妹と姉とその姉と
「アリア相手なら俺たちも行くかね」
「そろそろ歯牙にかけられる程度だろうな」
ジャックと魔王が台上へと上がる。それにアリアは何も言わない。彼女は挑まれる立場だからだ。
「さぁさぁ、誰でも彼でもかかってこい!」
アリアのそんな言葉と同時にプレイヤーたちは一斉にアリアに襲いかかった。
*****
「レヴィは行かないの?」
「まさか。一対一じゃないと勝っても意味無いわよ」
「だよねー」
マモンとレヴィは完全に観客に徹している。《魔王の傘下》からも何人かは挑んでいる。しかし
「エミたちも行くとはね」
「手加減してもらえるって思ったのかもよ」
「あー、なるなる。でもアリアちゃんに限ったら……ねぇ」
「手加減でも強過ぎる、ってね。もしかするとアリアみたいに高レベルプレイヤーを利用してスキラゲじゃない?」
「あー、アリアちゃんのスタートダッシュのアレね」
二人は話しながらもアリアたちから目を離さない。そしてアリアがかかってこい、そう言った瞬間
「あ」
「やっぱり」
アリアの持つ最強の剣、《悪魔龍皇剣》。それが《刀》スキルの《居合》系、さらにアリアのagiを合わせれば
「一刀両断、って感じね」
「さすがに避けたプレイヤーも多いけどね」
「でもその程度じゃ」
アリアという名の嵐が通り過ぎた。それだけでプレイヤーたちが次々と消えていく。しかし
「魔王とジャック、セブンスドラゴニックライオネルソードとルシファーが残っているね」
「それにエミたちも」
他にもプレイヤーはいることにはいるのだが名前を知らないので流した。
*****
「さてと」
「っ! っ⁉︎」
「秘剣鳥の型ーー梟」
瞬間的な三連斬がそのプレイヤーを全損させた。そしてそのまま残るプレイヤーにアリアは剣を向けた。しかし
「あ、エミたちだ」
「行くよ、お姉ちゃん!」
「おっと」
アリアはエミの剣をあっさりと避けた。直後、エミが地面にひっくり返った。それに驚いているエミを置いてアリアは駆ける。
「兄さん!」
「分かっている!」
《片手長剣》と《長槍》を構えた兄弟に向かって突撃する。と、見せかけて
「《幻影》」
「っ⁉︎」
「《アースクエイク》!」
動揺している弟に気を留めず、兄が範囲攻撃を放った。しかしアリアにダメージは無い。
「飛んだ⁉︎」
「っ! てゃっ!」
逆立ちのように着地し、そこから蹴りを放つ。それがルシファーの体を吹き飛ばす。そして追撃を加えようとしたが
「くそっ!」
「わわっ、危ないなぁ」
「アリアが言うかよ!」
剣と槍による高速の連続攻撃、アリアはそれを正面から斬り結び
「《グングニール》!」
「《ソードリバーサル》! 秘剣鳥の型ーー燕返し!」
アリアの放ったのは燕返しとは名ばかりの技だ。何故なら
「前後からの斬撃だと⁉︎」
「硬いなぁ」
「アリアの作った防具だからな!」
「なるほど納得!」
ちちっ、と前髪が削られた。しかしアリアは何も言わない。目も細めない。何事も無いかのように剣を振りかぶって
「隼天斬!」
「《スターダストスプラッシュ》っ!」
正面向き合っての高速連撃スキル、それを真上から叩き割る。全損したセブンスドラゴニックライオネルソードを無視してルシファーへ向かう。しかし
「《ブリューナグ》!」
「っ、《アストライアー》!」
回避できないタイミングの槍を受ける覚悟を決める。しかしただでは受けてやらない。柄で槍を地面に叩き落とす。ダメージは受けたが……残り8割強。
「さてと、残るは六人かぁ」
エミたち四人と静観していた魔王とジャックだ。そして二人は顔を見合わせて
「譲ろう」
「ありがたく」
魔王が一歩前に出た。しかし
「行くよ、お姉ちゃん!」
