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天秤にはかけられない者

「やっほ、ツゲオ」

「おはよう、アリア」


朝の通学路を手を繋いで歩いていると、アリアは何か言いたそうに僕の方をチラチラと見る。向こう(ソーニョ)の方では堂々と言うんだろうなぁ……そう考えるとまるで二重人格のようにも感じた。


「ねぇ、ツゲオ。憶えているかな?」

「……何を?」

「勝ったらキスするって約束」

「……うん」


少し恥ずかしいのか、アリアの頬は赤くなっている。きっと僕もだ。


「ほらほら、カモーン」

「え?」

「え?」

「……僕から?」

「うん、今度はね」

「……」


そう言えばあの時はアリアからだった。そう思うと確かに僕からするべきだと思う。だから少し屈む。僕よりアリアは小柄だから。


「目、閉じてくれると助かるな」

「うん、分かったよ」


アリアが素直に目を閉じて、唇を突き出した。そしてーー


2人揃って遅刻しましたけど何か?


*****


「にょほほほほ」

「うわ、気持ち悪」

「酷い⁉︎」

「だってマジでキモいんだから」

「……きりの意地悪」

「今言う言葉じゃないよねそれ」

「かもね」


言葉のチョイスを間違えたかもしれない。そう思いながら机に突っ伏す。それに席替えで前の席になったきりはため息を吐いてお茶を飲んだ。そして


「アリアってさ、江利先輩とキスしてたじゃん」

「……それが?」

「今朝もしたんでしょ?」

「何言ってんのさきりそんなわけないじゃんあははどうしたのさ」

「したのね」


あっさりとばれてしまった。私の演技は完璧だったはずなのに……! まさかきりは人の心を読めるの⁉︎


「でさ、江利先輩ってどこ受験するのかな?」

「……」

「それともエスカレーターかな?」

「……」

「アリア? 起きてる?」

「……眠ぅ」

「あっそ。次地理だから寝るかもね」


きりの言葉に頷いて窓の外を眺める。前はツゲオを見ることが出来た。なのに今は


「シェリ姉かぁ……」


別に悪いわけじゃないしむしろ良いんだけどなんだかがっくりくる……っていうかあの2人同じクラスだったんだ、今知った。


「うー……むむむ⁉︎」


シェリ姉がツゲオと何か談笑している。若干嫉妬したその時、2人は同時に私に手を振った。振り返した、満足。


*****


「で、文化祭の準備の話し合いをするんですか?」

「ああ」


先生の言葉に内心ため息を吐きたいのを堪えて男子の学級委員と一緒に教壇に立つ。そして男子の方はデジタル黒板の方に体を向けた。つまり私に司会的なことをしろと。


「……何かしたい事があるなら言って」


教室全体にそう言うと意見がポンポン出てきた。それを男子の方が表示していくのを眺めてため息を吐く。いつの時代も内容はシンプルだ。


「喫茶店とお化け屋敷か。定番だな」

「いやいや、例外を求めての中でのあえての定番こそが逆に注目されると思います」

「そんなもんかね……」


きりの言葉に先生は首を傾げて


「まぁ、任せる」


今日は11月17日。世界大会から2日が過ぎている。ちなみに文化祭は終業式の前日、12月23日だ。


「……喫茶店とお化け屋敷、どっちが良いか多数決で決めたいと思います」

「えー」

「多数決って少数意見を殺すじゃん」

「他の方法にしようよー」


舌打ちしたくなる気持ちをぐっと堪えて


「……なら先生が勝てばお化け屋敷、私が勝ったら喫茶店とします」

「なにそれ」

「意味不過ぎ」

「意見があるなら言ってください。その人に全責任を負わせますけど」


私の言葉に文句は消えた。そしてじゃんけんは負けた。お化け屋敷だ。


*****


「面倒だなぁ……」

「お疲れ。でも頑張っているんでしょ?」

「べっつにー」

「そうなんだ」


ツゲオは苦笑しながらお弁当の卵焼きを齧って


