越えられない二人
「ふむふむ、アリアはまだ結婚できない年齢なのね」
「そうなのよ。色々変わったのにそんなのは残っているのよ?」
「面倒な……」
エカテリーナとマモンは思案して
「そう言えば私はアリアの旦那様と言葉を交わしておりません。会わせて欲しいのですが」
「むぅ? ……ダメ」
「なんでですの?」
「だってエカテリーナ綺麗だもん」
それを聞いてゲラゲラとマモンが笑う。そしてその頭に容赦ないマリアの突っ込みが入った。
「痛い!?」
「人の気持ちを笑ったらダメでしょ」
「そうですよ、マモン」
「マリアとアジアン、久しぶりだね」
「そう?」
「毎日会っていたじゃないですか」
「でも出番があったのは今回が久しぶりだからさ」
「メタい」
マリアのチョップを頭で受け止めて
「結婚したらどうするの? どこかで家を借りるの?」
「ん、買うかもしれない。まだそこまで明確には決めてないよ」
「そうなんだ」
アリアはマモンの膝の上でニャー、と鳴いた。最近のブームは猫らしい。まぁ、そのアリアのお腹の上でルフが丸くなり、その上にちゅう吉、そしてその上でひよちゃんが高らかに翼を広げている。なんなのこのブレーメン。
「アリアちゃん、お眠なの?」
「んー? かもね」
「ただいま戻りました……アリシア?」
「今はアリアだよー」
「そうでしたね」
マグナがアリアの姿を見て戸惑っている。そのままマモンに近づいて
「アリアはいったい?」
「眠いだけみたいだよ」
「自由な人ですね」
アリアがにゃー、と鳴いて体の上に乗っている三人を起こす。そのままアリアは起き上がって
「おはよ」
「もう寝る時間よ」
「じゃあもうログアウトする……マグナはどうする?」
「もう少しログインしています」
「はーい」
*****
「エミ、かかっておいで」
「はい!」
エミの剣がエミリアの首に伸びる。そこに躊躇いはない。アビスたちに襲われたのがきっかけになったようだ。
「君たちも好きなタイミングで良いよ」
「あいよ!」
アヤの剣がシンの剣に受け止められる。その背後からの槍を剣の柄で逸らして飛んで来た苦無と手裏剣を避ける。さらに背後からの光の槍を剣で切り裂いて消し飛ばした。そして
「《アイスランス》4!」
四本の氷の槍を剣で切り裂く。そのまま一歩下がってアヤの追撃を避けて蹴り飛ばす。空に浮かんだ剣を掴んで擬似的な二刀流。
「うん、良いと思うよ」
「何が良いんだよ」
「筋かな。中々コンビネーションもできているみたいだしプレイヤースキルもついてきたみたいだし」
剣を返した。そのまま腰の剣を抜く。二本目の剣だ。
「《夜明けの剣》と《黄昏の剣》! まさか見られるなんて!」
「ピュアホワイトはよく知っているね。だったらこの剣を抜いた意味は分かるかな?」
「……全力で?」
「そうさ」
シンの剣がアヤの剣を弾いた。そして空いた隙間に剣で切り込んだ。そのままアヤを吹き飛ばして
「おっと」
槍の薙ぎ払いを剣の柄で弾く。そのまま回転して槍を跳ね上げる。さらに斬りつけて
「どう? スキル熟練度は上がった?」
「え、あ、はい」
「良かった」
攻撃を受けることで育つスキル、《堅牢》と《自動回復》だ。その二つが育つためには攻撃を受ける必要がある。だからシンは剣を構えて
「どうする? この育て方で良いかな?」
「はい!」
「それじゃ行くよ」
一発ずつ打ち込み、アリアからもらったポーションで回復させる。それを何度か繰り返していると熟練度が最大まで行ったみたいだ。それに安堵していると
「この辺りのボスだね」
「これが……ボスなんですか」
「そうだよ。確かアリアが暇つぶしに片手縛りで倒していた奴だね」
「片手縛り?」
「うん、片手だけで逆立ちして頑張って倒していたよ」
