クトゥルー
アリアとシンが手に入れた鍵は2と5だった。そして同時期に
「うっし、鍵ゲットっと。これで2本目だよな?」
「そうだね。1と4を手に入れたからあと2本かな?」
「4が最大と決まってはいませんよ」
セブンスドラゴニックライオネルソードとルシファーのやり取りにアリスが口を挟む。
「7と8か」
「みたいだな」
「ですねー」
魔王の言葉にセプトとエミリアが適当に返事して
「アジアン、6の鍵だよ」
「こっちの鍵は3よ」
八つの鍵が全て発見された。しかし
「アリア、4の鍵だよ」
「ほうほう。1から5まであるのかな?」
「かもね」
鍵はパーティごとに再出現するため、奪い合うようなことにはならなかった。
*****
「さてと、8本の鍵が揃ったわね」
「んー、何も起きないね」
「そうね……シェリル、何か思いつく?」
「特定位置で使用じゃないの?」
シェリ姉の言葉にマモンとレヴィが頷く。その様子をエミは複雑な心境で眺めていた。
「エミちゃん、どうしたの?」
「あ、なんでもないです」
「そう?」
マモンに気をかけられ、反省する。私はダメダメだ。お姉ちゃんとは大違いだ。
同じギルドに入ったのに随分と遠く感じる背中は今、どこにいるのだろう。
「エミ、次はジャックの代わりに前に出る?」
「良いの?」
「他のメンバーは後衛だし……ってやりたかったの? だったら早めに言って欲しかったんだけど」
「ううん、ありがと、シェリ姉。でも戦えるのなら良いんだよ」
剣と扇を構えてエミは床を蹴った。そしてそのまま壁を蹴って加速して
「《エルフェンド》! 《雅楽天楽》!」
エミの高速の剣と扇が現れたクラゲを一撃で消し飛ばした。そしてそのまま連続攻撃で次々と現れるクラゲを倒していった。
「ジャックも働きなさいよ」
「エミが危険になったらな。エミが動けているんだから良いだろ」
「そうね……シェリル、気をつけていてね」
「分かってますよ」
シェリルはいつでも七本の剣を飛ばせるようにしていた。エミが心配なのだ。アリアとは違って堂々と心配しているだけだ。
「……アリアちゃんは今どこかな?」
「そろそろボスじゃないの?」
レヴィの適当な言葉は正解だった。
*****
「アリア、任せて良いんだよね?」
「うん、久々にね。ソロプレイヤー設定を忘れちゃいそうだし」
「メタいよ」
シンは苦笑しながら鍵をアリアに渡した。そして合計八本の鍵をアリアは掌に載せてーーそれらが浮いた。そのままそれらは回転してーー一本の巨大な鍵になった。アリアの身長以上の長さの鍵を握り、その扉の鍵穴に向けた。
「キーブレイド?」
「キーブレードだよ」
「あえてぼかしたのに」
シンは苦笑しつつ、剣を抜いた。そのまま背後を振り返って
「さぁ、ここは僕が喰い止めるからさ」
「死亡フラグにしか聞こえないよ」
「死なないよ、アリアと結婚するまでね」
「でもこの前僕に真っ二つにされたよね?」
アリアの言葉にシンは絶句した。そして
「それじゃ、お願いね、シン。僕は勝ってくるから」
「はいはい」
アリアは部屋に入り、背後で扉が閉まるのを確認して剣を抜いた。《乖離天連》と言う名の逆手に握る専用の柄の剣だ。そしてアリアは体勢を低くして
「これがボス、かな?」
表示されている体力は1億程度。名前は《クトゥルー》、蛸だ。それが遺跡の下の空洞から伸びている足の根本の名前だろう。
「つまり全部斬れば良い、と」
僕の結論があっているのか分からないが八本ある足のうち一本が僕に向けて振り下ろされた。とりあえずアリアは切り裂けば良いと思い、逆手に握った《乖離天連》を振るった。しかし肉厚のそれは一撃では切れず、刃が滑ってあまり斬れなかった。
