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《無銘》

「エカテリーナたちの試合、観る?」

「別に。どうせエカテリーナたちが勝つもの」

「だねー。万が一にもありえないし」


僕の言葉にレヴィとマモンがそう言ってログアウトしようとする。そして


「エミリアたちはまだ残るの?」

「うん、誰と戦うか分からないからね」

「そう」


僕たち四人は相手を指名した。もっともエカテリーナたちがそれに乗ってくるかは分からないけど……とりあえず


「それじゃ、また後でね」


カーマインブラックスミスに戻ると絶賛中継中だった。少し目を向けると僕の作品、《春雷》が相手プレイヤーを一撃で刺し貫いた瞬間だった。さすがだなぁ、と思いながら奥の部屋から出ると


「あ、アリア」

「ただいま、マリア。アジアンは?」

「宿題があるからって早めに落ちましたよ」


まだ夕方の5時半だ。でもアジアンが高校生かもしれないからなんとも言えない。とりあえずバックヤードから出ると


「おお!」

「アリア!」

「二回戦突破おめでとう!」

「やーやー、どーもどーも」


お客さん達が僕に声援を投げかけた。それに応えていると


「カレーくれ!」

「俺も!」

「ほいほい、カレー2人分ね。他は?」

「俺もカレーで」

「私も」

「4人前ね」


最初っからそう言いなよ、と思いながら台所に引っ込む。そのまま野菜を斬り、作り置きのカレールーを溶かす。マモン曰く濃縮還元らしい。よく分からないけどね。


「ご飯は……うん、炊き立てだね」


ご飯を皿についでカレールーをかけて


「はい、カレー」


4人のプレイヤーが食べているのを眺めていると


「もう最低でも準優勝だろ?」

「うん、そうだね」

「凄いね」

「ベータテスターじゃないんでしょ?」

「うん、そうだよ」


お客さんとの会話をしながらスキルや装備の欄を眺める。中々経験値が入った……うん、入ったって言ってもよいよね。経験値が溢れて結晶化したけど。それはちゃんとアイテム欄にある。もう《悪魔の肝》にはならない。


「アリア、ステーキ頼む」

「私はハンバーグ」

「ほいほい」


肉料理を作っている途中、レヴィとマモンが来た。そしてお客さんたちと雑談している。仕事しなよ、と内心で思いながらステーキとハンバーグをひっくり返す。そのままお皿に乗せて出す。食べているお客さんたちを尻目に


「マモンたちも仕事は?」

「注文なーし」

「アリアが済ませちゃったみたいだし」


そうなんだ、と思っていると早速マモンに注文が入った。それにマモンが文句を言いながら台所に入った。そして


「アリアちゃんも何か飲む?」

「うん、甘いコーヒー飲みたい」

「レヴィは?」

「ブラックで」


はいはい、とマモンが返事をしてほどなく、それが届いた。そのまま猫舌なのでゆっくりちびちび飲んでいると


『にゃー』

「にゃんこ?」

「猫ね……っていうかこの飲食店に猫ってどうなのよ」

「抜け毛が無いから良いんだよ」

「そうね」


おいでー、と言うとマリアのテイムモンスターのにゃん吉がとてとて、と近寄ってきて椅子に座っている僕を眺める。コップを置いて椅子から降りるとぴゅー、と逃げられた。それに悲しくなって……あれ? 僕を見ている?


