《魔王の傘下》公式イベント
「アリアちゃん、お客さんよ」
「はーい。誰?」
「さてさて誰でしょー?」
「んー、マモンがそう言うからね……うむむ、中々の難問だね」
「解けたら褒めてあげる」
別に良いや、僕はそう言いながら剣を打ち終える。銘は《ダークヘブン》、名前だけでも強そうだ。
ちなみにアリアの最近のネーミングセンスにリアル姉と自称姉と義姉は中二病、という結論を出していた。そのもっともたる例が《シャイニングダークネスプロテイン》、野菜炒めだ。
「シェリ姉とか?」
「惜しい惜しい。正解はこちらの方々でーす」
そう言ってマモンが手で示した先に、四人がいた。決意を口にしてまだ二十四時間も経っていなかった。とりあえず四人が表に出てきてアリアが目を細くした。そしてアリアは表情を改めて
「いらっしゃい、今日はどうしたの?」
「「「「……」」」」
店員として接しようとした。しかしそれは軽々と打ち破られた。なぜなら、アヤがその頭をいきなり撫でたから。
「もう、何するのさアヤコ」
「アヤだっつーの、ばーか」
「そっか」
アリアはアヤの手に目を丸くしながら……笑みを浮かべた。そして
「久しぶりだね、アヤ。ここまで歩けるようになっているなんて思わなかったよ」
「そうかよ、期待外れか?」
「越えているから外れかもね」
何を言っているのか分からない三人は目を丸くしている。それを無視してアリアはアヤの手をどけて
「それでどうしたの? 装備のオーダーメイド?」
「そんなところ」
エミの言葉に左右から色々言われている。アリアはそれを無視してエミを見つめた。そして
「装備のオーダーメイド、ね。別に構わないけどどうするの?」
「え?」
「装備? 防具? フル装備?」
「フル装備!」
左右+アヤがエミに何かを言い出した。
「いや、別に構わないけどさ、どうするの? ただってわけにも行かないけど」
「お姉ちゃん、私の秘蔵のクッキー、リアルで欲しい?」
「うむむ」
アリアは悩んだ。妹のエミが好きなクッキーは実は近所の高級お菓子屋で売っているそれだ。だから
「良いよ」
「アヤたちのも揃えるよ。それで良いでしょ?」
「え」
「その程度じゃ足りないよ。一枚100円もするんだよ?」
「うむむむむ……分かったよ。ポーションもつけるよ」
その後、アリアは正座させられマモンに説教されたが
「リアルマネーじゃないから大丈夫なはず」
「あ、クッキーだからそうだね」
そしてマモンが納得するのを見て、アスカはため息を吐いた。そこじゃないでしょ、と聞こえたような気がした。とりあえず
「私の装備は《片手剣》と《扇》! それから防具全部!」
「私も《片手剣》と防具全部で」
「私は長槍、《重槍》で。それと防具全部と《盾》で」
「《杖》を。防具全部で」
「君たち意外とガッツリ来たね」
呆れたアリアは何故か笑いながら装備を次々と揃えていった。しかしそれはアリアのさりげない悪意が込められていた。いや、忘れていたのかもしれない。
「お姉ちゃん、これ重くて装備できないんだけど」
「え? なんで?」
「ステータスあんまり高くないもん」
「……そういえばそうだね」
どうやら忘れていたようだ。それにエミたち四人が呆れ、マモンが腹を抱えて笑った。
*****
「物で買収されるって中二のやることなの?」
「さぁ? でもアリアちゃんなりの応援なんじゃない?」
「あの子、そんなの考えられるほど頭良かったっけ?」
「……ノーコメントで」
*****
「っ!」
「おりゃっ!」
「せゃぁぁぁぁぁ!」
遠目に見えた喧嘩のようなものに近づいてみると何故か練習、訓練のように見えた。
