「乗りな、嬢ちゃん」
「やっと戦えるんだ!」
「アリアちゃんがトリップしている間に作戦会議するよー」
僕は楽しみで笑みを止められない。そしてーー
『10』
「君、セプトで良いのかな?」
『9』
「あんたは……ありあ?」
『8』
「うん、僕はアリアだよ」
『7』
「それで、何の用だ?」
『6』
「僕は君を倒したい」
『5』
「俺もだ」
『4』
「そうか、嬉しいよ」
『3』
「こっちこそ」
『2』
「全力で倒す!」
『1』
「俺のセリフだ」
『START!』
地面を蹴ったのはどっちが速かったのだろう。口を開いたのはどっちが速かったのだろう。それはきっと同時だった。
「アークリープ!」
「デプスストライク!」
僕が懐に飛び込み、彼は踏み込み片手斧を下から振り上げる。一撃を止められた。だけどこのスキルは2連撃。なのに
「うわわ⁉︎」
「デプスインパクト!」
吹き飛ばされたあげく接近からのスキル。それを慌てて剣を盾にしてダメージを軽減。再び吹き飛びながら体力を見ると
「残り3割⁉︎」
慌ててポーションを取り出して柄で殴り割る。そして飛沫を浴びて
「削りきれなかったのを悔やませてやる!」
*****
今回のフィールドはいくつもの部屋に別れている。そしてそこの部屋で立っているプレイヤーが1人になると扉が開く。つまり早く倒して他のみんなの援護に行くのが重要。
「スプレッドボムアロー!」
「ぎゃぁぁぁぁぁ⁉︎」
「女の子がそんなはしたない声を出すんじゃないよー」
私は開いた二つの扉を見て……音がする方に向かう。するとそっちの扉から転がるようにして剣士が現れた。その子は背後を気にしていたから
「どーん♪」
「ぅえっ⁉︎」
「アークスラッシュ!」
サッカーボールのように蹴った直後、その背後からの2連撃はきっちり削りきった。
「どう?」
「どうと言われても今のは相性が良かっただけです」
「そっか。後の5人を探しに行くよ」
「アリアも?」
「アリアちゃんの暴走を抑えるため」
*****
「リープブラスト!」
「アックスパリィ!」
「アークスラッシュ!」
「アックスパリィ! ぐっ⁉︎」
僕のスキルはセプトの片手斧での防御を突破した。そう思った次の瞬間
「シールドバッシュ!」
「ソードリバーサル! スターダストスラスト!」
「くはっ⁉︎」
3連撃を盾できっちりと受け止めたが余波でダメージを受けるセプト。その数値はバカにならない。
「あんた、何者だよ」
「僕はアリア、最強だよ」
「……魔王と呼ばれるプレイヤーに挑んだ大馬鹿者って聞いていたけどな……」
「うん、最強は僕の場所だからね」
雑談は終わりだと言うように鉄の剣を構える。そして
「次の激突が時間的にも最後だね」
「……かもな」
片手斧を構え、盾を下げるセプト。どちらも動かない。先に動いたら負ける。そう思ったから。そして
「アリアちゃん!」
「なっ⁉︎ く、デプスインパクト!」
「ソードリバーサル!」
それは一度見たスキルだ。だから受け流して
「スターダストプリズン!」
僕の放った4連撃を彼は恐るべき反応速度で盾と片手斧で防ぎ
「デプスストライク!」
「アークブラスト!」
2連撃で一撃を食い止め
「デプスダブル!」
「スターダストブレス!」
2連撃を6連撃で打ち破った。
*****
「えへへ〜」
「ねぇ、アリアがものっそい笑顔なんだけど」
「気にしたらダメな気がする」
「次に勝ったら優勝かぁ」
「……あ、これは負けかな」
僕はマモンの言葉に正気に返る。そして
「負け?」
「次の相手の試合、見てたらポーションを仲間が投げつけて回復させつつ重戦士並べだ。各個撃破が出来ないこのパーティじゃきついよ」