「……今、俺が行く雰囲気だったよな?」
「ま、アリアの妹だし」
「それもそうか」
突っ込んできたエミの剣を受け止める。アリアが全力で創り上げた剣をアリアが受ける、それにアリアは笑みを浮かべながら
「アヤたちもおいでよ」
「言われなくとも!」
「行きます!」
「はい!」
「あれ、俺って……」
「落ち込むなよ」
魔王の肩を叩いてジャックは笑う。しかしアリアはそれを気にしていない。何故ならばそこに彼女の姉妹がいるからだ。
「シェリ姉、手伝ってね」
「はいはい」
「……エミと手を組んだの?」
「可愛い妹の頼みだからね」
アリアはため息を吐いて《悪魔龍皇剣》を鞘に収め、一本の剣を抜いた。光の聖剣、《エクスカリバー》だ。
「エミの剣、《聖剣コールブラント》に匹敵する剣だよ」
「……私の?」
「うん」
「なんで同名の剣なのよ」
シェリ姉が苦笑しているのを無視して駆け出した。そのまま背後に回り込んで、逆手に持った《エクスカリバー》を突き刺そうとする。しかし
「《マグネットウォール》!」
「わっ⁉︎」
「金属を引き寄せる壁よ」
「磁力は金属全般じゃないよ!?」
「良いのよ」
「何が!?」
アリアの叫びに姉は何も言わない。そしてーー
「黑より昏く、光より明るく、焔より熱く、氷より冷たく、雷より素早く、風より鋭く……」
詠唱を始めた。そんな魔法系スキル、聞いたこともない。アリアはそう思い、動きを止める。磁力の壁から藻掻くのをやめて……剣を抜いた。《エクスカリバー》を握りしめたまま、もう一本を抜いた。その剣の名はーー
「《寵愛のエウローペー》!」
「っ、《マグネットウォール》が!?」
「《スラスト》!」
「悪いね、エミ」
斜めからの切りをアリアは避けない。その下をかい潜ってエミに肉薄した。驚くの表情を無視してアリアはその横を素通りした。
「《エターナル》!」
「《エウローペー》ぇぇぇぇぇぇっ!」
正面から極彩色の槍を切り裂いた。剣が触れたところから槍が消滅していく。霧散していく。そしてーー
「魔法を消し飛ばす剣!?」
「うん、そうだよ。これが僕の三つ目の星獣装備ーー《寵愛のエウローペー》!」
細く鋭いその剣をアリアは構える。槍のように構えた。そしてシェリルを見据えて
「行くよ」
「てやっ!」
「わっ!?」
がら空きの背中に妹が躊躇無く一撃を打ち込んだ。そしてそれに続くアヤとピュアホワイト、さらにはアスカもだ。
「……仕方ないか」
アリアの目つきが変わった。戦うべき相手だと判断したのだ。そして一瞬にも満たない刹那、四人のプレイヤーが全損した。その結果を見届けずにアリアは駆け出した。
「うりゃっ!」
「《マグネットランス》! からの《煉獄の霹靂》4096!」
放った。しかしそれは高速で閃く剣に全て消し飛ばされて
「速過ぎよ」
「あはは」
シェリルの体力が全損した。そして魔王がようやく、といった様子で立ち上がった。そしてそのままナイフを二本抜いて
「行くぞ」
「おいで」
二本の剣と二本のナイフが切り結ぶ。散り舞う火花がアリアのカーマインの髪を照らす。
上から迫る剣をナイフで受け止め、カウンターのナイフを剣の柄で逸らす。そのまま圧倒的至近距離で斬り合いーー
「秘剣華の型ーー露草!」
高速の三連撃。一撃をナイフで逸らし、二撃をナイフで受け止め、三撃をその体で受け止めた。さらに続けての蹴り上げ、切り上げ、宙返り切り。そしてそのまま剣を構えて
「秘剣天の型ーープレアデス!」
タイトル金子みすゞ臭がする
まぁ、とりあえずアリアちゃんぱねぇってことで
ジャック戦は書きません
ジャックのあっさりとした敗北です
次回からはまたエミたちメインに戻る予定です