「アレは私たちのイベントの団員1人に挑む、その準備みたいなものね」
「レヴィも戦うの?」
「今日は私がご指名なのよ」
レヴィは面倒そうに呟く。それにエミは笑って
「私もやっても良い?」
「やめなさい。一瞬で死ぬわよ」
「え」
「私は全力で撃ち抜くのだから」
レヴィの変容にエミが口をパクパクさせる。その頭をアヤは撫でて
「私らって装備を含めたらどれくらいの強さなんかね?」
「装備を含めたら……ね。千程度じゃない?」
「「「「っ⁉︎」」」」
「それでも私たちには程遠いけどね」
「……レヴィさんのレベルはどれくらいなのですか?」
「四九九九よ」
「四九九九……四千九百九十九⁉︎ カンスト⁉︎」
「そうよ」
なら強いわけだ、四人が納得と同時に呆れている。レヴィはそれを知ってか知らずか練習している彼らに歩み寄る。それに着いて行っていると
「そろそろ良いかしら?」
「おう!」
「だったら移動しましょう。エミたちも」
五分後
「コロシアム?」
「そうよ。ほら、客席もあるわよ」
ちなみに無料、とレヴィは言いながら銃を抜いた。そして装填してある弾丸を確認して
「特等席に行くわよ」
「え」
「特等席にアリアもいるからね」
そして特等席に移動して座ったのだが
「魔王の嫁さん綺麗じゃん」
「こんの果報者め」
「……もうやめてくれ……」
魔王は試合が始まる前にぐったりしていた。そして今日の審判、マモンがコロシアムの中央に躍り出て
「みなさまようこそお越しいただきました、本日審判を務めさせていただく《天魔弓》、マモンです。本日の試合は我らが《魔王の傘下》が一員、《魔弾》、レヴィアタンでございます!」
途端、レヴィコールが起きた。それに手を振りながらレヴィは堂々とコロシアムの中央に。そして
「対するは集いに集った106名のプレイヤー! 果たして今宵はどちらが勝つのか! それでは!」
「「「「「「「3!」」」」」」」
「「「「「「「2!」」」」」」」
「「「「「「「1!」」」」」」」
「開始!」
マモンの宣言と同時に詠唱を済ませていた魔法が、番えられていた矢が、構えられていた銃から攻撃が迫った。
「嘘でしょ」
「無理だろあれ」
「……」
「こんな間近で見られるなんて……!」
悲愴感漂う三人、ピュアホワイトだけは違った。ピュアホワイトはレヴィを見つめて
「レヴィさんならこの程度、なんともないでしょ」
「そうだね、レヴィだからね」
アリアと意見が一致した瞬間、全てがレヴィに降り注いだ。そしてーー
「不吉を、届けに来たわ」
「決め台詞キターーッ!」
「もろパクリだけどね」
テンション高めのピュアホワイトにローテンションのアリアが突っ込む。見ればレヴィの手には漆黒の装飾銃が。しかも無傷だ。
「凄え!」
「嘘でしょ……」
「凄いです……」
「この程度の弾幕じゃまだまだね」
レヴィはそう言って装飾銃を構えた。そしてそのまま撃ち出した。レヴィが引き金を引く度にプレイヤーが倒れていく。すべて《致命的位置》を撃ち抜いているからだ。
「ふん、手応えがあるプレイヤーはいなかったわね」
「だって次は僕が控えているからね」
「そう言えばそうね。でも人気とかで負けた気がするわ」
「だって僕が最強だもん」
レヴィは無言で観客席に戻ってきた。それとすれ違うようにしてアリアが席を立った。そしてそのままコロシアムの中央に進み出て
「さぁ、誰でもかかってこい!」
観客席にいた1000を超えるプレイヤーが一斉にその言葉を聞き、コロシアムに飛び降りた。
次回アリアちゃん無双回予定
一応二章のメインはエミたちです
他が弱過ぎるんじゃない
レヴィたちが破格すぎるんだ
ニューパソコン慣れない(´・ω・`)




