リナ姉
エカテリーナの片手に握られた細剣《春雷》が瞬速で突き込まれる。それを《真炎王龍の天魔剣》で逸らし
「っし!」
「ふっ!」
返しでの《真風王龍の天魔剣》での突きは《悪魔龍皇剣》に受け止められた。そして力任せに吹き飛ばされ
「はぁっ!」
「っあぁっ!」
正面からの神速の突きを正面からの振り下ろしで防いで
「やっ!」
「ちっ!」
蹴りを放ち、体勢を崩す。そのまま追撃を加えようとしたけど
「速い⁉︎」
「アリアこそ」
お互い、動きを止めて距離を測る。10メートルくらい、二歩だ。つまり全速で切るとすれば一歩で、だ。
体勢を低くする。エカテリーナもだ。一撃では決められないのが見て取れた。だから
「秘剣華の型ーー露草!」
もっともお気に入りの高速二連撃を放つ。右上からの袈裟懸け、そして右腰からの居合い抜き。これを受け切った相手は今までいなかった。
だからこそエカテリーナが受け止めた時、笑みを浮かべてしまった。そのまま連続して斬りつける、しかしエカテリーナの細剣が僕を貫こうとするため攻めきれない。
エカテリーナの戦法は単純だ。片方で守り、片方で攻める。問題はそれらを一瞬で切り替える、その思考速度だ。突破するにはそれを上回る速度か武器破壊だけど
「《悪魔龍皇剣》は耐久無限だし……あっちはあっちで作りたてだから壊したくないなぁ」
「アリアの作ってくれた細剣、良い感じですわ」
「嬉しい事を言ってくれるねぇ……」
チャキ、と剣を両方逆手に持ち替える。エカテリーナはそれを眺めつつ、何も言わない。だから
「《クイックスロー》!」
「なっ⁉︎」
「それは重いよね!」
投げつけた《悪魔龍皇剣》を咄嗟に受け止めたエカテリーナの体勢が崩れる。その肩を蹴り飛ばして両手の剣を放棄する。そのまま蹴り、殴り、引っ掻いてダメージを蓄積させていると
「しっ!」
「うわっ⁉︎」
《悪魔龍皇剣》を一瞬で手放して、自分の《悪魔龍皇剣》での突き。それをなんとか避けて
「やっ!」
「はぁっ!」
今の僕たちにはスキルを使うのすら隙となる。それに何かを言うのも。秘剣は声に出すことで条件反射のように放つ技……無理だ。
「アリア、手加減はいりませんよ」
「そうなの? それじゃ遠慮なく!」
投げ渡された《悪魔龍皇剣》を片手で受け止め、《真炎王龍の天魔剣》と《真風王龍の天魔剣》を鞘に収める。
「一刀流……?」
「ふふん」
「……なるほどね」
*****
一撃必殺か、他の手段を思いついたのか。それを考えつつ、アリア製作の《春雷》を低く構える。そのまま《悪魔龍皇剣》を構えて
「行くよ!」
「来なさい!」
瞬間、アリアが高速で駆け出した。その速度は限界まで高めたagiでも見切れないほど。咄嗟に《春雷》で突いて牽制、そのまま《悪魔龍皇剣》で薙ぐ。しかしそのどちらにも手ごたえはなかった。そして
「っちゃ!」
「っ!?」
《春雷》が真下から切り上げられた。そしてその隙間にアリアの蹴りが叩き込まれた。思いのほか、ダメージが大きい。ひょっとしたらレベル熟練度ともに最大クラスと思えるくらいには。……しかし
「アリア?」
「んー?」
「剣に拘りは無くなったの?」
「あんまり、ね」
完全に無くなったわけじゃない、とアリアは嘯いて
「っ!」
「秘剣龍の型ーー龍爪!」
一瞬での左右からの手による指と爪による引っ掻き。それを《悪魔龍皇剣》で防いだら
「んっ」
「っか!?」
ギリギリで差し込んだ《春雷》の柄が高速で叩き込まれたアリアの剣を受ける。しかしアリアの剣の一撃を受け止めるにはあまりにも非力で吹き飛ばされる。そしてアリアはその隙を見逃さない。突撃し、剣の先端が肩を突き刺す。そのまま手首を返して放り投げられた。
「んっ」
