流星群
「残るはアジアンとシア、アリスとエミだね」
「誰と当たってもエミに勝ち目は……」
一人だけいる、シェリルはその言葉を飲み込んだ。それは上から目線で言って良いことではないのだから。
『続いての試合は《虐殺人形》、アジアンと《鞭士》、アリス!』
『アジアンとアリスか……アジアンの武器の解放形態って鞭っぽいよな?』
『そうですね』
『鞭同士で戦ったらどうなるんだ?』
スカイの真面目な疑問は無視して
「よろしくお願いしますね、アジアン」
「こちらこそ」
すでに鞭を構えているアリス。その先端は重くなっており、打撃で大ダメージを与えることもできる。だからこそ戦いづらい。リーチが同じ程度になろうと全体が同じ重さの《デスクライソード》じゃあ押し負ける。つまりどうしたら勝ち目があるのか。
『スタート!』
「《エレクトロニックウィップ》!」
「《セブンスワン》!」
七羽の白鳥を描くような高速の突きが蛇のように迫る鞭を弾く。切れれば、とも思ったがアリアの作り上げた装備がこの程度で耐久を失うはずが無い。あの《ビッグバン・ソード・グラビティ》以外。一撃しかもたないけど超威力の剣だ。
「んっ!」
「ちゃ、《スラスト》! からの《二重解放》!」
振り切った勢いで手の甲に刺して《二重解放》する。《スラスト》で弾いた鞭を無視して直接アリスを狙うが
「《ウィップシールド》」
「む」
「鞭を使っているからこそ鞭の対処法はきちんと理解していますよ」
「あ、そう。でも私の《デスクライソード》は《短剣》カテゴリーよ」
「そうでしたか」
アリスは鞭で薙ぎ払うようにしてアジアンを狙った。しかしアジアンはファントム戦で見せた《デスクライソード》を繭のようにしてそれを防いだ。そして
「喰らえ!」
「《ウィップシールド》! あれ?」
「バーカ」
《デスクライソード》がアリスの《ウェルドレスト》に巻き付いていた。そして盾のような形を取るがそこに異物が混じっている。さらにアジアンが手首を捻って《デスクライソード》を突き込んだ。それはアリスの腕に巻き付いて切り落とした。
「っ!?」
距離を取り、《デスクライソード》のリーチ外へと移動したアリス。しかしその目は諦めていない。鞭を振るってきた。それは軽々と弾けたが
「《フレアウィップ》!」
「へ!?」
「《ウィップドーム》!」
燃え盛る鞭がアジアンの足に巻き付き、自らへと引き寄せた。そして炎の鞭のドームへ引き込んだ。地味なダメージを受けながらアジアンは手の甲から《スクリーミングダガー》を抜いた。そしてドームへ差し込む、小さな隙間を空けた。
「それは一体!?」
「マリアからもらったの」
《ニトログロセリン》の小瓶をドームの内側に放り込んで《スクリーミングダガー》を抜く。自動で元通りになるドームの隙間、そして爆音が響いてアリスは全損した。
*****
『二回戦最終試合はパーティメンバー同士の試合! 《最強の妹》、エミと《癒やし手》、シア!』
『アビスに勝ったんだから勝負は見えていると思うんだが』
実況席にあるまじきスカイの言葉は五秒後に実現した。
*****
勝ち残ったのはアリア、魔王、シン、エカテリーナ、マグナ、マモン、アジアン、ブブ、エミ。またしても奇数だった。なので本来なら調整が入るはずなのだが
『えー、再び敗者復活戦だそうです。今回は二回戦の敗退メンバーだけ……のはずだったんですがまさかの全員辞退しました。どうしましょう』
実況席の声は僕たちの脳内と同じだ。どうしようマジで。レヴィなら迷い無く来ると思ったんだけど……そう思った瞬間だった。それが起きたのは。
「隕石!?」
「おいおい……ここはVRだぜ?」
