世界大会
「いよいよ世界大会だねぇ」
「そうね」
んー、と伸びをしてデバイスをかぶる。そのまま目を閉じて
「それじゃ、先に行くね」
「はいはい」
シェリ姉が部屋から出ると同時に
「リンクイン」
*****
「やれやれ、と言ったところね」
「まさかこんな事をするなんてね」
2人でため息を吐く。何の意味も無さそうなそれに……ううん、きっと私たち以外には必要なんだと思う。これらから収集できる情報は。
「レヴィ」
「全力は出さないわよ」
「なら良い」
レヴィが集まった視線の中に堂々と歩む。そのまま彼女に魔法などの攻撃が降り注ぐけど
「無駄ね」
全てを撃ち抜いてレヴィは笑う。嗤う。するとそんな目立っているレヴィへ足を進めるアリアちゃん……ううん、違う。アリアちゃんが向かっているのは別のプレイヤーだ。
「《フレアランス》128!」
決して少なくない、むしろ多いと言ってしかるべきな焔の槍がアリアちゃんに迫る。それに向けてアリアちゃんは深くため息を吐いて
「んっ」
「「「「「「「⁉︎」」」」」」」
一歩踏み出した。それだけで巻き起こる衝撃波と風圧が焔の槍を爆散させる。そして誘爆し、全ての槍が消え去った。
「エカテリーナ!」
「……?」
「come on the ours top!(僕たちの頂点に来い!)」
「……of course! (当然!)」
視線が交錯し、お互いが笑みを浮かべた。そして
「もう良いの?」
「うん、これで充分なはずだよ」
アリアちゃんは満足そうに頷いて堂々と歩む。そして入り口からさっさと出て
「危ないでしょ!」
「え、そうかな?」
「そうよ!」
マジ切れシェリちゃんにお説教されていた。いつもは怒らないのに……やっぱり緊張して気が立っているのかな?
「シェリちゃん、そのくらいで」
「……仕方ないわね」
シェリちゃんはアリアちゃんには頬っぺたから手を離し、ギロリと睨んだ。それにアリアちゃんは両手をどうどう、と馬を宥めるようにして
「あびゃぁぁぁ⁉︎」
「一度本気で後悔したほうが良いと思うのだけど」
アリアちゃんが腕ひしぎされて悶絶している。おっぱいが無いからあんまりエロくない。
「それにしても選手顔合わせね、喧嘩になるって分かっているでしょうに」
「対策練ったりするんじゃない? チーム戦だし」
「勝ち抜きじゃないから良いわね」
全国大会決勝で活躍出来なかったレヴィの言葉にあはは、と笑うアリアちゃん。そして
「トーナメントの組み合わせは決まったかな?」
「みたいだね」
予定時間ちょうど、電光掲示板のように表示されたそれを眺めると
「ロシアとは最後ね」
「まずはアメリカかぁ」
アリアちゃんがそう興味なさそうに呟いた瞬間、向こうから厳つい男4人と女2人が歩いてきた。そしてアリアちゃんの前で足を止めて
「ここは子供の遊び場じゃないぜ?」
「怪我しないうちに帰んな」
「お嬢ちゃんには酷だぜ?」
「てぃ」
男たちの言葉にアリアちゃんが床を蹴って飛び上がり、男の顎を殴り上げた。そのまま空中で蹴りを放ち、ボーリングみたいに6人を倒した。
「さっさと行くよ」
「そうね」
「良いの?」
「向こうから喧嘩売ってきたからね」
さっさとそのまま私たちの待機部屋に行く。そこでため息を吐く。
「私の記憶が正しければさっきの、アメリカチームよ」
「ふーん、じゃあ全力で叩き潰さないとね」
「アリアちゃん……」
「怒っているの?」
「多分子ども扱いされたから怒っているんだよ」
「シンの言うとおりだよ」
アリアちゃんは深くため息を吐いて椅子に座った。そしてにやりと笑って
「一戦目、僕が出るよ」
