決勝前々日
「ぬぼぉ⁉︎」
「え⁉︎」
脚立の上でバランスを崩し、床に落ちそうになる。なんとか床に両手足をついて着地したけど開いた棚から色々降ってきて潰された。
「へるぷみー」
『ちぃ!』
「ありがとー、ひよちゃん」
指を伸ばすと甘噛みされた。もう片手で頭を撫でていると
『うぉーーーーん!』
「にゃぷっ」
扉を開けて飛び出してきたルフに踏み潰された。それにシンが慌てている。そしてルフは気付いたのか軽やかな身のこなしで
「あ、逃げた」
「だね……大丈夫?」
「うん」
「なら良かった……アリア」
「ん?」
「世界大会、テイムモンスターは使わないの?」
「使うよ。でも使う価値のある相手がいなかっただけ」
*****
またしてもテレビの特集だったり久々に現れたセスタスの実況動画に出演していると当然有名プレイヤーになっちゃう。まぁ、元から少し有名だったけどね。
「ねぇ、シン」
「なに?」
「僕、重くない?」
「軽過ぎるよ。ちゃんとご飯食べている?」
「うーん、ちゃんとしたご飯って言われると難しいかも」
玉ねぎの活け造りなんてちゃんとしたご飯じゃないと思う。そうシンに言うと苦笑された。だから体重をかけると
「軽い軽い」
「むぅ」
「そこのラブラブカップル、そろそろ見てるこっちが恥ずかしいんだけど」
「えへへ〜」
シンのあぐらの上に座ってふにゃふにゃする。そのままシンにもたれかかる。
「んにゃ〜」
「猫、好きなの?」
「うん」
「そうなんだ」
「ちっちゃければちっちゃいほど好きだよ〜」
シンの胸板に頭を押し付けてみたりしてしっくりくるポイントを探すけど無い。だからため息を吐きつつ
「ぎゅーってして」
「え」
「ぎゅー」
「え⁉︎」
「アリアは至福の時幼児退行するからしっかり対応しなさい」
レヴィの言葉にシンが口をパクパクさせている。でも言葉が出ていない。それをおかしく思っていると
「アリアちゃん、あんまり困らせちゃダメよ」
「むぅ」
「むぅじゃない。ダメよ」
「はーい」
レヴィは椅子から立ち上がって銃を抜いた。XIIIの刻印が入った銃、《ハーディス》だ。そしてそれを僕に向けて
「アリア、少し重く出来る?」
「出来るけどどうするの? 何上げるの?」
「strかdexでお願い」
「はいはい……それよりもレヴィ」
「分かっているわよ」
お店の方からレヴィの銃に目を向けているプレイヤーがいる。だからさっさとそれを受け取ってそのまま奥の部屋に行く……前に
「そこの君、レヴィに何か用?」
「え!?」
「見つめていると誤解されるよ」
鍛冶屋部屋に入って鍵を閉める。そのまま《ハーディス》の引き金の隙間に指を入れて回転させて
「ばーん」
なんとなくやってみて……恥ずかしくなってすぐに止めた。
*****
「マモン、一体何をしているんだ?」
「ベル……ちょっと探し物よ」
「手伝おうか?」
「……そうね、お願いしようかな」
《ダークトレント》を蹴り倒して一息吐く。そのままドロップアイテムの中に《黒樹の矢身》があるのを確認して頷く。そのまま《感知》と《探知》の範囲にベルしかいないのにため息を吐いて
「それで、ベルは何をしているの?」
「マモンを手伝おうかって思って」
「余計なお世話よ……基本的に私たちは不干渉でしょ」
「男組みはな。お前は女組みの仲でも異質だが」
「異質って……他に言いようは無いの?」
「異質で異常で不思議で違和感だよ」
「あっそ」
《真にゃんにゃんボウ IV》を構える。ベルはため息を吐いて
「矢の素材集めなんだろ?」
「そうよ」
初期の頃に作った矢を番えて放つ。一本の矢を放った瞬間4本に分かれて《ラージダークトレント》を射抜いた。しかし
「意外と耐久があるみたいね」
「体力じゃないのか?」
