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煉獄の霹靂

「せやっ!」


エミが右手を振りかぶり、思いっきり突き刺した。しかしそれは《ビッグコボルド》の外皮を少し削るに留まった。逸れたのだ。


「エミ、レイピアを使うのならdexを上げると良い」

「っ、はい!」


シンの言葉にエミは頷きながら《ビッグコボルド》から距離を取った。その隙間に飛び込んで


「《演舞壱の型》!」


高速の連撃が《ビッグコボルド》の体を揺らす。しかし動きを止めるに至らない。《ビッグコボルド》は空いた片手でピュアホワイトを殴り飛ばした。


「《ファイアー》!」

「《アークスラッシュ》!」


アスカとアヤの攻撃でようやく体力が半分を割った。シンの一撃は眩暈を起こしただけでダメージ自体は0に等しいものだったのだ。


「……次の星獣は牡牛座、オックスかカウ。それまでに……どれだけ強くなれるだろうね?」


*****


そして星獣のイベント当日となった。《始まりの街》にたくさんのプレイヤーがいる中、そのプレイヤーたちは周囲に距離を置かれていた。

それもそのはず、世界一のパーティだからだ。しかし本人たちはそれに気づかず


「僕たち何かしたっけ?」

「さぁ?」


そんな会話をしていた。


*****


「シンさん、本当に良いんですか?」

「ん?」

「私たちのパーティに加わっていて」

「嫌なら出て行くけど……」


心配そうな口調のシンにアスカは首を横に振ることで否定を示す。そして


「あなたなら最前線のに挑むと思いまして」

「最前線のはトップギルドだよ。僕たち《魔王の傘下》はその辺りに拘りが無いからね」

「トップギルドの中でも一番なのに?」

「リーダーの、魔王の意向だからね。無理に束縛するより自由にした方が面白いだろうって」


旦那の言葉にアスカは複雑な想いを抱く。それにシンは気づかずに辺りを見回した。


「そろそろだと思うんだけどね」

「何がですか?」

「過保護な姉妹のご登場、かな」

「姉妹?」


愉快そうにシンが言った瞬間、ざわめきが聞こえてきた。そして街の中のプレイヤーたちによる人混みが割れて


「ここにいたんだね」

「うん。全員で参加するのかい?」

「ううん。シェリ姉とマリアとアジアンとリア姉とレヴィとマモンが1パーティだよ」

「えらく豪勢なパーティだね」

「あはは」


洋紅色の髪、薄緑色のワンピースの少女はにっこりと笑って


「あれ?」


いきなり疑問の声を出した。それにシンは苦笑しながら


「エミとアヤ、ピュアホワイトは買い物に行っているよ。もうすぐ戻ると思う」


6人は6人で話し合い、少女とシンが話し合う。やや孤独を感じていると


「えっと初めまして、だよね? エミの姉のアリアです」

「同じくシェリルです。妹がお世話になっております」

「あ、いえこちらこそエミには何度も助けていただいているので」

「それと魔王、真央にもお世話になってます」

「私たちはリアルでも知り合いですので」


驚きだ。あの真央がこんなおそらく年端もいかない少女姉妹と仲良しとは……


「あ、お姉ちゃん⁉︎ シェリ姉も⁉︎」

「やっほー、エミ。どう? 戦えてる?」

「うん! ばっちり!」

「なら良し」


シェリルさんは満足気に頷いて仲間の5人の方へ戻った。そして残ったアリアさんは強気な笑みを浮かべて


「シンと同じことをしても良い?」

「構いませんが……?」

「それじゃ。やり直してくるね」

「はいはい」


何故かアリアさんが姿を消した。それにシンが呆れたように笑って


「アリアは形に拘るからね」

「そうなんですか?」

「エミに、妹に何かしら思っているんだろうね」

「……」


アスカが呆れている。するとシンの視界の端で洋紅色が揺れた。そして