*****
フィールドの中央で回転しながらカウントする秒を眺めつつ装備の剣をすべて確認する。しかしどれも抜かない。それに相手の男はイラッとしたような表情になった。
「何か文句でもあるの?」
「……子供だと思って手加減すると思うなよ」
「うん、思わないよ。でも僕は手加減して手加減して手加減しまくるけどね」
「……クソガキが」
カウントが1桁になった。それに男は杖を取り出した。長杖だ。殴ることも出来る杖、か。シェリ姉もたまにすることだ。
『start!』
「《フレアランス》256!」
256本の炎の槍が僕を目掛けて迫る。それを眺めて足を振り上げて
「やっ!」
地面を踏みつけた。その衝撃で風が発生し、焔の槍と触れて、また爆発した。それの中に突っ込む。両手を広げて駆けていると
「《スタッフブレイド》!」
「秘剣龍の型ーー龍爪!」
杖が剣のようにして振り下ろされる、それを両手で弾いて蹴りつける。さらに続けて蹴り上げて
「秘剣星の型ーー流星!」
地面に向けて蹴り落とした。しかし体力は全損していない。中々の防御力だ。
「弱いなぁ」
「っ!? 《エアースラッシュ》512!」
「ささっと」
両手で《悪魔龍皇剣》を抜いて薄緑色の風の刃を切り裂く。この魔法に限らず、同じ魔法が触れ合ったら消滅するようになっている。だからタイミングが少しずつずれている、つまり斬りやすいんだ。
「えいや!」
全力じゃない、だけど力を込めて剣を振るった。そして風の刃を切り裂いて
「嘘だろ!?」
「残念だけど本当だよ!」
斬ることに固執せずに風の刃の隙間を縫って《悪魔龍皇剣》を片手で握る。そのまま剣を振りかぶって切り裂く。続けて切り裂き続けていると
「《アイスドリル》96!」
その魔法と同時に小瓶が割れるような音が。そして体力とMPが回復したようだ。それを眺めつつ降り注ぐ氷のドリルを避けて
「やっ!」
《悪魔龍皇剣》を投げた。それは驚きの表情の相手を吹き飛ばした。それに追いついて蹴りつける、蹴り上げる、蹴り落とす、踏みつける、蹴っ飛ばす、全損。
やっぱり世界大会って言っても大して強くないなぁ、そう思いながら僕は光に包まれた。
*****
「次は私が「シェリルは待ってなさい。まだ緊張しているでしょ」
私の言葉にうっ、と呻くシェリルに微笑んで
「二回戦を先取してくるから」
「はいはーい」
「行ってら~」
「あんたら……」
マモンとアリアの適当な反応にイラッとしつつ装備を確かめる。そのまま光に包まれて……戦闘フィールドに。さっきの場所みたいに今は戦闘ができるだけの場所だ。ダメージは無い。
「また女かよ……」
「それがどうかしたのよ」
「……チッ」
舌打ちするアメリカン野郎にイラッとした。だから銃を抜く。アリアが作り上げた最高の銃を抜く。
「XIII……? 何だその銃は?」
「アリアの最高傑作銃、名は《ハーディス》」
「《ハーディス》……?」
「不吉を、届けに来たわ」
カウントが0になった瞬間、引き金を引く。それは相手の抜き撃ちと同時だった。銃弾が銃弾と激突し、一方的に撃ち抜いた。驚きの眼差しを向けてきても無駄だ。黒コートを靡かせて近寄る。
「XIII……《ハーディス》……黒猫か!」
「正解よ」
弾丸が頭を撃ち抜いた、そう思ったけど
「《忍者》スキルね」
「《変わり身の術》だ」
「でももう遅い」
私の銃口はあなたの姿を捉えているのだから。
「BANG♪」
アリアちゃんパネェ
震脚で魔法掻き消すなんてマジパネェっす弟子にしてください
レヴィがXIIIだったり黒コートだったり不吉を届けに来たのは知っている人も多いと思います
原作面白いよ!
次回もまた、アメリカ戦




