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伝説

「ピュアホワイトの死は無駄にしないよ!」

「エミ……」

「エミ! 前を見て!」


死んでないから、そんな天の声が三人の耳に聞こえた。しかしそれを無視してエミは走る。剣と扇を握って走る。

《エウローペー》はもちろんそれを見逃さない。振りかぶった拳がエミの小柄な体を吹き飛ばそうと迫るが


「そうはさせんよ!」


斜め下からの切り上げ、いや、刃を立てていない。逸らし目的のそれは成功し


「エミ!」

「《炎舞》!」

「「えっ⁉︎」」

(えっ⁉︎)


天の声すら動揺していた。しかしそれに気を取られず、エミの動きが加速する。決まった通りのモーションでの三連撃。しかし《エウローペー》は怯んでいない。明確な隙が出来ていた。


「っ⁉︎」

「《ファイアー》! 《ファイアー》! 止まりなさい⁉︎」


《エウローペー》は止まらない。そのままエミを蹴ろうとした。しかし


「《ソードパリィ》! 《零舞一の型》!」


全損しなかった。


「今の……」

「マジで?」

「っ、《炎舞》! 《スラスト》!」


左右からの連続攻撃に《エウローペー》の動きが硬直した。ありえない、とでも言うように。


「危のうござるよ!」

「えっ⁉︎」


我に帰った《エウローペー》の拳、それが地面に落ちた。それをなしたプレイヤーは己の刀の結果を見ずにエミを抱き抱え、その場を離脱。


『ぶるっ!』


逃がすか、そんな感じで《エウローペー》は吠えた。しかしリョーマは振り返らない。何故ならそこに盾があるから。


「エレナ殿、ナイスタイミングでござるよ」

「さっさとその子を安全圏に連れて行くんでしょ。システムの穴を突いたんだからこれくらいしかできないわよ」

「了解でござる」


この場にピュアホワイトがいたのなら驚きの声を上げていただろう。トップギルド二つのリーダーがここにいることに。


「リョーマ、私たちに出来るのは体勢の立て直しまでよ」

「承知しているでござるよ!」


拳を正面から斬りつけた。お互いの動きが止まった瞬間


「《ヘブンズレイ》!」

「エレナ殿はおっかないでござるな」


光を纏った剣の一撃が《エウローペー》の拳を受け止めた。本来なら斬れたのだが


「やっぱり無理ね」

「無茶は禁物でござるよ」


二人が気楽に言う。そしてエミを降ろして


「大丈夫でござるな?」

「……うん」

「その眼、アリア殿とそっくりでござるよ」


リョーマは褒め言葉として言ったのだろう。しかしそれはエミにとっては別の事を思わせる。負けたくない、と。


「守るしか出来ぬ身としては不服だが……まぁ、手を貸すでござるよ」

「いらない」

「無茶は禁物でござるよ」


リョーマは同じ言葉を繰り返した。そして


「残りの体力は億を割っている、ならば決着まで荒れ狂う牛でござろうな」

「乗馬しなさいよ」

「無茶でござる」

「馬じゃないからね」

「そこではないでござるよ」


*****


「お疲れさん、達也。気分はどうだ?」

「……悪くないな。少しリアル酔いしたが」

「そうか、まぁ座ってろ」


リアルと仮想空間では重力が異なる。だから長くいて、戻ってきた場合、体が違和感を覚えてフラフラする。


「感想は?」

「……大人気ない奴らがワンパンかまして速攻で立ち去ったのが気になるな」

「マモンたちか。あいつらは……まぁ、仕方ないだろ」

「そんなもんか」


達也はやれやれ、とため息を吐く。ジャックは手に持ったお茶のペットボトルを投げ渡す。

化学分野の発展により、すでに植物繊維性ペットボトルが一般に普及している。つまりポイ捨てしても問題無い、がモラル的には良くない。


「特にシンとアリアだ。個別で戦えばもう少し余裕があると思ったが……」

「強かった、か?」