それに
「軽く見積もっても防御力100超えてるから一撃じゃやれないし戦い方も車輪陣、勝てないって思うけど?」
「1人が前でダメージ受けたら下がって投げつけられる……統率の取れている良いパーティだね」
僕は鉄の剣の耐久に目を細める。半分以上ある。だから問題無いはずだ。なのに嫌な予感がした。
*****
「キリが無いよ!」
「ほらほら、諦めないでどんどんやっちゃおー!」
「やれてないからキリが無いって言ってるんだよ⁉︎」
マモンの矢は確実にダメージを与えている。僕も、きりたちも。それなのに投げ続けられるポーションは尽きそうにない。
「どれだけのポーションを量産したんだ!」
「あー、あのね、アリアちゃん」
「何?」
「多分買ったんだと思うよ?」
「むぅ」
「多分アリアちゃんのオークションで」
「僕が原因だった⁉︎」
僕は周囲からの責めるような視線を無視して
「あなたがポーションをオークションに出品していたアリアさん?」
「え? 女の人?」
「何よ、女が鎧を着てたらダメ? 鉄兜はダメ?」
「ううん、似合っているよ」
「それはそれで傷つく……」
鎧の重戦士が落ち込んだような声でポーションを仲間にぶち当てる。うん、側から見たら少し複雑だ。
「……マモン、全力でやるから援護よろしく」
「えへへ、頑張っちゃおうかな。ヘブンススプレッドボムアロー!」
3カテゴリーを複合した矢は天高く飛び、重戦士たちに降り注ぐ。そして足場を崩し、ダメージを与えている。そこに
「スターダストブレス!」
「あ」
確実に削り取るための6連撃はオーバーキルだった。しかし今の間に他のメンバーは回復しきっていた。だから
「きり!」
「ファイアーブレス!」
広範囲への連続ダメージを与える炎。そして
「アークスラッシュ!」
「デュアルスピア!」
二人が続いて
「うーん……見つけた」
マモンは鋭い目で矢を放ち、ポーションをはたき落としていく。それに驚きの声を漏らす重戦士に
「スターダストブレス!」
6連撃で確実に削り取って行った。
*****
「優勝して1Mかぁ、少ないね」
「うん、オークションと同じくらいだ」
「まぁステータスポイントとスキルポイントも手に入ったから良いね」
「そうだね」
私はコーヒー(甘口)の缶を自販機の隣のゴミ箱に捨てて
「きりたち、遅いね」
「アリアちゃんが早いだけだよ」
「私より早かったマモンは?」
「提案者が最初なのは普通だよ」
大学生のマモンは僕の家の近くに住んでいる。と、言っても3駅離れているけど。
それにしても
「やっぱり車は予想外だと思うよ」
「アリアちゃんは何回か乗っているから知ってるからね、初対面の時に目一杯驚かしたいんだよ」
「悪趣味……きり、こっち」
僕は手を振りながら歩いて来た3人に手を振り返して
「乗りな、嬢ちゃん」
「「「え?」」」
「乗りなよ」
僕は助手席に乗り込んで
「マモン、サングラスは外しなよ」
「えー? 雰囲気って大事だと私は思うよ?」
「だとしても中学生3人には恐怖しか与えないよ」
「アリアちゃんは?」
「素顔のマモンの方が良い」
僕の言葉に笑顔になったマモンはサングラスを外して
「シートベルトはした?」
「あ、はい」
「大丈夫です」
「それじゃー、レッツゴー!」
マモンはギアを切り替えてアクセルを踏む。
今だに車が現存している。それは車にとある設定を組み込めるようになったからだ。ある条件下で自動で止まる、それだけで交通事故はぐっと減った。
「うん、やっぱり祝勝会は必要だよね」
「私はそう思わないけどね」
タイトルは印象に残ったセリフ
次回からこのノリかも
とりあえずマモンはノリの良い大学生




