敗者復活戦
「シア、マグナ、アリス、マリア、アジアンの五人が勝ち残っている、と」
「えっとつまり人数調整ミスった感じ?」
「うん、そんな感じ」
「しっかりしろよアリア」
スカイは笑いながら、セスタスは呆れを滲ませながら頷いた。そして
『続いての試合ですがアリアの手違いにより、人数が奇数となりましたため、敗者復活戦を行います!』
*****
エミは困っていた。なんだかもの凄い怖いプレイヤーが睨んできているからだ。ちなみにエミは知らないがエミの背後で睨み返している過保護なプレイヤーたちがいた。
「しかしあれだね、兄さん」
「ん?」
「これって誰が勝ってもまた、奇数になる。そう考えると五人のバトルロイヤルから二人抜けの方が良いんじゃない?」
「アリアだぞ? そこまで考えていると思うか?」
「あぁ、そうだね」
なんとも失礼な話だ。そう思いながらみんなと一緒に段上へ。そのまま打ち合わせたかのように広がって
『スタート!』
「うるぁっ!」
「おっと」
「兄さん」
「分かっているっての!」
サタンとルシファーが剣と槍を構えた。そしてアビスというプレイヤーと相対した。そして
「手を貸すで御座るよ、《居合い・神薙ぎ》!」
アビスが光となって消える、そう思ったが意外と粘っている。しかしその間も戦いは続いている。エミの剣と扇が闇色の炎を受け止めて
「えっと、ガイアだっけ?」
「ああ」
「なんで私を狙うの?」
「理由は無いが……」
そう言いながら剣を構えた。そして高速で振り下ろしてきた。だけどそれなら見える。エミリアのおかげで高速の斬撃を見極められる、そんな成長を実感しながらエミは剣をあわせ、弾いた。そのまま驚きの表情へ向けて扇を叩きつけた。そのまま剣と扇の高速の連撃を放ったが
「舐めるな! 《ダークフレア》!」
「《零舞》! 《スターダストスプラッシュ》!」
ダメージを限りなく0に寄せ、カウンターで切り裂いた。しかし体力を削りきることはできなかった。距離を取って構え直すと
「なるほど、確かにアリアの妹だ」
「え?」
「末恐ろしいな。これならいつかアリアをーー」
ガイアはそこで言葉を切って
「行くぞ」
*****
「やれやれ、ガイアの奴大人気ねぇな」
スカイはそう独りごちながら二本の剣を振るう。そのまま脱落者を順調に増やしていっていると
「危ねーぞ、リョーマ」
「現在は敵ではござらんか? もっとも拙者らはそれごとではないのだが」
「ん、アビスの奴か。俺も手伝った方が良いか?」
「頼めるのなら。あの二人が壁を務めてくれているで御座る」
「《魔王の傘下》のメンバーが攻めた方が良いと思うんだけどよ」
「それには拙者も同意見で御座る」
二人で同時に動く。二人が守りを崩した瞬間を狙って一撃を加えた。しかしアビスは
「ぬるい!」
二本目の大槌を取り出して薙ぎ払った。スカイは二本の剣で受け止めたが衝撃を殺せずに吹き飛ばされた。だが
「フライ!」
「あ? 飛べんのかよ」
「どーよ。羨ましいか?」
「ふんっ!」
答えは大槌の投擲だった。スカイはそれを危なげなく避ける。
レヴィアタンたちがいれば、とも思うが二回戦敗退組は大人しく傍観者に徹している。レヴィアタンなら一瞬で倒せるだろうと思っているが
「ま、俺たちも頑張ってみるか」
「そうで御座るな」
リョーマと共にアビスへと突撃する。しかしアビスの狙いは別のプレイヤーに移ったようだ。その方向へ目を向けてみると
「エミ……あの子を狙ってんのか?」
ガイアが負けたようだ。それを呆れと共に確認しつつ剣をアビスの軌道上に割り込ませる。
「悪ーな、ガキ虐めんのはガキだけの権利だ」
「そんな権利誰にも無いで御座るよ」
「かもな!」
アビスへと二人で突撃したが返り討ちにあいかけた。それもかなり弾き飛ばされた感じでだ。しかしエミは逃げない。一度の相対がエミの中で燻る戦意を創り上げていた。だから
「全員、邪魔をしないでね!」
その気迫は、姉のものとそっくりだった。アリアのようなその願いに誰もが道を開けた。そしてできあがった道をエミが堂々と、アビスが戸惑うように歩いた。そのままエミはアビスの顔を見上げて
「今度は私が勝つ」
「……面白え、やってみろよ!」
宣言も何も無く、振り上げられた大槌は高速で振り下ろされた。アビスはやった、と思ったが
「《零舞》、《ソードリバーサル》」
「受け流し、だと!?」
《ソードパリィ》ならばプレイヤースキルをあまり必要としない。だが《ソードリバーサル》はプレイヤースキルだけが重要なのだ。そしてアビスの攻撃が受け流されたと言うことは
(俺様を技量で上回っただと!?)
