ダンジョン
「マリア!」
「分かっているよ」
マリアのエストックが大蟹の爪を弾いた。そのまま回転して勢いを乗せ、顔を貫いた。さらに手首を返して切り上げ、背後から迫るサソリを切り裂いた。
「アジアン」
「分かってるって」
ナイフが閃いてサソリの尾と爪を切り飛ばした。さらに続けて逆手に持ち替えサソリの頭を刺し貫いた。
「この程度なのかな」
「まだ三十四層だよ。突破するのはもうちょっとかかるよ」
「何層あるんだっけ?」
「1000層」
「うわ」
アジアンが顔を顰めた。そしてナイフを鞭のように変化させて周囲を薙ぎ払った。
「アリアの創ったダンジョンだ。きっとどこからか空白のエリアがあるんだ」
「あー、ありそう。ボスとかいそうだし」
「ボスだけの階層がいくつもありそうだね」
*****
その様子をモニターしていたアリアはよくぞ見破った、と思っていた。その様子を眺めてマモンは笑う。マグナは微笑む。
「ふふ、マグナちゃん」
「なんですか?」
「……ちょっち相談相談。ちょうど良いしね」
マモンたちがカーマインブラックスミス加治屋の階から出て行くのにアリアは気づかなかった。そしてマグナたちがカーマインブラックスミス喫茶店の階に移動すると
「呼び出した理由を聞いても良いかしら?」
「そうだな。それを先に言って欲しいものだ」
「本当よね」
「待たされた分楽しい話だと良いのですが」
そこにいた四人の言葉にマモンは薄ら微笑む。そして
「アリアちゃんのダンジョンを攻略しちゃおうぜ!」
五分後
「アリスと魔王とエカテリーナが前に。私とレヴィ、マグナは後ろで」
「分かりましたわ」
エカテリーナは《春雷》を構えて駆け出した。低い体勢で駆けてモンスターの、四足歩行の虎の頭を貫いた。さらに続けて狼の首を切り飛ばした。
魔王は《尖》と《閃》を構えて迫り来る四足歩行の獣たちを切り倒していった。二本のナイフが閃き続ける範囲は何者も残らない。
アリスは《雷鞭》で一体を掴み、それを利用して薙ぎ払っている。近づけば捕まり、離れれば叩かれる。そんな過酷な二択を強いていた。
一方、マモンたちはと言うと
「ファイトー!」
何故かチアガール姿のマモンが手のぼんぼんを振り回して応援している。それを見てレヴィがマモンに銃を向けた。そして引き金を引こうかと思案していた。ちなみにマグナはと言うと
「……」
無言で次々と撃ち抜いていっている。
このダンジョンは召喚獣、テイムモンスターの連れ込みはできない。だから仲間と自分だけを頼る。それができない、自分しか信じられなかった《魔王の傘下》のメンバーも成長しているようだ。マグナの銃から放たれる弾丸は正確無比に撃ち貫いていく。それに対してレヴィの銃から放たれる弾丸はばらまかれる、と言う表現が似合う感じだ。魔王たちを巻き込んだ絨毯弾丸は魔王たちが自分で防いだ。その後、不満を口にされても「やればできる」の一言で全て押しつぶされた。
「レヴィさん」
「分かっているわよ」
背後から迫ってきたモンスターの群れを弾丸が薙ぎ払った。
*****
「むぅ……カンスト程度じゃ突破できないと思ったんだけど」
「アリア、彼らはカンスト程度じゃないでしょ」
「ま、ね」
アリアの頭を撫でながらシンは微笑んだ。そのまま抱きしめて
「ダンジョンのラスボスって誰なの?」
「んー? 誰でしょーか?」
「そうだね……《アストライアー》とか?」
「星獣は何故か選べなかったんだよね。やっぱり特別なモンスターなんだよね」
ふむふむ。シンは軽く安堵した。星獣相手にソロで戦うのは無理があるから。しかしアリアが設置したモンスターの話を聞いて顔が真っ青になった。
「あのさ、聞き間違いだって思いたいんだけどさ」
「ん?」
「今、《ポイズンドラゴン》《パラライズドラゴン》《スリープドラゴン》って言った?」
「うん」