「むぅ……こいつは中々に厄介だよ」
アリアは剣をもう一本使おうか、と悩みながら足による薙ぎ払いを避けて斬りつける。そのまま振り下ろされる足を避けて、突き出される足を避けて前に出る。根元から斬りつけよう、そう思ったからだ。しかし
「わ!?」
近づいたら黒い何かが吹き出してきた。咄嗟に床を蹴って背後に下がる。すると突き出された足を避けられず
「が!?」
一気に一割弱持って行かれた。それにアリアは愕然としながら剣を構え直す。《乖離天連》と《乖離地連》の二本だ。
「二本目の剣を抜いたんだ……もう、終わらせるよ!」
アリアが高速で駆け出した。その小柄な体に向けて足が振るわれるが
「秘剣双剣の方ーー霞十字!」
二本の斬線で足が吹き飛んだ。それを連続して繰り出して全ての足を切り裂いた。しかし
「本体でかいなぁ……!」
斬れた足を避けて剣で突き刺す。そのまま連続して斬りつけようとしたが
「わっぷ!?」
墨が吐かれた。さっきの黒いのは墨だったんだ、と思いながら剣で切り裂いて墨を薄くする。そのまま連続して斬っていると
「え!?」
墨を吐いて逃げ出した。慌てて追いかけようとすると
「へ!?」
『きゅい!(乗ってください)』
タツノオトシゴが話しかけてきた。それに驚きつつ、乗ると
『追跡を開始します。ルールを聞きますか?』
「え!? そういうイベントなの!?」
アリアの驚きをよそにそのメッセージは輝いている。だから仕方なくルールを聞くを選ぶと
『これは《クトゥルー》をタツノオトシゴに乗りつつ、討伐するイベント戦です。タツノオトシゴから落下、体力が0で敗北となります』
「……ゼル伝とかでありそうだなぁ」
アリアは頷いてタツノオトシゴを発進させた。そのまま加速していると
「いた!」
《クトゥルー》がいた。それは背面で泳ぎながら僕と向き合い、墨を吐いた。それを自転車の要領で避けて一気に近づいて
「秘剣……じゃダメだなぁ……仕方ないや、《アークスラッシュ》!」
アリアの剣が《クトゥルー》の新しく生えた足を切り裂いた。そのまま連続して斬りつけようとするが
「っ!? 右に!」
『きゅい!』
言う必要はないのに。しかしタツノオトシゴは言ったとおりに右に動いてくれた。そして《クトゥルー》の足すれすれまで近寄って剣で突き刺した。そのまま切り刻んでダメージを稼ぐ。
「えっとまた生えた足が……後4本かな」
タツノオトシゴを前に倒して加速する。そのまま《悪魔龍皇剣》を振り切って足を切り飛ばす。そのままもう一回振って
「残り二本……っ!」
やっている気分としてはシューティングゲームのようだ。近づいて撃った方が拡散する弾丸が全て当たる的な。そして全ての足を切り落とした瞬間
「にょわ!?」
水流が来た。咄嗟にタツノオトシゴにしがみつくけど水流はタツノオトシゴごとアリアを流してしまった。
「わわわ!?」
何とか片手でしがみつきつつ、《悪魔龍皇剣》を鞘に収めた。そのまま両手で捕まろうとすると
「げ!?」
《クトゥルー》が目の前にいた。そして僕へ向かって墨を吐いた。それは僕を真っ黒に染め上げ、少なくないダメージを僕に与えた。そしてそのまま僕の体に衝撃が。ぶつかられたんだろう。
「……わ!?」
目が見えない間に何度もダメージを受けた。今の水着状態だと防御力はない。だが
「《アストライアー》!」
翼を広げ、迫る《クトゥルー》を防いだ。
クトゥルーとはクトゥルフ神話の蛸的なサムシング
アリアとシンがいちゃつき過ぎて作者がぶち切れそうなんですがどうしましょう
誰かアリアちゃんの可愛い絵を描いてください何でもしますから