驚愕した。そしてその隙をエミは見逃さない。剣と扇でアビスへと襲いかかった。剣が大槌を受け流し、扇が大槌を受け止めた。さらに細かい連続攻撃が叩き込まれていく。
「が、舐めんなぁ! 《ラウンドブロー》!」
「ん」
大槌を両手で持ち、薙ぎ払うような一撃をエミはしゃがんで避けた。そのまま立ち上がりざまにアビスの体を剣で切り裂いた。致命的位置だ。だがアビスは執念深く耐えた。浅かったようだ。だがエミは諦めていない。その傷跡に扇を叩きつけた。そしてーー
「ふざけんな……レベル差どれぐらいだって思ってんだよ……」
「知らないよ。まだ1000にもなってないし」
「はんっ……」
光となって消えていくアビスのレベルは2380、意外と近かったのに驚いた。そして周囲のプレイヤーたちはエミに敗者復活の権利を譲った。
*****
『えー、続いての試合は《詳細不明》、マグナと《小道具師》、マリア!』
『……』
『えー、さきほどの敗者復活戦でスカイは全損したため、再び実況席に戻ってくるまではしばらくかかります』
実況席からの声に戸惑いつつ、マグナは銃を抜いた。装飾過多だと思い、しかし今では気に入っている銃だ。名前は《アルスマグナ》、自分と似た名前だ。
マグナは知らないがアリアはそこから名前を付けたのだ。つまり似ていて当然然るべきであった。だがそれをアリアは言わないしマグナも気づかない。
「マリア」
「なに? マグナ」
「私は全力を持ってあなたを倒します」
「そりゃこっちもだけど」
「良かった」
プログラムでは思えないはずのそれを違和感なく思った。しかしマリアはそれに気づかないで剣を抜いた。そしてもう片手は後ろ手に回して何かを持っているようだ。そこから、マグナの予想もつかないものが出てくる、マグナはそれを理解していた。だから
『ス「《パラライズバレット》!」
「《セメント》!」
弾丸が投げられた小瓶と激突し、閉じ込められてしまった。仕方なく引き金を引き続けているとマリアの手足には被弾する。だが一発たりとも直撃はしていない。だからマグナは諦めた。
手を抜くのを諦めた。
「《解放》!」
「っ、《解放》!」
銃が変形した。剣が炎と化した。そしてーーマグナが引き金を引いた。そこから放たれた弾丸は不可視の魔弾。しかしマリアの握る剣、《刺し貫く剣ー劫火》から放たれる炎は自動で護ろうとしーー貫通した弾丸がマリアの額を撃ち抜いた。
アビスのレベルが低いのは見つかると他のプレイヤーのキル対象になるからかくれてちまちま狩るしか無く、そして性格上それを続けられなかった結果です
もう孤面の男グループは解散間近なんですが私は一人でも続けるつもりです




