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DVのレベルじゃない

残る試合メンバーは魔王、マリア、アジアン、エカテリーナ、エミ、マモン、ブブ、シン。一人が場違いだが誰もが無視している。

結局人数が偶数となったためレヴィは再び辞退した。


*****


マリアは考えていた。残るメンバーの中で自分が勝てそうなのはエミしかいない、と。弱い者虐めをするようで気が引けるが負けたくないのだ。そしてーー


『続いての試合は《小道具師》、マリアと《魔王》、ディアボロス!』

『マリアと魔王か……マリアがどれぐらい距離を取れるかが勝敗を分けそうだな』

『スカイはどちらが勝つと思います?』

『どっちがって言われると魔王だろ。でもマリアは底知れない感じがあるし』


マリアは自分の評価を嬉しく思いつつ劫火を抜く。そのまま逆手に持ち替えて小瓶を何本か握る。これを投げて先手を取ろう。そしてそのアイデアは


『スタート!』

「やっ!」

「むっ!?」


魔王の握る二本のナイフが高速で閃いた。それは見事に小瓶を割り、粘着質の液体をナイフに付けた。


「……なるほど。確かにアリアがお前を強いというのが良く分かった」

「アリアが?」

「ああ。だが俺は半信半疑だった」

「そうなんですか……」

「ああ。だから俺はお前を認めている……さぁ、来い!」


最強ギルド、《魔王の傘下》。誰も彼もが一癖二癖あるそのリーダーに認められた。マリアは少し嬉しくなった。だけど喜んでいるだけじゃダメだ。


「しかしこの液体、取れないのか?」

「取れません。魔王なら二本を使って斬ると思ったので」

「なるほどな」


二本を交差させるようにして斬ったのが運の尽きだったな、と魔王は呟いた。だがサブウェポンを抜く様子がない。一体何を考えているんだ?


「マリア、そろそろ攻めさせてもらおう」

「構いませんよ」

「では遠慮なく」


魔王が言った瞬間、目の前に移動していた。アリアと同じく速い、そう思っていると


「《正拳》」

「っ!?」


剣で逸らしてカウンターを、と思ったが思いの外拳が重い。軽く体が押され、体勢を崩した。体勢を立て直す隙はない。だから小瓶を掴んで叩きつけた。


「これは!?」

「《濃麻痺煙》、吸った瞬間に口と目以外の何もかもが動かせないです」

「心臓は不随筋だからか」

「はい。一五秒止まっているのでまぁ、そろそろです」


止まっている者が急に動くとどうなるか。当然バランスを崩す。マリアもバランスを崩した。そのまま立ち上がりざまの回し蹴りをマリアは避けて


「《解ほ(リベレ)……」

「む? 止めるのか?」

「ちょ、ちょっと急用を思い出して」

「ああ、なるほど。炎で溶けるのか」


ばれた。


「ふむ、そうだな……打ち合えば火花が散る。それでなんとかするか」

「うげ」


結果、マリアは粘ったが魔王の高速思考による小道具への対処の速さの前に敗北した。


*****


「マリアが負けても私は負けません」

「私もお姉ちゃんとやるまでは負けません!」


アジアンとエミの試合はそんな宣言があった。それを聞いてマリアは「ごめん……」と謝り、アリアは(僕になら負けて良いのかな?)と考えていた。しかし試合が始まり、その状況が一方的になるのに時間はかからなかった。


「エミ! 頑張って!」

「シェリ姉、無理言うんじゃないよ。エミはそもそもここまで来られたのが異常なんだからね」

「アリアちゃん……エミに負けちゃえバーカ」

「うわ、酷い」


シェリ姉はふーん、と言って去って行った。アリアはその背中を眺めながら


(エミが僕たちに勝つには壁を越えないといけない。アビスのおかげで少し成長したかも知れないけどね)


そんな風に冷静に分析していた。シェリルの感情論とは別の方向で。だからエミが勝つには何かが無いといけないと思っていた。そしてその様子を眺めていたエミは思った。


(あの顔に一撃を加えてやりたい)