「ただいまー!」

「お帰り、エミ。アヤたちも」

「ああ。準備は大体できたぜ」

「うん、問題無いよ」

「そう」


アスカが言おうかと悩んだ、その瞬間だった。その声が聞こえてきたのは。


「やぁ」


何のことはないようにかけられた声。それにアヤとピュアホワイト、そしてエミが過剰とも言えるほどに反応した。そして


「元気そうだね、みんな」

「アリア……?」

「お姉ちゃん……?」

「アリアさん!?」

「そうだよ、僕がアリアだよ」


アリアはそう言って笑って


「僕も参加させてもらうよ」


事前承諾があったので飛鳥は何の反応もしなかった。しかしそれを知らなかったアヤたちは目に見えるほどに動揺し、シンはやれやれ、と首を横に振った。そして目を閉じて


「アリア、参加って言っても手を出し過ぎないようにね」

「うん、分かっているさ。僕は手を貸す程度に留めるさ」

「それなら良いさ」


そして町から出て5分もしただろうか、空間が歪み、そこに雷が落ちた。ちなみに晴天だった。そしてそこから大きな人型のモンスターが現れた。片手斧と盾を持った二足歩行の牛だ。


「アリア」

「うん」


アリアは背中に交差するように差してある二本の剣を抜いた。黒よりも黒い漆黒の巨剣、何でも切れそうな細い剣だ。


「アリアの持っている最強の剣、《悪魔龍皇剣》とアリアの作った最強の剣、《無銘》。どちらもこのサーバーには一本しか存在しないよ」


実は入手しようと挑んで《悪魔龍皇》に敗北を喫したシンが苦笑交じりに言う。そして腰から二本の剣を抜いて


「四人も前に出ないと危ないよ」

「え?」

「前に出たほうが危ないんじゃ?」

「分かりました!」


シンの言葉に返事をしたのは三人、それを確認してシンは無言で牛に目を向けた。そこには二人の洋紅色の髪の少女がいた。


「何やってんの!?」


*****


やっぱりお姉ちゃんは凄い。ううん、お姉ちゃんたちは凄い。

何が凄いってボスの、かなり強い牛の攻撃を軽々と避けているから。避けようとしても避けられていないプレイヤーたちが次々と全損していく中、お姉ちゃんはその攻撃を受け止めたり、避けている。そして余裕を見せながら


「シェリ姉!」

「はいはい」


指示を出す。そして雷の槍が牛に向かって降り注いだ。それを盾で受け止めている牛、その懐にお姉ちゃんは飛び込んだ。そして振り下ろされる斧を紙一重で避けて


「やぁっ!」


裂帛の気合で叩き込んだ。それを見てエミは剣を抜いた。そしてそのまま走り出した。牛がアリアしか見ていない、その隙を突いて一撃を叩き込んだ。

アリアには見えている牛の体力、約20億から4が削られた。ちなみにアリアの一撃では90万程度だった。


「エミ! 危ない!」

「え」


咄嗟に駆け出したシン、その剣が牛の斧を受け止めて


「前に出過ぎ」

「ごめんなさい」

「いや悪いんじゃないんだけど……」


シンは困ったように笑いながら牛の剣を弾き返して連続して斬りつける。さらにアリアが斬り続けて


「あ」

「おっと」


斧と盾が投げられた。それはブーメランのようにくるくる回転して辺り一体を薙ぎ払った。


「ありゃりゃ、随分と減ったね」

「まったくだ」


アリアがエミを、シンが残りを庇ったおかげで四人は守られたが大半のプレイヤーが光となって消えた。そして


「ふん」

「えいっ」


レヴィとマモンの攻撃が牛の頭を撃つ。そしてその頭にエストックが突き立てられた。そして短剣で斬りつけて鞭が足を払った。そして地面に倒れた牛に


「《煉獄の霹靂》1024!」


燃え盛る雷鳴が降り注いだ。

感想や質問など大歓迎!


明日がテストなので手早くすっ飛ばす

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