「どっちでも良いじゃない」
「確かにな」
連射する。一度に放つ矢は一本ずつ、しかし
「マモン、なんか気が立っているのか?」
「……ち」
動揺した瞬間、矢の軌道がずれた。トレント系の弱点の瘤を外して幹を撃つ。さらに続けて撃っていると
「嫌なことがあったのなら聞くが?」
「聞きたいんでしょ」
「……ああ」
ベルはそう頷いて杖を掲げた。そして
「《ウィンドスラッシュ》」
「んっ」
三本を纏めて射る。12本に分かれた矢が瘤を射抜いて……風の刃がその幹を両断した。
「ままならないことって多いよな」
「……あっそ」
「話したくないんなら良いんだけどさ」
弓を向ける。矢は番えない。でもベルは知っている。番えるのに時間はいらない、と。弦を引けば矢が番えられるのだから。
「……ち」
「撃ちたいなら撃てよ」
「分かった」
射た。それをギリギリでベルは避けて
「本気で撃つ奴がいるかよ!?」
「私ー」
「確かにそうだけどよ……踏み込んだか?」
「そう」
ベルへ向けて蹴りを繰り出してため息を吐く。続けて蹴り上げると
「《体術》スキルって地味に厄介なんだよな」
「そう?」
「最速だからな」
その言葉に頷いて掌で打つ。そして
「何も分からないんだよ」
「え」
「分かっていたことが分からなくなっちゃったの」
*****
「アリス」
「エミリア……? どうしたの?」
「少し暇だから」
「暇だからなんなんですか……?」
苦笑しながら体を向けると
「ちょっと模擬戦でもしない?」
「嫌ですよ。私を使ってスキラゲですか?」
「ちっ」
エミリアは舌打ちをして刀を抜いた。金と銀の刀身が成金のようだ……
「それで攻撃してきますか?」
「別に。ただ単純にスキラゲするだけ」
「……はぁ」
「なんてね、冗談よ」
そう言ってあっさり刀を鞘に収めた。なんなんですか本当に……
「こんな事をするくらい暇なのよ」
「……呆れた」
「何か暇つぶしの道具無い?」
その言葉の結果、カーマインブラックスミスに行って
「クリスタルウイングシンクロドラゴンで攻撃!」
「希望皇ホープの効果で無効に!」
「クリスタルウイングシンクロドラゴンの効果では開始、攻撃力アップ!」
5500のダイレクトアタックで大分ライフが減った。どうしよう、そう思っていると
「まだだ、まだ勝つ手はある!」
「アリアストラル!?」
「呼べ、ナンバーズを!」
「そのナンバーズがさっき倒されたんだけどね」
アリアの言葉にエミリアと一緒に苦笑しているとエクストラデッキをアリアが確認して
「シンクロじゃないから分からない」
「そう」
「残念ね……」
アリアはそう言ってため息を吐いて
「明後日は決勝かぁ」
「何よ、がらにもなく緊張しているの?」
「ううん、強いプレイヤーがいなかったなぁって思って。あれなら僕たち全員の方が圧倒的に強いよ」
「そうなの?」
全員の実力を知らないので疑問の声を出すとあっさりと頷かれた。そして
「僕たちは全員で最強ギルドなんだからね」
アリアの言葉にエミリアとともに苦笑していて……ふと気づいた。
「私、まだ《魔王の傘下》に加わっていても良いの?」
「え?」
「追い出されるかなって思っていたんだけど」
「まさか。僕たちは加入条件なんて出していないよ。ただ僕たちが誘うだけ、アリスのときみたいに」
ちょっと嬉しくなって
「それではこれからもよろしく」
「僕こそ」
シン、お前に娘はやらん!
前々日ですが前日は飛ばします
ふはは、何したいんだ私
次回は決勝戦となります
アリアとエカテリーナの勝負は最終戦なので次回は多分出ません
次回予定はシェリル、エミリア、シンの3人から2人くらいかな?
誰かネタプリーズ
ネトゲとかであるイベントでも良いから
そして感想プリーズ




