クリスマスイブ
一次選考落ちました
「ジングルベールジングルベール鈴がー鳴るーのジングルって何?」
「歌じゃなかったの!?」
「うん」
シェリ姉の言葉に頷くとため息を吐かれた。そして
「今日はクリスマスイブだからねー、テンション上げて行くよー!」
「おー!」
「……おー?」
マモンは元気よく、レヴィは困ったように頷いた。とりあえず作った《クリスマスケーキ》を切り分けて
「うん、美味しいねぇ」
「ありがと。レヴィもシェリちゃんもどうぞ」
「僕らの分はあるかな?」
「あるよ。マリアたちの分のお皿お願い」
「エミリアたちのもいるわよね?」
「あ、うん。そうだね」
って事で切り分けたは良いんだけど
「なんでこんなに大きくしちゃったのかな?」
「さぁ……」
天井スレスレまである高いケーキは切るのも一苦労だった。ついでに根元が凄く太い。ちなみに謎の力が働いて絶対に倒れはしない。そしてその結果が
「スキルは……使わないで良いよね?」
「使ったら弾け飛ぶじゃないの。普通に包丁で切りなさいよ」
「包丁、ねぇ」
この長さ3メートルにも及ぶ包丁……素材は金属だけだ。ダークミスリルを基調にシャインミスリルを散りばめた夜空のような色の剣だ。
「……包丁ってなんだろうね」
「刀が人斬り包丁だから刃物全般よ」
「それだったら昔は筆箱の中に包丁があったんたね」
「そうよ」
シンとエミリアの会話に苦笑しつつ刃を入れる。そこでふと気付く。果物がぎっしりしている。
「マモン……まさか」
「そのまさかよ。生地と果物が交互に層を作っているわ!」
「パネェ」
「どんだけ金かけたのよ……」
「んー、50Mくらい?」
「安いね」
「「「高いね」」」
むぅ、高いのかな? レヴィはともかくシンとエミリアは金欠じゃないと思うけど……
「ま、アリアの金銭感覚がおかしいのは周知の事実だし」
「そうかなぁ」
「リアルでもね」
レヴィの言葉に首を傾げながら真っ直ぐ切り下ろして……包丁を引き抜く。これ、思っている以上に疲れるよ……
「マモン、縦切りだけ?」
「うん、それが一番良いかなぁ」
「ちなみに食べきれる自身は?」
マモンは高笑いをして
「あるわけ無いでしょ」
レヴィとエミリアの突っ込みを喰らって床に倒れ付した。それを眺めてため息を吐いて
「五センチくらいの高さに切りたいなぁ」
「それは絶対にダメよ!」
「おぅ!?」
珍しいマモンの主張の結果、また胃もたれした。
*****
「それにしてもこの仕様は驚いたよねー」
「プログラム組む方は大変だったがな」
「そうなんだ」
全員の装備がサンタ服になるという12月24日限定の運営からのお遊びだ。とりあえず
「シエルは何しているの?」
「ん、いやマモンになんか作ってもらおうって思ってんだが……あそこのケーキが目に入って」
「あー、あれかぁ」
あの大きなケーキ、8等分してその一つをみんなで分けて食べたんだけどそれでもかなり余った。と、いうか満腹になった。いつの間にか限度無しで食事は出来なくなっていた。
「シエル、悪いことは言わないから食べ切れなかったほうから食べなよ。絶対に死ぬから」
「甘いケーキ食って死ぬなら本望な気もするんだが……ま、了解」
食べかけ何だけど形が崩れていないケーキをシエルが食べて
「美味いな」
「ほうほう」
「なんつーか果物の酸味と生クリームの甘さがアレしてる」
「アレって一体何かな?」
「アレはアレだよアレ」
「あー、うん、アレかぁ」
マモンの作ったコーヒーをなんとブラックで飲んでシエルはケーキを食べ続けている。そして
「2048年もそろそろ終わりか」
「ん……そうだね、そろそろだね」
「魔王、今年はどうするんだ?」
「忘年会か? リアルでやるのも良いが……どうする? したいか?」