と。その過激な思いは目の前にいるアジアンを邪魔とさえ思えた。だからアジアンの短剣が伸びてくるのを扇で払った。そのまま返しで剣を突き刺した。

アジアンは扇と剣の連続攻撃をナイフで防ぎきっていた。だからこそ単発の攻撃が来たのには戸惑ってしまった。突きをなんとか片腕で受け、被害を小さく。そのまま扇による打撃を警戒したが


「嘘!?」

「《スターダストスプラッシュ》!」


高速の連続斬りが刺さった状態から放たれた。それは体内をぐちゃぐちゃに切り刻みーー心臓を切り裂いた。


*****


「えっぐい勝ち方したなぁ」

「そうかな? ブブも大概だと思うけど」

「そうか? 自覚は無いな」


マモンの矢を槍で捌きながらの談笑。どちらも全力を尽くしていないようだ。だが本気の一手を何度も仕掛け、お互いに潰し合っている。戦力を出すことが少ないだけで《魔王の傘下》では最強クラスなのだ。


「マモン」

「んー?」

「そろそろ耐久が心許ない。一撃だ」

「おっけ」


マモンがバク転バク宙をして弓矢を構えた。さながら弓道の型のように。そのまま片目を閉じて


「《ブラインド》《サクリファイスアロー》!」

「《グングニル》!」


正面から激突した一本の槍と一本の矢は激突しーー耐久の勝る槍が残った。だが砕け散り、光となるはずの矢は黒くなり、槍を包み込んだ。そして槍を消し去った。


「なに!?」

「安心して。槍のお金は出すから」


マモンの矢が動揺しているブブの額を射貫いた。だいぶ性格の出る勝ち方だった。


*****


『必然的にシンとエカテリーナの試合となります!』

『世界二位との試合ですがシンはその時のアリアのチームにいたからな。正直どっちが勝ってもおかしくない』


その実況席の言葉に頷く者と否定する者がいた。


「そうですわね、シンが勝ってもおかしくありませんわ」

「いや僕が勝てるわけないし」


二本の剣による高速の斬撃をエカテリーナは防ぎきっている。明らかにエカテリーナは技量で僕に勝っている。シンは冷静に考えながら剣を大きく振るった。それを軽々剣で逸らして心臓への突き。それを剣の鍔で受け止めて


「あなた、アリアに劣らず強いですわね」

「過ぎた評価です」

「でもアリアと戦ったらどうなるのか、興味がありますね」

「え」


剣が払われた。それに驚いていると顔面への突きだ。なんとか二本の剣を交差させて防ぐ。そのまま振り払って


「アリアはあなたを全力で倒そうとするでしょうね」


何故か動かなかったエカテリーナの首を切り落とした。


*****


四回戦、本来なら準決勝辺りのはずだがアリア、魔王、エミ、シン、マモンが勝ち上がっていた。つまり奇数。敗者復活戦はもう行われない。なので


『一対一と一対一対一の試合となります!』

「わ、凄いことになったね」

「そうだね……アリアはどっちになると思う?」

「どっちでも良いよ。僕が最強なんだから」


そっか、とシンは呟く。そして


『四回戦最初の試合は《最強》、アリアと《アリアの旦那》、シン!』

「「旦那!?」」


一人は驚きで、一人は嬉しそうに叫んだ。そのまま恐る恐る相手の顔を見て


「アリア」

「ん?」

「手加減は無しだよ」

「当然!」


あ、当然なんだ、とシンは悲しそうに呟いた。その背中をアリアは叩いて


「手を抜いたら許さないからね」

「アリアはどうするつもり?」

「全力でシンを斬るよ」


DVのレベルじゃない、シンはそう思いながら苦笑した。

【朗報】次回、嫁に斬られる旦那シンが!


劇場版とかほざいていたのが二万字を越えて「もう戻れない」と脳内で言ってくる奴がいるんですけど

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