ハロウィン
「アイアムアパンプキン!」
「……うん、そうだね」
シンは僕の頭を覆うカボチャを見て苦笑している。それにあはは、と笑って頭から外す。
「これを明日はずっとかぶっているつもりなんだ」
「なら今日はかぶる必要あったの?」
「サイズの確認だよ」
まったく、シンは準備を簡単に済ませるつもりだね。甘い、甘過ぎるよ。
「ハロウィンの準備を甘く見るな!」
「えぇ?」
「コスプレの一つもしないシンは何かを言う資格無し!」
「じゃあアリアは?」
「コスプレしないよ」
「じゃあ良いじゃん」
「うん、そうだね」
理不尽だ、と呟いたシンに笑って
「とりあえず明日は楽しもう!」
「何を?」
…………
「ハロウィンを!」
「ハロウィンって何をするんだ……?」
「あ」
*****
「どう? 似合う?」
「うん、強そうだよ」
「それって似合うとは違うと思うなぁ……」
シェリ姉が魔女っぽい帽子をかぶり、魔女っぽいローブを着て、魔女っぽい箒を持っている。でも二つ名の時点で《魔女》じゃん。コスプレじゃなくて正装だよね。
「僕は? 似合ってる?」
「うん、怪しさ抜群よ」
「そう? えへへ」
「なんで喜ぶのよ」
黒マントにワイシャツ、そしてカボチャをかぶる。それだけでハロウィンっぽさが出ている。そう思っていると
「あ、マリ…………ア?」
「あ、アリア」
「こんにちは、アリア」
「……実は逆だったり?」
アジアンの雰囲気のマリアとマリアの雰囲気のアジアンがいた。それに疑問の声を出すとあっさり頷かれた。
「そんなに分かりやすいかなぁ?」
「アジアンの化粧は完璧だよ」
「装備も交換したし髪の色も変えているのにね」
「雰囲気で分かったよ」
二人が入れ替わっているのを眺めていると
「むっ?」
振り向くとそこに忍者が二人いた。
「曲者!?」
「にんにん」
「……にんにん」
「……マモンとレヴィ?」
壁際忍者の二人は僕の言葉に頷いた。それに苦笑していると
「なんで私がこんな格好なのよ……」
「だってエミリアがじゃんけんに負けたじゃん」
「勝てば良いのよ勝てば」
レヴィの言葉にバニーガールなエミリアが深いため息を吐く。ちなみに今もお客さんはいるわけで、何故か前屈みな男プレイヤーが何人か。それにマモンたちが苦笑している。
「シェリちゃんはまだ着替えてないのかな?」
「着替えましたよ……」
試着室の中からシェリ姉の声が聞こえた。そして
「……アリアちゃん」
「なに?」
「笑わないでね……」
そう言って試着室から出てきたシェリ姉はまるで
「ケンタウルス?」
「あははははははは!」
「ぷふっ」
「ふふっ」
「もう!」
シェリ姉の姿を見て笑うマモンたちにシェリ姉はジト目を向ける。そのままため息を吐いた。
「その後ろの足って動かせるの?」
「装飾品よ」
「残念」
「何を期待しているのよ……」
シェリ姉の言葉ももっともだ、と思いつつ作り上げた剣を棚に置く。新作を置く場所に飾った。すると前屈み男プレイヤーの一人が手にとってステータスを確認し、
「いくらだ?」
「100M」
「10億かよ……値引きしてくれないか?」
「うん、良いけど物々交換だよ」
「レグルスとかアストライアー素材じゃダメか?」
「良いよ、どれくらい?」
交渉を済ませる。結果としては3割引だ。まぁ、それでも十分儲けはあるんだよね。とりあえず一緒に作った剣と弓、重槍を並べる。盾も作ってはいるけどジャンルとして武器なのはどうなのかな……盾で殴るスキルもあるらしいんだけどね。
「シェリね……え?」
「なによ」
「すっげー綺麗」
「あっそ」
そっけなく、シェリ姉は鏡に映る。そしてくねくねポーズを取っている。
「でもなんでチャイナドレスなの?」
「綺麗でしょ?」
「うん、そうだけど……なんか不思議」
「ありがと。とりあえず今日はこのままかな」
シェリ姉みたいにみんなが綺麗系可愛い系の服装に着替えている。僕も頭が重いのでかぼちゃを脱いで、そのまま魔女っぽい帽子をかぶる。そのまま魔女の格好をすると