思っていた片手縛りと違う、そう思いながらアーニャは手裏剣を構えた。そのモンスターはたくさんの目をもった蛇のようだ。
「対策とか教えた方が良い?」
「いりません」
「そうかい。お姉ちゃん」
「はいはい。頑張ってね」
シンとエミリアは少し離れ、様子を窺うようだ。参戦する気は一切無いかのように。
「作戦とかあるっすか?」
「エミとアヤが前に出てアーニャとピュアホワイトが私たちを守って」
「はーい!」
「了解!」
戦闘が開始された。装備のおかげで適正レベルと同じくらいだろう。だから
「《スターダストスプラッシュ》! からの《天舞八の型》!」
高速の斬撃からの高速の打撃が目を潰す。閉じていく瞳。そして開いている瞳からレーザーが放たれたが
「《ミラーシールド》! 《スターダストスプラッシュ》!」
レーザーを跳ね返し、剣で切り刻んだ。そして開いている瞳に向かって
「《ライトニングランス》!」
「《苦無乱舞》!」
雷を纏った槍が貫通し、苦無が一気に瞳を刺し潰す。それに蛇は身をくねらせる。だが
「《セイントボム》!」
「《アイスボム》!」
二人の放った爆発は蛇の瞳を広範囲にわたって潰した。そして
「エミ!」
「分かってるよ!」
残る瞳から放たれるレーザーがその太さを増した。焼き尽くそうとするそれを扇で受けて
「《スターダストスプラッシュ》!」
連撃を打ち込む。しかし
「目が閉じたら防御力も増すっぽいな」
「むむむ……」
「《苦無・縛式》!」
苦無が左右の手から八本投じられた。それはまだ開いている瞳に吸い込まれるように刺さり
「麻痺らせたっす! それと目が弱点っすよ!」
「分かった、《グングニール》!」
「《アイスランス》8!」
「《セイントランス》32!」
「《シールドバッシュ》! 《ミーティアメテオ》!」
そして
「《炎舞三の型》! 《アークスラッシュ》! 《天舞二の型》! 《スターダストスラスト》!」
スキルを続けて使った洋紅色の髪の少女がとどめを刺した。その様子はアリアとは違う、力押しだった。
「シン」
「何、お姉ちゃん」
「今の感じだとアリアに勝つのはいつ頃になると思う?」
「それはソロで? それとも?」
「どっちでもよ」
シンは一瞬悩んで
「無理だよ」
「そ、同意見ね」
「アリアに勝つ、それができるプレイヤーは……彼女たちぐらいじゃないかな」
「彼女たち?」
「エカテリーナとマグナだけだって、さ。いや、もうエカテリーナでもきついんじゃないかな?」
*****
マグナがアリアと同レベルになった。それ自体は良い。アリアとマグナが毎日のように戦うのも良い。だが、カンストしているのにさらに成長するのはよくなかった。具体的に言えば
「もうあの二人には誰も勝てないんじゃないか」
そうほとんどのプレイヤーが思うほどには。だが諦めていないプレイヤーもいる。そんなプレイヤーたちにとってそのダンジョンは行くべきものだった。
「それでここを突破したら良いんですね」
「できるもんならね」
「ん、行こうか。アジアン」
「そうだね」
二人がそのダンジョンに入っていく背中をアリアは見つめる。そのままモニターを眺める。そこではマリアとアジアンが戦っている姿が映っていた。
序盤の頃は緩く、アリアが作り上げたダンジョンは基本を忠実になぞったような感じだった。しかし公開されてから三週間、五分の一も攻略できたプレイヤーはいなかった。
r18に引っかかったやつを消していくのが辛い
何が辛いって文字数が多い
あいつら全員自分のを読むと黒歴史だからと言って断ったし
そんなわけでソーニョを続けるのが少し辛いです
次回更新はいつか分かりません
明日もするかもしれません