「それだけの階層があるなんて……」
それぞれが状態異常耐性を無視して影響を与えてくる。つまり防具やスキルの効果じゃ防げない状態異常だ。
「意外とえげつないね」
「でしょ?」
「なんで自慢げなのさ」
「だって僕が作ったものだもん」
十五分後
「さてさて、お待ちかねの状態異常ゾーンだよ!」
ちなみに二百階層以降全てが状態異常ゾーンだ。シンはそれに何も言わない。
このダンジョンでドロップするアイテムはカーマインブラックスミスの商品だ。最も売れない装備がメインだが極稀にアリアの作り上げた最高装備などもある。だから無謀な挑戦と知りつつも挑むプレイヤーは後を絶たない。各階層に脱出ポイントがあるのもその一端を担っているだろう。
「にょわ!?」
状態異常ゾーンに入った瞬間、遠距離攻撃を得意とする三人が前に出て攻撃が届く範囲に入れさせずに倒し尽くしている。
「むむむ……ずるいよう」
「アリアだったらどうするの?」
「え? 今のを……うーん、壁を走って飛び越える?」
規格外だ、とシンは思った。ちなみにマモンたちが戦っている階層はダンジョンなのに迷路ではなく闘技場のようになっている。アリアらしい手抜きだ。
「シン」
「どうしたの?」
「シンならどうやって突破する?」
「そうだね……正面から一体を吹っ飛ばして穴を開けてそこから突破?」
「あー、面白いね。でもさ」
アリアは楽しそうに笑って
「ここでの正しい突破、って言うか攻略は戦わないことなんだよね」
「戦わない……?」
「うん、状態異常にならないように避け続ける、もしくはマモンたちみたいに遠距離から攻撃して戦闘させないことが一番だと思うんだ」
「なるほどね」
シンは目を細くして
「全力の一撃を叩き込んで逃げ回る、それも良いかもね」
「そうだね……でも三百階層からは変わるよ」
「そうなの?」
「どれか一体のボスを倒さないと突破できなあああ!?」
今まさにモニターの中でモンスターが全滅して悠々と階段を降りる六人の姿があった。アリアは両手をわなわなさせている。それを眺めながらシンは笑っていた。アリアのそんな様子が可愛いと思いながら。しかし
「どうもマモンは分かっていたみたいだね」
「……だってマモンだし」
「そうだね……でもアリアはいつかマモンの想像を越えられるかもね」
「だったら良いね」
アリアはモニターを眺めて
「でも400層を越えたらこうはいかないからね」
「どんな感じに?」
「全員が毒状態じゃないとドアは開かないよ」
「何それ。無理じゃない?」
「うん、無理だろうね」
「分かっていてそれなの……」
*****
「しっ!」
「ん」
エミの剣をエミリアの刀が弾く。さらに続けての斬撃をエミリアは後ろに下がることで避けて
「んっ」
「《零舞》! 《ソードリバーサル》!」
刀が逸らされた。そのまま
「《スターダストスラスト》!」
「《居合い・神薙ぎ》!」
高速の納刀からの居合い斬り。それはエミの高速の連撃を受け止め、はじき返した。しかしダメージはない。なぜなら街の中だからだ。
「うん、中々良いんじゃない?」
「そう、なのかな? 一回も当てられてないんだけど」
「レベル差もあるんだから良いのよ……それよりも本当に良いの? レベリングよりPSを伸ばすのに付き合うので」
「はい」
エミは屈託なく頷いた。エミリアはそんな様子の義妹の妹に苦笑した。
ダンジョン創るって楽しそうだよね
絶対攻略不可能みたいな感じにして攻略方法を模索させたりとか
ダンジョン創る系なろうって合ったら教えてください
作者は魔王の始め方しか知りません
毎日更新はいつか途切れると思います
具体的には明日
サークルの見学に行くので体力を失って帰ってくると思います
書けるか分かりません
それにモチベと言うより義務感で続けていますし
一回書くのを休憩した方が良いのかもしれない




