あんまり嬉しくない
つり乙2を買ったとしても投稿ペースは変わりません
「エミ! 後ろ!」
「うん!」
エミの剣が高速で閃いて触手を伸ばしてくる謎の生き物を切り倒した。そしてそのまま次々と切り倒してーー
「ふぅ、意外と強かったね」
「そりゃ適正レベルガン無視っすからね」
「でも無茶や無理じゃないですから……このままでも大丈夫だと思いますよ」
「そうね」
シアの言葉にみんなで頷いて……武器を構えた。現れた触手生物を再び切り倒そうとしたが
「あっ!?」
「っ、エミ!?」
「ああもう!」
剣を持った手首に触手が巻き付いた。そしてそのまま引き寄せられた。それにアヤが駆け出した。
「《ソニックブーム》!」
「《アイスランス》!」
二つの遠距離攻撃が触手を断ち切り、触手生物を倒した。エミは振りかぶった扇の行く先が無いのに頬を膨らませつつ、安堵の息を吐いた。
「触手なんてエロエロだよ」
「いや、お前の思考だけだろ」
「え?」
ピュアホワイトがアヤの言葉に疑問を持つ。見るとアーニャもシアも頷いている。しかしアスカは分からないようだった。アヤが分かるということは……むっつりか。
エミにそんなことを思われているとアヤは気づかず、剣を構えた。そのまま触手生物と共に現れたハリネズミに向かって剣を振り下ろした。今日来たばかりの新エリア、だからこそ知らなかったのだろう。
「カウンター!?」
「ハリネズミの針……なるほどね」
「ハリネズミのジレンマってあったね」
驚いている者、納得している者、思い出している者。それぞれアヤの心配はしていない。
「アヤ!? 《ヒール》!」
「サンキュー、シア……こいつ、遠距離からやるべきっぽい」
「分かりました、《アイスボール》!」
氷の塊がハリネズミを圧殺した。しかしハリネズミは次々と現れる。どうやら物音を聞きつけたようだ。
「一旦引くか!?」
「その必要は無いよ」
「アリア……じゃない?」
「エミ?」
豹変したその様子に戸惑う周囲、それを無視してエミは駆ける。剣で、扇でダメージを受けながらも攻撃を受けない。一秒たりともその場に残らないその戦い方は姉を彷彿とさせた。しかし
「あ」
「《ヒール》! 無茶しないで!」
「いけると思ったんだよ」
「それが無茶なのよ……もっと気をつけて!」
「分かってるよ」
エミの扇が閃いてハリネズミのカウンターを受けつつ叩き割った。さらに続けて剣で切り裂いた。
*****
「エミリア」
「何よ、マモン」
「アリアちゃんが呼んでるよ」
ちょっと意外な内容に眉を顰めつつ、アリアのいる部屋に足を勧める。扉をノックして返事が返ってくるまで待っていると
「あ、来たね。ちょっと創って欲しいアクセサリーがあるんだ」
「指輪って言ったら怒るわよ」
「なんで!?」
アリアの驚きにエミリアは相好を緩めて近づき、頭を撫でた。アリアがにゃー、と鳴くのに笑って
「シンに指輪を贈るの?」
「ん、んー? そう、なのかな?」
「なによ。贈らないの?」
「あれー?」
何かに混乱している義妹を微笑ましく思っているとアリアはぼそり、と呟いた。
「欲しいなぁ」
と。
十分後
「はい、良いね?」
「あの……説明ぐらいしてくれないと……」
「アリアにちゃんと渡すのよ。良いわね?」
ログアウトして弟に説明した。なのにこの弟は理解が遅い。
「アリアに指輪を贈れって言っているのよ」
「リアルなら贈ったけど」
「あ、そうなの?」
知らなかった。そう思っていると
「柘雄は着けていないのね」
「ん、ああ、華美なアクセサリーは禁止だからって」
「指輪って華美じゃないでしょ」
「そうなの?」
柘雄は鞄を下ろし、制服のボタンを外して上着をハンガーに掛ける。そのまま椅子に腰掛けて
「そうだね、アリアに指輪を渡したからって……」
「渡しはしたのね」
「うん。とりあえず、って感じだけどね」