耐久に心配のない《悪魔龍皇剣》を地面に突き刺し、その柄に着地する。そのまま地面から剣を引き抜いて切り上げる。上空からの剣撃を正面から受け止めて反撃とばかりに突く。それは軽々と防がれて
「りゃぁぁぁ!」
「せゃぁぁぁ!」
同時に《悪魔龍皇剣》と《悪魔龍皇剣》を激突させる。もはや片手から両手に握りなおしたそれを軽々と振り回している。お互いが同じ軌道で剣を振り、同じように弾きあう。どちらも違わない、まったく同じ軌道での斬り合いは遠心力やらなんやらを乗せて加速していく。舞い散る火花が私達を包み込む。
剣と剣が交差し、剣と剣が擦れ合う。しかし中々剣が当たらない。それはお互いに、だ。
「アリア!」
「エカテリーナ!」
全力で加速した剣撃を続ける。お互いに剣の威力は変わらない。耐久も同じで、リーチも同じ。もはやどちらも目に見えないほどの速度で切り結ぶ。しかし
「アリアちゃん! エカテリーナ!」
「ん」
「え」
2人で同時にその場から飛び下がる。そして元々立っていた位置に矢が降り注いだ。そんなことが出来るのは彼女だけだ。とりあえず
「マモン! なんのつもりなのさ!」
「何って決着はまだよ、むしろ今決着をつけたら世界大会の存在理由がないわよ」
「……そうですね」
マモンの言葉に納得し、剣を納める。そして
「アリア、決着は頂点で」
「……うん、そうだね」
「途中で負けたら嗤いますわよ」
「僕の台詞さ」
*****
「アリアの家って案外大きいんですね」
『そうかな?』
「日本人の家は小さいって知っていましたもの」
キャリーバッグを転がしてアリアの家の門をくぐる。執事は別のどこかで宿泊する予定。
「失礼します」
『どぞどぞ』
「アリアのご両親は?」
『買い物に出かけているよ』
「そうでしたか」
靴を脱ぐ、この文化には慣れません。とりあえず靴を脱いで揃えて
『あ、おねーちゃん……お友だち?』
『うん、友だちだよ』
「エカテリーナです」
『エカテリーナお姉ちゃんだね』
お姉ちゃん、そう言われたことは無いので戸惑いました。そして
『お姉ちゃん……うーん、エカ姉? リナ姉?』
「何でも良いですよ」
アリアの頭を撫でるとくすぐったそうに目を細めた。するとアリアの妹が頭を突き出してきたので
「ふふっ」
撫でると同じようにして目を細めた。すると階段の上からアリアが大人しくなり、髪を伸ばした感じの女性が。話に聞く姉ですね。
「Who are you?(あなたは誰?)」
「My name is エカテリーナ」
『アリアちゃんが言っていた……アリアちゃんの友だちの?』
「はい」
英語での会話を取り止めて翻訳を利用するアリアの姉。そして1時間後
「アリア、それは?」
『これ? これは友だちとの写真だよ』
ジャパニーズは事あるごとに写真を残すといいますが本当みたいですね。アリアと年上の女性二人が笑顔で写っているのが分かりますね。
『友だちとの記念写真だよ』
「そうなのね」
『うん』
アリアは部屋の中でいそいそと動いて
『何かしたいこと、ある?』
「そうですね……」
昔に少し飲んだ
「緑茶と炭酸飲料が飲みたいですね」
『何そのチョイス』
「緑茶は中々思い出深い味なので。炭酸飲料は見張りがいないところで飲んで見たかったのです、普段はクリフ、執事に見張られていますから」
『やっぱりリナ姉ってお嬢様なんだね』
アリアは感慨深そうにうんうん、と頷いた。
タイトル誰やねんってなった方も多いでしょうね
だが私は謝らない
読んで分かる通りアリアもエカテリーナも手加減をしています
それでもマモンから見たらやり過ぎなんですけどね
次回から世界大会の予定ナリ
次回予告『came on the ours top!』