「ねぇ、僕綺麗?」
「うん、綺麗よ」
「可愛いわね」
「さすが我が義妹ね」
「……」
「シン?」
無言で僕を見つめるシン、それに疑問の声を出すと
「可愛い……」
「えへへ、そう?」
「うん、凄く可愛いよ」
褒められて嬉しくなっているとカーマインブラックスミスの扉が開いた。そして猫が、巨大な猫が入ってきた。
「にゃーん」
「……その声、ヴィクトリア?」
「はい、ご主人様」
「その装備、凄いね」
「はい、自信作です」
現在のハロウィンイベント中では全プレイヤーにある装備が貸し出されている。それは自分の意思で見た目を変えられる服だ。まぁ、見た目を変えるときは装備状態が解除されるから試着室を使うプレイヤーも少なくない。
「猫耳装備に猫の着ぐるみ、そして肉球の手袋に靴かぁ。凄いなぁ」
「はい、頑張りました」
「ヴィクトリア……その装備、イベント終わっても作ろうか?」
「よろしくお願いします」
「早!?」
一瞬で頷いたヴィクトリアに苦笑している。そのままヴィクトリアが買い物を済ませて少し経った頃
「落ち武者!?」
「みたいね……モンスターじゃなさそうだけど」
「アリア殿はおられるか?」
「いますよ」
そう言ってシェリ姉は魔女帽子な僕を前に出す。この落ち武者、本当に怖いよ……泣きそうだ。そう思っているとその落ち武者はそっと微笑んで
「久しぶりで御座るな、アリア殿」
「……え、リョーマ?」
「そうで御座るよ、アリア殿」
「……怖いよ」
「これは失礼した」
そう言ってその落ち武者は装備を変更して……剣道着みたいな格好になった。そして
「アリア殿、本日は装備の強化をお願いしたいのだが……」
「うん、構わないよ。注文はあるの?」
「無論、《星獅子の牙》と《星獅子の爪》を貴重に《深海鮫の皮》を使って作っていただきたい」
「鮫?」
「……鮫がどうかしたで御座るか?」
「鮫、鮫ねぇ……」
そんなアイテム、今まで聞いたことも見たことも無い。だから少し引っかかった。一体何が気になるのか分からないけど……
「リョーマ、その鮫ってどこで出るの?」
「内緒……と言いたい所ですがアリア殿の言葉なら致し方ない。夜に《海との境界線》に出現する真っ黒なモンスターを倒したらドロップしたので御座るよ」
「……アリス」
「うん、多分ね」
「アリア殿?」
僕と、店内で商品を見ていたアリスの雰囲気が変わったのにリョーマは気づいた。実は聞き耳を立てていたんだ……ま、良いや。
「リョーマ、そのモンスターは《悪魔の肝》ってアイテムをドロップしなかった?」
「……何故アリア殿はそれを知っているので御座るか?」
「そのアイテムは僕に渡して」
答えずに言うとリョーマは目を細めた。
「何故か、言ってくれぬのか?」
「そのアイテムは良くないもの。心を蝕んで気持ちを変えて……最低な気持ちになるわよ」
「……貴殿は?」
「アリス、そのアイテムの被害者にして第一人者よ」
アリスがそう言って一歩を踏み出した瞬間、それは起きた。
「っ、アリア!?」
「うん!」
慌ててカーマインブラックスミスから出ると……《悪魔》がいた。それはとても多く。まるでハロウィンなんて楽しみは無い、と言うように。ハロウィンで浮かれている僕らを嘲笑うかのように。
友人が真横で歩きながらソーニョを読んでいるという謎の体験をしました
現在は10月31日ハロウィン
世界大会まで一週間とちょっと
とりあえず《悪魔の肝》節は次回で終わる予定
カクヨムに投稿始めました
1話から追いかける感じなんですけどなろうでは150話を越えているのに気づきました
1日1話でも5ヶ月かかるしその間にもなろうでは進むから終わり無し?
それはともかくとして誰かソーニョの二次創作作って欲しす
他サーバーの話とか
絵とか
同人誌とかなんでも喜びます
それがモチベーションに繋がる単純人間な私