アリアに相談されたのは指輪を渡した方が良いのか、だった。その言い方から柘雄が渡していないと思っていたのだが……まさかどちらからも贈るつもりだったの? 柘雄が机の上で大事にしている指輪、それは確かにアリアの薬指にも嵌まっている。シンプルな銀のリングに赤い小さな合成宝石。どんな作り方の合成宝石かは知らない。いまじゃダイアモンドも量産できるからお金さえあれば誰でもダイアモンドを持てる。
「ダイアモンドの指輪じゃないのね」
「アリアが赤が良いって選んだんだよ」
「え、まさか一緒に買いに行ったの?」
「そうだけど?」
何か変かな、柘雄はそう言う。とりあえず
「アリアと一緒に買いに行くのよ」
「うん、そうだね。誘ってみるよ」
そう言うなりいきなりメールを打ち出した柘雄、その頭にチョップをして
「アリアは今ログインしているから会って話してきなさい」
*****
頬を掠める刀、それを見ながら手に持った剣を突き出す。そのまま貫こうとするが刀の鍔で逸らされた。そのまま回転しての斬撃を剣で逸らして距離を取る。しかしその動きは止まらない。高速の突きを剣で弾いて増したから切り上げる。避けられた。地面を蹴って跳び上がり、薙ぎを回避する。
そのまま踵落とし、さらに続けての斬撃は刀に受け止められた。
「どうしたの?」
「どうって何さ」
「考え事?」
エミリアの言葉に戸惑いつつ剣を振るった。しかしそれは受け止められて
「《悪魔龍皇剣》、なんだか強いのにね」
「強いからって持ち手にもよるんだけどね」
「アリアだからでしょ」
エミリアが笑いながらの刀を放つ。その背を掴んで刀を止める驚いているエミリアを無視して
「シン、どうしたの?」
「どうしたのはこっちの台詞なんだけど……アリアを少し借りるよ」
「ええ」
エミリアはまるで知っていたかのように頷いた。するとシンは少し躊躇って
「アリア、今度の日曜日にデートしない?」
「ん、良いね」
あまりにもあっさりしているアリアの返事にシンは苦笑した。
*****
「お姉ちゃんはいないんですか」
「そうなのよ……ごめん、ね、エミちゃん。帰ってきたら伝えるからね」
「お願いします」
エミの言葉にマモンは頷いてーー口を開いた。
「ご飯、食べていく?」
「あ、うん。良いの?」
「良いの良いの。アリアちゃんが帰ってきたらちゃんと請求しておくから」
「はーい」
テーブルについてマモンさんが料理するのを待つエミ、その隣の席にさりげなくエミリアが座った。
「ここ、良いかしら?」
「大丈夫だけど……エミリアさん?」
「ええ、そうよ。エミちゃん」
「……」
エミは自分がエミリア、と言う名前に出来なかった理由を知っている。それはすでにエミリアという名前が使われているからだ。だから愛称であるエミという名前を使った。
その原因が目の前にいると思うと何か言わずにはいられなかった。先に口を開かれなければ。
「アリアに、ううん、シェリルに似ているわね」
「シェリ姉に?」
「そうよ。でもアリアにも似ているわね」
「……そっちはあんまり嬉しくないかも」
「アリアが聞いたら泣きそうね」
エミリアはそう呟いて
「マモン、私と彼女に何か爽やかな飲み物を」
「はいはーい。エミちゃんのはもうすぐ出来るからねー」
マモンがそう言って少しした後、マモンの作った豚カツとレモン風味のサイダーが運ばれてきた。ちなみにエミは何も注文していない。
エミとエミリアの出会いは二人の運命を変える……なんてことはない、うん
でもアリアと柘雄の出会いは婚約まで行ったと考えると……百合ルート?
とりあえず次回はその二人メイン
ひよちゃん出てきて……お願いだから
そしてさらっとデートしようとしてんじゃないよ柘雄爆ぜろ
一九日が誕生日だから明後日誕生日ですね
投稿時間が日を跨ぐ前だから間違ってないはず