「美味しいね」

「ねって言われても私、食べてないし」

「そうなんだ」

「ツゲオの分しか作ってないもん」

「……」


顔を真っ赤にしたツゲオに微笑みつつお肉を食べる。美味しい、そう思いながら食べていると


「ふぇっ⁉︎」

「ん? どうしたの?」

「どうして…………直美が?」

「OBだからじゃないの? 文化祭のボランティアとかで」

「あー、なるへそ。でもなんで直美なのかな、お母さんたちじゃなくて……?」

「お父さんはお母さんって間違われるからじゃない?」

「なるなる。確かにお母さんよりは直美の方が話しやすいからね」


苦笑しながらお昼ご飯を食べ終えてーー


「それじゃ、ごちそうさま」

「ごちそうさま。今日も美味しかったよ」

「こっちも」


*****


「アリア、ポーションの在庫が……アリア? どうしたの?」


ふとアリアに報告をしようと思い、畑に出た。そこではアリアが地面に座り、月を眺めていた。その表情は何かが抜け落ちたかのように虚ろだった。


「……マリア」

「どうしたの? アリアらしくないけど」

「……分からないよ」


虚ろに微笑んでアリアは立ち上がった。そのままふらふらと幽鬼のように歩いて


「何かあったの?」

「……マリアはさ、アジアンが好きなんだよね」

「え」

「好きなんでしょ?」

「そうだけど……?」

「シンが好きで好きでたまらないんだけどさ……分からなくなっちゃったんだけど」

「そうなの?」

「うん、分からないんだ」

「何が?」


アリアはらしくない笑みを浮かべて


「距離感」


*****


「うーん?」

「それは……なんなの?」

「思春期……うーむ?」

「厨二病……じゃないの?」

「「「それだ!」」」


マモンたちの反応に押され、驚いていると


「アリアちゃんは厨二病……そうね、そうなってもおかしくない頃ね」

「厨二病、今さらって感じもするけどね」

「リアルのアリアちゃんは相変わらずだったんだけどね……こっちでは厨二病、かぁ。やっぱりアリアちゃんにとってはこの世界がリアルなのかもね」


実のところ、妹の様子がおかしいのはいつも通りだと思っていた。しかし言われてみると確かに違和感があった。そして思い当たる節もあった。


「マモンなら知っていてもおかしくないんだけど」

「んー?」

「アリアちゃん、そろそろ誕生日なのよね」

「「え」」

「あー、そうね……うん、大体分かったかな」


マモンの言葉に目を向ける。私たちが知らないアリアちゃんを知っているマモンに目を向けて


「教えて欲しいな」

「……アリアちゃんはきっとシンに一番誕生日を祝って欲しいんだと思うの。それこそ一日中一緒にいたいくらいに……」

「え……?」

「家族よりもシン、それがアリアちゃんを混乱させているんだと思うの」

「……」


それは私じゃどうにも出来ない、おそらくそれが出来るのは本人たちだけ……だったら私たちが手伝わないとね。


「アリアってリアルのシンと恋人関係なの?」

「うん、そうなんだよ」

「もんの凄い仲良いんだよ」

「見ているだけで嫉妬するくらいにはね」


マリアはそう言うと笑みを浮かべて


「だったらみんなで盛大に祝わないとね」

「「「あれ?」」」


何か結論がおかしい気がした。


*****


「……11月17日、かぁ……」


一緒にいたい人がいる。だけど私はツゲオと家族、どっちかを選べない。だからこそ、今こんなに悩んでいるんだろうなぁ……


「はぁ……」


ため息を吐いても空に輝く月は何も答えてくれなかった。

ごめん、三章終わってない

多分三章の終わりは予想できたと思います


次回はアリアちゃん視点は無い予定

そしてツゲオ、いちゃつき過ぎだうちの娘から離れろ

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