「後衛前提の《アイドル》でステータスを上昇してさらに愛の力とやらでパワーアップでもしたのかってレベルにな」

「ははは、面白い冗談だ」

「冗談じゃないから困っているんだよ……」


達也は本気で困った、と言いながらその顔は笑っている。そしてお茶を飲み干して


「お前の言っていたのを確信したよ」

「……へぇ?」

「アリアは俺たち……じゃないな、この世界に必要な人間だ」

「そこまで規模が大きいか?」

「お前は会社だと言った……だがその程度で収まるようなちっぽけな人間じゃない」

「それ言ったら俺たちがちっぽけに感じるな」


ジャックは言葉とは裏腹に笑い、時計デバイスを起動させた。そしてそのまま軽く操作して


「どうする? 中卒で勧誘してみるか?」

「さすがにそれはうちが潰れ、その後が可哀想だしな。高卒……いや、やはり大卒か院卒だな」

「院までは待てないだろうな……」

「そもそも卒業なんてしなくても良いだろう。小卒で就職したやつもいるだろ」

「ああ、そう言えばうちにもいたな」


達也は思い出し、楽しむかのような口調で……目を閉じた。そして


「俺たちの世界はどこに行きつくと思う?」

「破滅だろ」

「おい」

「いやこれがあながち冗談で無いと思うんだよな」


ジャックは笑わずに真顔でそう言い切って


「今の俺たちに出来るのは世界の破滅の足を遅くさせるだけ。だからさっさとアリアを招き入れたいものだ」

「……アリアはどうなると思う?」

「さぁな。ひょっとしたら高校に受からないかもな」

「あいつは進学予定らしいな」

「へぇ」


アリアはきっと高校に行って俺たちを置いていくだろう。正直何も残さずに去っていくだろう。だからーー


「大人として、何が出来るかな」

「知るか、何もしなくても良いんじゃねぇの?」

「はっ」


*****


「ピュアホワイト、これ」

「……」


ピュアホワイトはエミの手にある《絢爛華美なる皇扇》を眺めて……目を閉じた。そして手で押し返して


「それ、エミに譲るよ」

「え?」

「私、やっぱ防御向いてないって思うわ」

「……」

「だからどこかで……そうだね、長柄の武器でも買おうかな」


ピュアホワイトはそう言ってエミの頭に手を載せた。そのまま笑って


「エミの方が扇は使いこなせると思う。だから譲る」

「ピュアホワイト……」


ピュアホワイトは何も応えずに一歩下がって


「ちょうど良さそうな素材が手に入ったし?」

「あ、《エウローペー》の」

「でもまだ星獣装備のもらい主は決まっていない、それに賭けても良いかもな」

「アヤ、さすがに私たちじゃ無理よ」

「期待するぐらいなら誰でも良いのさ」


アヤは笑ってその時を待った。しかしそこで表示されたのは意外なものだった。

《初》《中》《先》の三つの《エウローペー》での結果だった。それぞれに3人ずつ表示されていた。《中》と《先》は躊躇無くガン無視して《初》に目を通した。そしてそこに表示されている名前は


「アリアと」

「シンと」

「……誰?」


マリアって誰だ、とエミたち四人は考えた。本来なら防げるはずも無い《エウローペー》の攻撃を初心者に受け止められる、そんなことが出来た原因の彼を。攻撃した際に多数のアイテムでステータスを大幅にダウンさせた彼を。


「ん……あ、マリアってあのマリア?」

「「「え?」」」

「アリアさんのお店のだよ」


そして私たちの指針が決まった瞬間にもなった。


「「私はお姉ちゃんに勝つ」

「あたしはアリアに感謝を伝えに」

「旦那に逢いに」

「伝説を見るために」

伝説って? ああ!


感想欲しいぞい

大学のテスト難しかったナリ


とりあえず200話記念の書いたんですけど6千字を超えました

さて、これで途中で完結したりやめたらどうする気なんだろう


感想欲しいぞい

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