AIと人間
「欠員は埋まったの?」
「ああ」
「誰?」
「レヴィが仕方なく立候補してくれた」
三回戦に進むのはアリア、魔王、マリア、アジアン、エカテリーナ、エミ、レヴィ、マモン、ブブ、マグナの十人だ。つまり三回戦が終わればまた奇数だ。
*****
マグナは考えていた。何故アレで緊急イベント『流星群』がクリアなのか、と。いくつも落ちた上に何人かのプレイヤーが全損した。とうていクリアとは思えないのにクリアとは、と。
(これがプログラムの最善選択というものですか? だとすればプログラムとはなんとも融通の利かないものなのですね)
マグナはそう考えて気づいた。今、自分が何を思っていたかに気づいて絶句した。
(こんな思考……まるで人間!?)
マグナは愕然としていた。しかしそんなマグナを気に掛けることなく
『続いての試合は《詳細不明》、マグナと《最強》、アリア!』
「……アリアと」
アリアと戦える、それは嬉しい。しかしアリアに聞きたいことができてしまった。そう思うと腰の《アルス・マグナ》に手が勝手に伸びた。
そのままマグナは段上へと昇る。そのままアリアと向き合った。そしてアリアは疑問の表情でマグナを見つめた。
「どうして抜かないの?」
「アリア、聞きたいことがあるのです」
「んー? 今?」
「急いでいるんです」
アリアは目を閉じて
「良いよ、何でも言って」
「ありがとう、アリア。私の親友」
「……親友、かぁ」
「嫌ですか?」
「ううん、嬉しいけど……どうしたのかなって」
「私が、人間のようですか?」
アリアの目が細くなった。そして口を開くが
「私は、なんですか?」
「……マグナは、マグナだよ」
「そうじゃありません。具体的に言えばーーAIか、人間か、です」
アリアは何も言わずに剣を抜いた。その剣はかつてアリアが認めたプレイヤーにのみ抜くと決めて創り上げた一品、《無銘真打》だ。
「マグナ、それについては僕は何も言えない。だからこっちで語るとするよ」
「不可解です……が、分かりました。良いでしょう」
決意を秘め、《アルス・マグナ》を抜いた。そのままアリアの額に銃を向ける。アリアも《無銘真打》を構える。そしてーー
『s「っ!」
「はっ!」
開始の宣言をするための呼吸、それと同時にアリアとマグナは動いた。アリアの剣がマグナの首を薙ごうと迫る。元々あった十メートルの距離などアリアには有って無いようなものだ。だが
「わ!?」
「思っていたよりも速いですね」
「マグナこそ!」
剣が弾丸を弾く。アリアは一発たりとも受けない。しかし
「マグナは人間みたいだよ」
「それは! どういう意味ですか!」
「んー、秘密」
「っ、《解放》!」
機関銃形態に。そのままアリアへ向かって弾幕を張るがアリアの速度について行けない。衝撃が手元を揺らすからだ。
「マグナ、僕相手に手加減は無用だよ」
「何故……と言いたいですが」
アリアは笑った。マグナは微笑んだ。
「「僕が最強なんだから」」
アリアが剣を逆手に握り、地面に突き刺した。マグナは銃を片手で握り、側面を地面と平行にした。
「「《二重解放》!」」
地面に刺した剣を引き抜く。漆黒の剣身がマグナに向けられた。
側面を地面と平行にした銃が金色に染まり、銃身が伸びた。そして三叉となった。
「《無銘真打》、二重解放形態名は《聖剣グラム》」
「《アルス・マグナ》、二重解放形態名は《アーク・ルクス・マグナ》」
略して《アルス・マグナ》。それをマグナはアリアに向けて
「仕切り直し、しましょう」
「だね」
