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餅餅お餅

「魔王は前に出ろ。俺は少しだけ観察するから」

「分かった。早めに切り上げろよ」

「ああ」


切るだけに、とつまらない駄洒落に苦笑しながら二本のナイフをハの字に構える。そのまま巨大な餅を眺めていると


「っと」


その重量に任せてのプレス。それを避けて2本で掠り切る。深くまで切ろうとするならば確実にナイフが取れなくなる。だからちびちびとダメージを与えていると


「ん」


餅の弾丸が俺を狙って降り注ぐ。アリアほどじゃないが高めたagi任せで振り切ってナイフを地面に刺し、無理矢理減速。そのまま方向転換して


「《解放リベレ……》、いや、まだだな」


まだジャックが観察を終えていない。だったらまだ狩るには早いってことだ。とりあえず左右に揺さぶりをかけつつ切り付ける。体力は999,9999。つまり約一千万だ。それが今九百六十万まで減らした。


「アリアみたいに派手に削れないからな……やれやれ、だな」

「魔王、コアがあるかを確認したい!」

「無茶を言う!」


言葉とは裏腹に頬を緩める。そのまま低い体勢で餅の弾丸を掻い潜って二本のナイフを閃かせる。切ると言うよりは解体のような感覚で切り取っていくと


「コアがみかんだ!」

「みかんってマジかよ……分かった!


叫び、飛び込んできたジャックは高速で鎌を振るった。システムによるスキルではない。自力での連撃だ。


「やはり俺たちはスキルよりも自力の方が良いか」

「臨機応変に使えるし、威力も速度も大差ないからな」

「まぁ、アリアみたいに魅せる感じの技は無いがな」

「アリアは……ワザワザ技名つけて声に出しているからな」


ジャックは苦笑しながら高速で餅肌を削り取る。深くまで刺せないからちまちまといくしかない。


「魔王、全力のスキルでどれくらい削れると思う?」

「コアが少し露出するくらいか?」

「オッケ、なら俺がぶち込むからコアをやれ」

「分かったさ」


両手のナイフを逆手に握ってその時を待つ。そして


「おらよ!」


思いっきり振り下ろされた鎌が餅を弾き飛ばす。しかし持ちはその鎌を捕らえようと伸びてくる。だが


「《解放ディスチャージ》!」


その鎌が漆黒に染まる。そして伸びてきた餅が触れた瞬間消し飛んだ。闇属性の特徴、消し飛ばしだ。炎は継続ダメージ、水は回復、風は切れ味、地は硬さ、雷は速度、光は……なんだったか。アリアに聞けば分かるな。


