹き飛ばされる。しかしマグナは空中で何度か引き金を引いて体勢を立て直した。さらには銃口を《ハストゥール》に向けて


「《解放リベレイト》!」

「っ、僕も《解放ディスチャージ》!」


二本共を解放する。そのまま風の護りを突き破ろうと頑張るが


「マグナ!?」

「……風の護りは遠距離攻撃を弾き返す力もあるんですね……アリア!?」


二本で風の護りを切り裂く。そのまま風の護りの内側に飛び込むが


「え!?」


巨人がいた。そしてそれは拳を振りかぶって殴りつけてくる。咄嗟に避けようとしたけど


「動けない!?」


風が僕に纏わり付いている。だから動けない、そう思った瞬間殴られ、風の壁を突き破った。そのまま地面を転がって……


「マグナ?」

「アリア、下がっていてください。ダメージが大きいです」

「……ごめん、すぐ戻る」


《ハイポーション》を取り出して剣の柄で叩き割る。そのまま体力を回復して……二本を交差させて構える。そして


「《二重解放リベレイトーディスチャージ》!」


比翼乖離双刃ナラビハナレシツバサ》を構えて走り出す。そのまま《ハストゥール》を護る風の壁に斬りつけた。今まで以上に軽いその手応えは風を切り裂いた感触だ。そして


「《二重解放リベレイトーディスチャージ》!」


《アーク・ルクス・マグナ》の銃口から閃光が迸った。それは風の護りを貫通して《ハストゥール》の体力を削った。《ハストゥール》の体力は《クトゥルー》と同じ一億。それから1万程度を削るダメージが連続して叩き込まれている。


「っ、アリア! 上から来ます!」

「っ!? やぁっ!」


超量の下降気流、ダウンバーストだ。そこに二本で一つの武器を放った。高速で風を切り裂きながら必死でダメージを軽減するアリア。その近くで引き金を引き続けるマグナ。マグナとアリアの二人へのダメージを軽減するにはアリアの苦労があまりにも大きい。


「アリア、あと5秒耐えてください」

「うん!」

「そうすれば交代しますよ!」


弾丸が次々と放たれた。しかしダメージはやはり軽微だ。風の護りを突破できても威力は削がれるのだ。マグナは舌打ちして《アーク・ルクス・マグナ》を真上に向けた。そしてそのまま連射して


「アリア! 本体を討ってください!」

「うん、分かったよ!」


二本を翼のように構えて走る。そのまま風の護りを二閃で切り裂いて突っ込んだ。風の巨人の腕を余裕を持って回避して双剣で斬りつけた。さらに回転を載せてその腕を切り裂いて、飛び乗る。そして走り出した。

風の巨人、《ハストゥール》は自らの腕に乗っている小さな羽虫を眺めた。それを薙ぎ払おうと腕を振るったはずだ。避けられた、と思っていると


「秘剣肆の型ーー千閃線!」


ずばばば、と腕が切り刻まれた。それに驚きながらもう片方の腕で殴り落とそうとしたはずだ。しかし


「ふふふ、甘いぜ」


《ハストゥール》が話せたのならば叫んでいただろう。拳が切り開かれ、そして生まれた隙間にその小柄な身を隠していたのだから。そのまま小柄な存在は剣を構えて


「しゃららっ!」


アリアの剣が腕を切り刻み、輪切りとなる腕を足場に駆け上がってくる。その様子はAIベースとしてのマグナですら驚いた。

そして《ハストゥール》が最適な行動をしようとするのを強制中断し、ダウンバーストを中断させる。そのまま広域殲滅用のスキルを使わせた。

そんなことを露知らず、アリアとマグナは広範囲にばらまかれた竜巻を必死に避け続けていた。しかし


「マグナ! 撃ち抜け!」

「無論です!」


アリアの言葉にマグナは頷いて《アーク・ルクス・マグナ》を地面に伏せながら構えた。そして


「《アーク・ルクス・マグナ》、オーバードライブ!」

「え?」


そんなかけ声必要ないよね? と、アリアが思っていると《アーク・ルクス・マグナ》の銃口から次々と光の槍が放たれた。それは風の護りの内側まで貫き、《ハストゥール》の動きを阻害した。新たに生えた二本の腕はアリアを落とそうと藻掻いているがアリアはその腕すらも切り裂いている。


「マグナ、上!」

「分かっています! それよりも今攻めてください!」

「うん!」


マグナへ降り注ぐ烈風の槍、それをマグナは一本ずつ撃ち崩していく。そしてそのままアリアは駆け上がり、肩から顔面へと跳ぶ。しかし《ハストゥール》の両手がアリアを叩き潰そうと合掌する。


「アリア!?」

「ぶもがっ!」


アリアの変な声と共に両手が切り刻まれた。そして洋紅色の髪が靡き、右肩から左肩に瞬間的な移動をした。そしてその軌道上にあった《ハストゥール》の首が輪切りにされーー消えた。そして落下するアリアは慌てずに目を閉じて


「《アストライアー》!」


実際は口に出す必要など一切無いのだがアリアは飛んだ。そしてそのままくるくると回転しながら落下して


「マグナ、アイテムドロップした?」

「はい、《ハストゥールの旋風珠》です」

「良いなー」

「ふっふっふ、羨ましいでしょう」

「むぅ」


《クトゥルー》にもあった《珠》というアイテムは魔法を使い媒体となる上に武具の素材としても仕える。さらに


「風よ!」

「おぉ~!」


風の力でふわふわと浮いているマグナを見てアリアは目を輝かせた。ちなみにその背中には翼が生えている。


「やだこの人、浮いてる」

「アリアもね」

クトゥルフ神話系モンスター二体目

風のハストゥール

次は誰かなー

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