食べきれないのでギルドホームに持ってきたケーキをみんなで食べていると魔王がそう言った。反対意見は無い。だけど
「僕たち、ここにいても良いのかな」
「出るタイミング逃しちゃったし」
「タイミングを逃す?」
用語が聞こえた気がするけど違うってマリアたちに宥められた。そして
「マリアたちはギルドに所属しているのか?」
「え?」
「いや……ギルドに所属しているプレイヤーが他のギルドのギルドホームに入るにはそのギルドのリーダーのシステム的許可がいるんだが……俺が出した記憶が無いんだよな」
「「あ」」
2人が顔色を変えてメニューを開いて自分のステータスを開く。そこには所属ギルドが乗っているんだけど……二人の顔色は優れない。そして
「《動物園》から……追い出された!?」
「え!?」
「ううん違う……もう、《動物園》が存在していない!?」
「ええ!?」
「……トマトたちもしばらくインしていないみたいだし……」
「同じ学校じゃなかったの?」
「もう冬休みだし」
確かに今日は日曜日。つられて22日が終業式だ。だけど
「冬休み中に部活は無いの?」
「うん……あ」
「どうしたの?」
「トマトたち、受験時期だ」
*****
「高校かぁ……」
「少し怖いね」
シェリルの言葉に頷いているとアリアが背中を突いて来た。振り向くと
「高校生になったらどうするの? 部活とかに入るの?」
「ん……まだ、考えてないかな」
「そっか。んー……スポーツとか?」
「考えてみるよ」
アリアの頭を撫でているとふにゅふにゅしてきたので
「もう寝たら? サンタさん来ないよ?」
「サンタが親だって知ってるもーん……ふぁぁ」
「そっか。それでも早く寝た方が良いよ」
「でもケーキが残っているし……」
「大丈夫だよ、ちゃんと切り分けてあるんだから」
「……今年中に食べきれると思えないくらいあるからね」
アリアの言葉に頷いてよしよし、と頭を撫でる。すると微笑ましい視線が向けられた。
「眠ぅ」
「寝なさい」
「えー、でも」
「明日もあるでしょ」
「はーい」
シェリルに諭されてログアウトした。それを見送って
「それで本当に忘年会をするのか? 場所の確保もあるんだが」
「それはまたうちで良いんじゃない?」
「だが「少なくとも29から3までは休みの予定だから」
白織屋だったっけ。確かにあそこなら入れそうだが……
「遠くから来る人も多いんじゃない?」
「実は九州北部のメンバーしかいないんだ。意外だろ?」
「それは……意外だね」
「基本福岡在住だしな」
「そっか」
魔王の言葉に頷いてーーふと顔を向けた。所在無さげの2人だ。魔王に顔を向けると何故か頷いて
「マリア、アジアン。お前たち、《魔王の傘下》に入らないか?」
「「え!?」」
「《動物園》が復活するまでの間でも構わない。カーマインブラックスミスでバイトしているのなら構わないだろう」
「……良いんですか?」
「ああ。アリアも喜ぶだろうしな」
父親かよ、とも思ったが彼ら全員がアリアの家族のようなものだ。マモンたちはアリアの情操教育に関わっているのだろう。良い意味でも悪い意味でも。
「マリア」
「うん」
2人は一瞬で会話を終わらせて
「「お断りします」」
「そうか」
「まだ何故《動物園》が無くなったのか分からないのでなんとも言えません」
「そうか、分かったらアリアにでも言ってくれ」
「「はい」」
一次選考に落ちたからと言ってやる気を失ったりはしません
次回も続きますし続けます
クリスマス当日は絶対に書かないって決めました
なのでオフ会兼忘年会か大晦日、正月のどれかになると思います
活動報告を見ていただけると幸いです
そちらで決意などの心情を吐露する予定なので