「っとと、魔王!」

「ああ! 《解放リベレイト》!」


二本のナイフがその力を解き放つ。吹き上がる劫火と何もかもを消し飛ばす暗黒の剣身。そのまま餅のコアを斬りつける。続けてコアへ連続して斬りつけてダメージを稼ぐが


「餅の中に隠れるのよ!」

「閉じ込められた! ……はっ!?」


条件反射で言っていると確かに餅の中に閉じ込められた。そのまま圧殺されそうになるが二本の短剣のおかげで隙間を作れた。


「ジャック!」

「お前何やってんだよ!?」

「レベルやステータスじゃどうにもならん!」

「知らねえよ!?」


その後、何とか餅の中でもがいてコアまで辿り着いて二本のナイフをコアに刺して一息吐く。圧殺しようとすればナイフが深く刺さりーー


「何とか倒したか」

「お前途中から餅の中で姿がさっぱり見えなかったけどな」

「そうか……悪いな」

「おかげでどこを攻撃して良いのか分からなかったんだけどな」


ジャックの言葉に苦笑しながら辺りを見回す。そしてため息を吐く。


「今の、ボスじゃないのか」

「みたいだな……群れの中に突入したか?」

蒲公英タンポポみたいに流れてきたのかもな」

「そんな素敵なものじゃないだろうよ」


さっきまで苦戦していた餅がたくさんいた。それを眺めてため息を吐いた瞬間


「お」

「レヴィか」


餅の表面に穴が開き、その穴に続けて弾丸が飛び込んで行った。そして餅が光になって消えていった。


「あの狙撃ってどれくらいの技量が必要なんだ?」

FファーストPパーソンSシューティングはしたことがないから分からん」

「そうか」

「紙一枚のずれも許さない程度の狙撃って言っていましたよ」


そうか、と言いながら振り返って


「アリスも餅狩りか?」

「アリアとマモンからの依頼で。レヴィもですよ」

「どんな?」

「マモンがおかきやあんころ餅を作りたいから狩れるだけ狩って来い、と」

「《料理》スキルを習得していたのか」

「はい」


アリスは鞭を振るって餅を縛り取る。餅の粘着力を利用してそれを地面に何度か叩きつけて全損させて


「私だってカーマインブラックスミスの店員ですから」

「正社員か?」

「アリアはバイトと正社員の区別って必要なの? って言っていましたよ」

「なら全員正社員で良いだろ」


既にカーマインブラックスミスは上に3周したところにある《星の見える丘》から移店している。現在は最前線の街、《天高く聳える塔群》にある。SFなどであるたくさんの尖ったビルが並んだような町だ。ちなみにビル間に通路がたくさんある。そして地面と呼べるものは無い。


「結局アリアの指示で全員、《料理》スキルを習得しましたよ」

「へぇ?」

「素材が足りないからって頼まれました」

「ってことは?」

「採取系スキル全てアリアがお金を出して買いましたよ」

「ホワイト企業だな」

「まったくです」


アリスは苦笑しながら餅を何体か纏めて縛り付けて


「《サンダーウィップ》」

「おお」

「香ばしいな」


鞭が雷になり、餅を焼く。磯辺焼きが食べたくなるような匂いだ。後でカーマインブラックスミスに行くか。


*****


「アリアちゃん、磯部焼き3皿だって」

「ほいほい」

「ちなみに魔王とジャックとアリスだよ」

「アリスって今シフト入ってないっけ?」

「1時間後ね」

「そっか」


シフト表を確認するとその通りだった。ちなみに前日に書き込むのがカーマインブラックスミスのルールとなっている。


「ん~」


醤油が焦げる香ばしい匂いに気分が良くなる。そのまま餅が膨らんだのを確認して網から皿に移す。そのまま海苔で巻いて


「ヘイ、お待ち!」

「サンキュ」

「ありがとう」

「どーも」


ジャックと魔王、アリスに出して一息吐く。しかし中々店内が混んでいる。


「最前線でも結構いるもんだね」

「そうでござるな」

「リョーマは何かあるの?」

「そうでござるな……拙者は防具を依頼するでござるよ」

「ほうほう。素材は?」

「天龍素材でお願いするでござるよ」


そうなのだ、今まで天龍とか武器の名前に付けていたら本当に《天龍》ってモンスターカテゴリーが出来ちゃっていた。しかもさりげなく強いらしい。他のプレイヤーたちにとってみれば。


「リョーマにとって天龍は強かった?」

「うーむ、別段感じなかったでござるよ」

「そっか。やっぱりね」


今着ている道着状の防具を作る依頼を受けて二階にある鍛冶屋部屋に行くと


「あら、アリアちゃん」

「シェリ姉……? 何か探し物?」

「うん、何かアクセサリーが欲しいなって」

「それは六階だね」


一階が料理店、二階が鍛冶屋、三階が武器屋、四階が防具屋、五階がアイテム屋、六階がアクセサリー屋となっている。20Gで買った。えっと……20,000,000,000。つまり200億だ。持ち金の10分の一弱が消えた。

磯辺焼き美味しいよね


ちなみに実は最終回が近いって知っていたかい?

知らなかったならお気の毒様!

と、誰かが頭の中で言っていました

まぁ、最終回近いんだけどね、そんなハイテンションじゃない

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