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嫌な役目はいつも俺だ

誕生日でした。これはきっとおめでとう的な感想がもらえるでしょう

『シリアルキラーズ、それは私たちの敵だ』


エミに向けてその内容を送り返した。すると即座に返信があった。『分かった』と。それだけだった。アリアはそれを不安に思う。妹のエミは手紙やメールではやけに雄弁だと知っているからだ。


「仕方ないわね」


アリアはカーマインブラックスミスを飛び出した。そして


「ひよちゃぁぁぁぁん!」

「来なさい、カープ!」


天高く聳えているカーマインブラックスミス、その頂上から高速で飛ぶ大型の鳥が。それはアリアを乗せて高速で飛んだ。ついでにレヴィを乗せた漆黒の龍も。


*****


「みんな、どうするっすか?」

「逃げるしかないでしょ」

「っすよねー! 《煙遁・煙巻》!」


煙がアーニャの全身から現れた。それは周囲一帯を煙に包み込む。パーティを組んでいないメンバーの誰もが何も見えないようにされる。そのまま逃亡を図るが


「《ホリゾンタル》!」

「っ、《零舞》!」


大剣による横薙ぎを扇で受け止める。そのまま片手の剣で相手を斬る。エミが、エミたちが本当の意味でプレイヤーと敵対するのはこれが初めてだった。


「殿努めるからさっさと行けよな」

「アヤ!? アヤじゃ無理だよ!」

「どういう意味だおい……」


片手に握りしめた剣で先頭の男プレイヤーと切り結ぶ。その左から切りかかられる、それは盾で受け止めた。しかし右からの攻撃は防げない。アヤの体が地面を転がる。


「《ハイヒール》! 撤退しますよ!」

「脚止めがいないで大丈夫かよ⁉︎」

「エミさん!」

「うん!」


エミが扇と剣を構える。それを取り囲もうとするプレイヤーたちへピュアホワイトが投擲した槍が激突する。しかし


「装備が、レベルが違い過ぎる!」

「逃げ切れ……なさそうだなこりゃ」


エミは高速で何かを打ち込んで


「お願い、シェリ姉……」


か細く呟いてーー突っ込んだ。左右の手を振り回して自らを護るよりは攻めることを優先している。しかしそんな破れかぶれの戦い方じゃ勝てない。エミへ振り下ろされる剣、それはやけにゆっくりに見えた。


「エミーっ⁉︎」

「あ」


その剣が甲高い音を立てて折れた。そしてその持ち主が大きなハンマーに潰されて消えた。聞いているだけで気分が悪くなるような嗤い声が聞こえた。


「……誰?」

「あ? 俺様?」


その男はハンマーを肩に担いで


「アビス様だ!」


エミへ向けて振り下ろした。エミの頭が混乱している中でよく聞いた姉の叫びが聞こえた気がした。


*****


「殺す」

「アリア……やりなさい」

「当然」


二本の剣を握りしめて歩む。私に気づいたのかアビスは下卑た笑みを浮かべた。それに心が反応する。よくも、


「よくもエミを……っ!」

「お前の妹だからな!」

「死ね、死んでしまえ!」


ハンマーの細い柄が頭の上を通り過ぎた。アビスのにやけ面が目の前にある。そこに逆手に持った剣の柄を叩き込んだ。ダメージを受け、一歩下がったのを逃さない。アリアの剣が腹を貫いた。

致命的位置クリティカルポイント》ではない。だからこそアビスは疑問を抱く。なんのつもりだ、と。ハンマーの柄で殴ろうとするも避けられる。


「許さない」

「がっ⁉︎」

「死なせないから死に続けろ!」


口から剣を突き込む。背中側から見える先端は生きるために重要な器官を斬っていない。つまりダメージを受けるに留まっている。さらにアリアは懐から取り出したポーションの小瓶を砕き、飛沫をかける。癒える体力、減り続ける体力。

アリアは冷酷な瞳でアビスを殺し続ける。その様子をレヴィは眺めながら銃で邪魔をしそうなプレイヤーたちを撃ち抜いていく。アリアの邪魔をする者を排除しているのではない。むしろ助けていると言っても過言じゃない。アリアに殺され尽くすのは精神的にも死ねそうだから。


