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エカテリーナ

「アリス!」

「分かっている!」


アリスの鞭が《悪魔》を纏めて縛り上げる。しかし数は減ったように見えない。


「アリアちゃん!」

「街の外で奪うわよ!」

「先に行くわね!」

「僕も行くよ」


4人がさっさと駆け出して行った。それを見送って


「リョーマ、それは使わないでね」

「む……?」

「経験値を得られるからって良い事は無いよ」

「……アリア殿が言うのなら」


その言葉に頷いて駆け出す。地面を蹴って屋根の上に飛び乗り、駆け続ける。すると


『ディアボロス:現在《悪魔の肝》関連と思しき《悪魔》というモンスターが異常発生中。アイテムとして《悪魔の肝》を落とす事は確認した』

『ジャック:俺とセプトはリアルの方で調べに行く』

『サタン:これってどんな問題になるんだ?』

『マモン:ゲームバランスの崩壊?』

『ルシファー:何にせよ良い事は無さそうだね』

『ディアボロス:現在《勇者達ブレイバーズ》、《THE・メイド》、《聖堂騎士団テンプルナイツ》へ協力を要請している。俺たちは先日と同じ街で個人対応を』


魔王のそれに次々と書き込まれる了承の意。そこにはアリスの名前もあった。それに嬉しく思いつつ《悪魔龍皇剣》を抜いて両手で握る。


「悪いけど《悪魔》は僕の獲物だよ」


街から流れ出るプレイヤーたちの前に立ち塞がって剣を構えた。


*****


「ジャック、事態は?」

「悪い」

「それは分かっています! 具体的に!」

「……言葉にし辛い。あのセキュリティを突破してプログラムを改竄? セキュリティの内容を知っている俺たちですら突破できないんだぞ」


確かにそうだ。だからこそ私たちは外部犯ではなく内部犯を疑っているのだから……内部犯? 何かが頭の隅に引っかかる。


「AIベースは? 確認したか?」

「いえ、まだです……?」

「俺の勘ではそこに何かある気がする」

「……達也!」

「はい⁉︎」

「AIベースの確認を!」


達也は一瞬だけ戸惑い、駆け出した。絶賛混乱中の室内を抜けて、五分もしないうちに


『優、ジャックと一緒に来てくれ。俺じゃ無理だ』

「……ジャック!」

「スピーカーで聴こえていた」


2人で廊下を走り、指紋認証からの網膜認証、生体認証を抜けて


「達也!」

「優……AIベースと対話してみてくれ」

「……対話ですか」


AIベースは巨大な機械。それに付いているヘッドフォンと小型マイクを装着して


「もしもし、聞こえますか?」

『社員舞宮優、聞こえます』

「現在の内部状況は知っていますか?」

『はい』

「……《悪魔の肝》は誰が組んだプログラムですか?」


機械だからその答えには時間をおかなかった。


『私です』

「っ⁉︎ ……本当に?」

『はい』

「何故ですか⁉︎」

『経験値オーバーフローを下地としアイテムを形成するプログラムに不備がありましたから』


え、と思っているとジャックが


「あのデータに不備だと?」

『はい』

「……どの辺りだ」

『古来より人類は何かを対価に何かを得ています。ただ経験値を得るだけではデメリットが存在しません』

「それのなにが……」

『マイナスとプラスがつりあって0です』


ダメだ、話にならない。そう思いながら辺りを見回す。二人も話に参加できている……でしたらデバイスをつける必要はありませんね。とりあえず離して


『他に質問はありませんか?』

「……精神状態に異常をきたしたのは?」

『私が原因です』

「……思考と視覚への介入は?」

『私が原因です』

「……分かりました。現在をもってそのプログラムの動作を停止してください」

『分かりました』

「優!?」

「達也、緊急メンテナンスです」


振り向き


「ただちに全プレイヤーをログアウトさせ、プログラムを消去します」


*****


「エカテリーナお嬢様、何をしておられるのですか?」

「何をしていても構わないでしょう?」

「……お嬢様」


ふん、と鼻を鳴らして退室させる。邪魔だから。


「世界大会で彼女と会わないと……そして」


また、全力の戦いをしないと。それが私と彼女アリアの願い。とりあえずカバンの中に着替えの下着を入れる。そのまま服や生活必需品を詰め込んで


「今度はどこの国でしたっけ」


忘れかけている記憶を何とか掘り返して……どこでしたっけ? ロシアじゃなくて……えっと……ええ、素直に予定表を見ましょう。


「コマンド、起動オープン


起動したデバイスから予定表を開いて


「ジャパン……彼女の国ですわね」


別に彼女だけではないと分かっていてもそうとしか表現できない。とりあえずメールを開いて


「あら?」


速報で流れた『ソーニョ・スキルズ・オンラインの全国サーバーから一時強制ログアウト、バグか』との見出しに惹かれ、開くと……カーマインの髪を振り乱し、剣を振るい続ける彼女がいた。


「……ふふっ」


彼女は変わっていない。私も変わっていない。だったら私たちはまた会いまみえる。


「準備完了、っと。これで後は寝るだけですわね」


そう呟いて寝巻きに着替える。シルクの素材の柔らかいそれに着替えてベッドで横になる。そのままデバイスを被ろうとして……ログアウトされているのなら無理か、と思い残念ながらデバイスをベッドの横の棚に載せる。そのまま目を閉じて……


彼女と初めて剣を交わしたのはいつだったか。きっとアリアたちジャパニーズ風に言えばショーガクセイくらいでしたね。彼女は幼く、それでいて苛烈に可憐、圧倒的な強さを持っていた。

彼女の剣は私を斬り、私の剣は彼女を貫けない。それが何度も繰り返され……初めて負けた。それが悔しくて、でも嬉しかった。また越える壁が出来たのだから。


「……次こそは勝ちますね」


彼女がどこかで笑った気がした。だから私もつられて笑った。お休み、アリア。


*****


「あ、メールだ」

「誰から?」

「んー……あ」


驚いた。素直に驚いた。しかしツゲオが疑問の表情なので


「多分名前を言っても分からないと思うよ」

「そうだろうね」

「僕の友だちだよ」

「僕……ソーニョの方の?」

「ううん、その前からの」


へぇ、とツゲオは苦笑している。一応


「ロシアの友だちだよ」

「……交友関係広いなぁ」

「うん……あ、こっちに来るんだ」


そうなんだ、と思いながら眺めていると


「え、僕の家に泊まるの?」

「む」

「良いけど……ちょっと確認してみないと


お母さんにメールを送ると仕事中のはずなのに即座に返って来た。泊めても良いらしい。だからそう送って


「ツゲオもいつか泊まりに来る?」

「えっ!?」

「さっき羨ましそうだったじゃん」


ツゲオは顔を赤くして、顔を逸らした。それに苦笑していると


「アリアちゃん、どうしたの?」

「エカテリーナが泊まりに来るんだよ」

「エカテリーナ……? ロシア代表の?」

「うん、そうそのエカテリーナだよ」

「え」

「ツゲオも戦う相手だよ」

「「……」」


二人が沈黙している。それに笑いながらお弁当を食べ終わる。毎日二人分作るのは難しい、だからお互い相手のを作っている。ちなみにシェリ姉は弁当を作っているところを見て


「ウソダドンドコドーン!?」


ってオンドゥルっていた。

エカテリーナお嬢様

金髪ツインドリル碧眼の美少女

16歳にして親の家業を手伝うこともしばしば

日本の企業と交渉のために来日する


《悪魔の肝》節は終わったと言っても良いよね

一応AIベースに関する事は以降に書きます

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