二人が頷いた、それと同時にアリアは動いた。マグナの左足を切り、背後に回り込んで右足を切り、トライアングルを描く。しかしアリアの作戦は上手くいかなかった。何故なら《アーク・ルクス・マグナ》は見えざる弾丸、神速の弾丸、連射、無限の弾丸、さらに光の弾丸と特徴が多い。それら全てを対処するのは攻撃を仕掛けながらではきつい。
「まったく、避け辛いったりゃありゃしない!」
「ふふふ」
「マグナは人間よりも人間らしいよ」
「え?」
マグナの手が止まった。その絶好の隙にアリアはーー攻めない。
「どういう、意味ですか」
声が震える。人間らしい? 意味が分からない。マグナは戸惑いながら銃を構えようとした。しかし手が震えてそれもままならない。
「マグナ、君が思っている以上に君は人だ」
「人……どういう意味ですか」
「マグナは僕に聞いた。自分が人間なのか、とね」
「はい、聞きました」
「人だよ、マグナは。僕が保証して、みんなが保証する。マグナも自分が人間かも知れないって思って聞いてきたんでしょ?」
マグナはアリアの言葉に頷く。マグナは
「私は人間、で良いのですか?」
「ダメだって誰が言うのさ」
アリアの言葉にマグナは目を閉じる。その頬を透明な滴が伝った。マグナはそれを涙だという者と理解した。そして服の裾で乱雑に拭って
「行きます!」
「来い!」
アリアの姿が掻き消えた。そしてマグナの背後で音が聞こえた。咄嗟に振り返って弾丸を放つ。連射して薙ぎ払おうとするが
「秘剣壱の型ーー羅刹!」
「っ!?」
マグナの片腕が飛んだ。しかしマグナは地面を蹴って距離をとった。そのまま引き金を引き続けている。マグナは諦めていない。
アリアの剣で防ぎきれないほどの弾丸がアリアに迫った。しかしアリアは剣で防ぎきれないと理解し、即座に対処した。左右に、上下に動いて逃げ回る。勢いを乗せて突きを放ったが
「甘いですよ、アリア」
「ぬぼぁ!?」
剣の腹でなんとか受け止めた。だが連射される弾丸を剣の腹で受け止め続けるのは現実的では無い。アリアの手から《聖剣グラム》が飛んでいった。そしてアリアの小柄な体に弾丸が叩き込まれた。
*****
「アリア!?」
「ん」
「お姉ちゃん……!?」
「レヴィ、どう思う?」
「どうも。消えてないでしょ」
弾丸を受けた衝撃を生かして距離をとったアリアは即座に剣を取り出した。《悪魔龍皇剣》だ。だがそれは大きく、小回りも利かない。連射性の高い銃と戦うには到底向いているとは思えない。それがレヴィの頭の中の結論だった。
大使、マモンの頭の中の結論は手を抜きすぎ、だった。もっと速く動けるはずなのだから。見た感じ、全力の四割程度だ。手を抜いているのは明白だ。だから
「手加減してないで全力を尽くしなさい!」
シェリルの声に驚いた。シェリちゃんも気づいていたのか、と。
*****
「全力を尽くしてください」
シェリルの声と同時にマグナはそう言っていた。アリアはその言葉に目を閉じた。敵の目の前で、マグナが思った瞬間、アリアの姿が増えた。
「っ!?」
「剣陣終の型」
その声が聞こえた瞬間、浮かばされた。マグナが反応できない速度で。慌ててマグナがアリアを探すがアリアの姿が多すぎる。前後左右上下どこにでもいる。
「剣陣終の型は剣を足場に戦う技。空中での戦いに慣れていないとどうにもならないよ」
アリアの言葉にマグナは目を閉じた。どこにいるのか分からないなら見なくて良い。そしてAIが頼らないものを、自分の勘を信じて引き金を引いた。
「驚いたよ」
アリアの頬を掠めた弾丸にアリアは驚嘆の声を上げながら心臓を刺し貫いた。
マグナは人間だ! とアリアに叫ばせるシーンを書きたかったが断念
劇場版とか言っていたやつが意外と長くなりまして
一万字を軽く越え、終わりまでまだかかる
おそらくゴールデンウィーク最終日の日曜日に投稿できると思います