「逃げたと思ったら……追いかけっこかな?」


歩いて追いかけているとマリアと会った。そしてマリアがにゃん吉を抱き抱えて


「何しているの、白玉、アリア」

「にゃん吉と追いかけっこだよ」

「だから白玉だってば……」


黒猫なのに額に白い丸がある、だから白玉と名づけられた猫が高い声で鳴いて目を閉じた。そのまま寝ちゃったようでマリアはそっと歩いて寝かせにいった。残念だなぁ……


「アリア、少しだけ時間良い?」

「え?」

「ちょっとポーション作りの機械のオートマチック化を考えてみたんだけど」


そのまま5分ほど話、改良のめどが立ったところで解散。すると


「あら、何をしているの?」

「エミリア……別に何もしていないよ」

「そう。それならアクセサリー作るけど要望とかある?」

「売り物として?」

「アリアに売るの」


そっかぁ、と苦笑しながら考えてみる。


「agiを極限まで高めた指輪が……あー、指輪以外のアクセサリーが良いな」


指輪はエミリアから貰いたくないから……言い方が悪いね。なんて言おうかなぁ……


「そうね、指輪はシンから貰いたいもんね」

「……」

「顔真っ赤よ」

「五月蝿いやい」


ベーっと舌を出すとエミリアは微笑んで僕の頭を撫でた。そして


「あなたが義妹になるのを待っているからね」

「……うん」

「義姉ちゃんと呼んでも良いのよ?」

「……エミ姉」


リア姉はリナ姉に似ているからダメだ。とりあえずエミ姉に抱きついて


「指輪は……その、ね? まだ早いって言うか……その、ね? なんて言うか……ね?」

「はいはい、何も言わなくて良いのよ」

「……」


エミ姉は僕の頭を撫でて


「それじゃ、さっさと作ろうね」

「うん、そうだね」

「ネックレスに腕輪、ミサンガにチョーク、アミュレットとか色々作っても良い?」

「え?」

「色々と試してみたいデザインがあるし」


そうなんだ、そう思っているとエミ姉は僕の頭をぽんぽん、と叩いて


「行こ」

「うん」


エミリアの作業部屋、通称アクセサリー部屋に移動した。


*****


剣を作る、そう思ってから僕の手は止まってしまった。一体どんな剣を作ろうとしているのかは分かっている。だけどどんな素材を使えば良いのかが分からない。


「素材を多くしたら重くなるし……」


エカテリーナとの本気での勝負となれば確実に重さは弱点になる。お互いに《悪魔龍皇剣》を使うのは止めるだろう。だから最速にして瞬速、音速を超えて高速、神速で振るえるような剣を作らないといけない。それには今までに作った剣全てでは辿り着けない。重いからだ。


「……レグルス、アストライアーの素材は強いけど軽くはない。だったら……《対重力石》だ」


僕たちの靴の素材でもあるそれは軽く、本来なら雲の近くに浮かんでいるアイテムだ。加工すれば軽い素材となる。だからそれと……


「……これかな」


《悪魔龍皇》の遺品の一つでもある《悪魔龍皇の風翼》を使おう。大してアレなら重くないはずだ。だから作ってみると


「……綺麗だ」


白銀の剣身。まるでエカテリーナの《春雷》みたいに細い剣身は薄緑に染まっている。とりあえず軽く振ってみる。ひゅんひゅん、と風を切る音が聞こえる。

剣の名前は《無銘》、ステータスは《攻撃力+12500 耐久65000》、そして《agi+3000》と言う既存の装備を軽々と上回るチートのような武器だ。ちなみに《真風王龍の天魔剣》は《攻撃+9000 耐久50000 agi+1200》だ。agiにいたっては倍以上だ。


「……あれ、スロット?」


今までに見たことの無い項目があった。そこをタップしてみると


「……へぇ」


アイテム《メダル》を填め込むことによってその武器に特殊なスキルを付けれるようだ。ぶっちゃけいらない。

それはそれとして


「《解放リベレイト》」


《無銘》を眺めて呟く。すると白銀の剣身がほんのりと輝いて……仄か。凄い仄かだ。


「……《魔法吸収》、これがあってもエカテリーナには……」


勝てるね、うん。

武器の名前に《無銘》は確実に強いと思います

《無銘》は対エカテリーナ用武器であり、他のプレイヤー相手にはおそらく使わないと思います


次回は日常回、そして世界大会決勝戦となります(予定)

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