「隕石を再現した?」
「リアルワールドではどうなっているんだ?」
一方セプトとジャックは流星群が起きるのは知っていた。だがいつかは知らされていなかった。もっとも聞いていたとしても何も変わらないが。
『エクストラクエスト 流星群を食い止めろ』
そんな風に現在ログインしている全プレイヤーの目の前に表示されたが
「いや、無理だろ」
「無理ね」
「無理だなー」
大半のプレイヤーが興味を失っている。それにアリアは嘆息しつつ
「《アストライアー》」
「フライ」
「フライ!」
何故か自分だけじゃ無かった。それに驚いて視線を下げると
「エカテリーナとマグナ? 止めるの手伝ってくれるの?」
「止める? 壊せば良いのでしょう?」
「撃てばなんとかなる、この一週間で学びました」
だいぶ変な知識を得たなー、とアリアは思いながら剣を取り出した。そのまま構える。
「鞘無しの《片手長剣》? 随分と奇抜ですわね」
「えへへ」
「褒めていませんわ」
アリアはがっくりしながら剣を握りしめた。そして
「最初は僕、そこからエカテリーナが続いて。マグナは状況に応じてお願い」
「分かりましたわ」
「了解しました」
アリアは二人の返事を聞いて満足そうに頷いて急加速。そのままその剣を、《天地滅殺》を振りかぶり、隕石へと斬りつけた。だが
「硬い!?」
「耐久高めのようですね」
「ではマグナ、撃ち続けてください。私とアリアが微力ながら削りますわ」
「分かりました」
エカテリーナの神速の突きとアリアの神速の斬撃が隕石を食い止めようとする。さらにマグナの弾丸が次々と隕石に当たるが
「速度が殺せませんね」
「ん。エカテリーナ、梃子梃子」
「はぁ? ロシア語で話しなさいな」
「話せませーん」
アリアの返答にエカテリーナが青筋を浮かべる。いくら会社で立場があったとしてもうざい者はうざいのだ。ちなみにアリアとは二歳離れている。高校生兼社会人だ。
「梃子の原理でぶっ飛ばそう」
「はぁ? 正気ですの?」
「《悪魔龍皇剣》ならできる」
そうだ、今この九州サーバーには二本の《悪魔龍皇剣》がある。だから挑戦しようとエカテリーナは思ったが
「二人とも、離れてください! 《解放》!」
マグナの声に急いで離れた。すると隕石に向かって機関銃ごとき弾丸が放たれ続けた。
マグナの銃、《アルス・マグナ》は弾丸無限の銃だ。通常形態が単発銃、解放形態が機関銃だ。だからなんとか隕石を砕こうと粘るが
「耐久高すぎでしょ……」
「エカテリーナ、全力でぶち込もう!」
「っ、ええ!」
「秘剣弐の型ーー三劔!」
高速の三連斬が隕石へと叩き込まれた。しかし隕石は砕けない。
「雷よーーエクレール!」
雷の名を冠する高速の突きが正面から隕石へ打ち込まれた。しかし隕石の勢いが多少落ちただけだ。だが
「撃ちます、ファイエル!」
瞬間、高速の弾丸が隕石の表面を削り飛ばしていく。しかし耐久が少し削られていくだけで……終わりが見えない。アリアとエカテリーナが諦めようとした瞬間
「《二重解放》」
マグナはぼそりと呟いた。一度変形した銃がさらに変形する。そしてそれを隕石に向けて
「ファイア!」
引き金を引いた。そして銃口から放たれた光が隕石を撃ち抜いた。砕け散る隕石。しかし
「一つ壊しても流星群が止まるわけじゃありませんね」
マグナは冷静に呟いた。ちなみにその後、全プレイヤーが頑張ってなんとか隕石全てを食い止め、られなかった。何人か潰され、衝撃で街が崩壊した。一応システム的には流星群を防げた扱いらしい。
ガブリアスに流星群は意味不
ダメだ、人数調整ができない
誰でも良いから加えようかな