アリアが怒り狂ったら手がつけられない。一度全力でぶち切れたアリアを止めるために《魔王の傘下》全員が出動してえ返り討ちにあったという過去があるくらい。だからレヴィは目を閉じた。そのまま気配だけで相手を狙い撃っていく。


「エミ……そこの五人はさっさと迎えに行きなさい。今のアリアを見せるわけにはいかないから」


いざとなれば状態異常にして無理矢理動きを止めるつもりだ。だから《ハーディス》を抜いて構える。その狙いはアビスの陰に飛び込んだアリア。貫通させるつもりだ。しかしアリアの動きは速過ぎる。見えないくらいには。アビスが上下左右から斬られ続けているのを見ていると気分爽やかだけど


「殺さない、甘過ぎるわね」


殺し続けた程度で精神が死ぬのなら誰も困らない。絶望の淵へと突き落とさないといけないのに。


*****


エミは走っていた。自分が死んだ瞬間に姉の姿が見えたのだから。だから必死に走っていた。死んだ近隣へ向かって走り続ける。レベルが100を越えたから装備はドロップする。インナーとドロップしなかった装備だけを身に纏って走り続ける。


「お姉ちゃん……」


姉が死んでいないか心配だ。そう思いながら走っていると


『ちぃ!』

「っ!?」


大きな鳥が現れた。その鳥は私へと飛びかかってきた。慌てて避けようと思ったけど速過ぎる。避けられない。足で掴まれた。このまま運ばれてモンスターの餌にされる。そう思うとかなり辛かった。しかし鳥は私を持ち上げて飛び始めた。そして


「来たわね、ひよちゃん」

『ちぃ!』

「エミを下ろして。もう大丈夫よ」

『ちぃ?』

「ひよちゃんはアリアを見守っていて。あの子を見守れるのはあなたくらいしかいないのよ」


レヴィさんとひよちゃんと呼ばれる鳥は知り合いのようだ。それに驚いていると


「え!?」


姉が何人もいる。そう錯覚するくらいの速度でお姉ちゃんは戦っていた。その相手はさっき私を殺した男だ。だけど彼には同情する。あまりにも酷すぎる惨殺にエミは表情を引き攣らせた。そのまま駆け出そうとするが


「ストップよ。それ以上進んだら死ぬわよ」

「レヴィさん……?」

「エミ。お願いだから動かないで」

「……」


頭に向けられた銃をエミは睨む。それにレヴィはため息を吐いて


「嫌な役目はいつも俺だ」

「……レヴィさん、見逃してくれませんか?」

「さぁね。私はあなたとその仲間たちを守るってアリアと約束したのよ」

「お姉ちゃんが……だったら何でお姉ちゃんと話させてくれないの?」


レヴィは鼻を鳴らして


「死なせないって約束なのよ。今のアリアにはあなただって斬られると思うから」


レヴィさんはそう言いながら装備を返してくれた。そのまま素直に受け取った瞬間、エミは駆け出した。そして一発の銃声。それはまっすぐに飛んで洋紅色の髪の少女を撃ち抜いた。


「レヴィさん!?」

「レヴィ!?」

「なんで!?」

「なにを!?」

「なんっすか!?」


その結果を見て5人は驚きの表情になる。地面に崩れ落ちる洋紅色の髪の少女は最後に剣を振り抜いてアビスを全損させた。そして麻痺して立ち上がれないようだ。


「レヴィ……何のつもりだ!」

「何のつもりって言われてもね。私はエミちゃんの情操教育を気にしただけよ」

「……」

「エミちゃんのためにももう止めなさい。次は殺すわよ」

「……むぅ」


アリアは地面から起き上がり、ため息を吐いて気まずそうに妹たちを見た。

サブタイトルが分かる人は作者の友人です

アビスの出番はこれで終了のつもり

シンたちとの絡みすら無しに消え去る運命


次回はどうなることやら


つり乙2面白いけど√分岐にすら至れていない私

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