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かぼちゃのパイ

「あれが《悪魔の肝》を取ろうとするパーティなんだよね?」

「うん……で、どうするの? 横取り? マナー違反と思うけど」

「うん、それは分かっている」


だけど


「到底見過ごせるようなアイテムじゃないんだ」

「……」

「アリスの考えや見えているものに干渉するならなおさら」


地面を蹴って高速で駆ける。そのまま悪魔の背後に回り込んで


「《エンプレススラスト》!」


悪魔の首を一撃で落とす。《致命的位置クリティカルポイント》を切ったので一撃死。そのままドロップアイテムに目を走らせると


「あった……」


アイテム欄に堂々と存在する《悪魔の肝》。それの説明を確認しようと思ったら


「っ⁉︎」


押せない。タップできない。確認できない……オブジェクト化はできるみたいだ。だからオブジェクト化すると


「心臓……だね」

「うん」

「これを食べたの?」

「給食のレバーみたいで美味しいよ?」

「つまり不味いんだね」

「え?」

「え?」

「レバーって美味しいよね?」

「不味いよ?」


お互いに顔を見つめ合い……沈黙が流れた。直後


「横取りしないでくださいよ!」

「マナー違反じゃん!」

「……アリス」

「分かってる。逃げるよ」

「うん」


追いかけられつつもレベルカンストの速度にはついて来れなかったようだ。


*****


「優さん」

「アリアさん、どうしましたか?」

「アヤコの前にちょっと時間良いかな?」

「構いませんが……どうしました?」

「《悪魔の肝》って知ってる?」


優さんはキョトンとして


「悪魔の……肝? アイテムですか?」

「うん」

「記憶に無いですね……特徴は?」

「食べると経験値を得られる心臓みたいなの」


優さんの表情が変化し、腕時計型デバイスを高速で操作しだす。そして


「……そんなアイテム、リストにありませんよ⁉︎」

「え……」

「アリアさん、虚言の類いじゃありませんよね?」

「うん。僕のアイテムデータにあると思うんだけど」

「……着いて来てください」


そう言われて着いて行くと


「あ、達也」

「アリア……? 何かあったのか?」

「アイテムデータに不備があるかも、と言うことなので」


達也の言葉に優さんが答え、データの中を眺める。たくさんの文字の中、とある行に目を細めて


「……こんなプログラム、見たこと無い」


ボソリと呟いた。そしてそこをコピーして


「プログラムを解析……いえ、アリアさんは文子さんの方を優先してください」

「え!?」

「彼女を待たせるのも良くないでしょう」


*****


しぶしぶ、と立ち去ったアリアさんを尻目にプログラムを解析する。アリアさん曰く良くないもの、らしいですが……まったくの同意見です。彼女の言葉が真実ならば


「誰かが意図的に作った問題……」


解決しないといけない問題です。ですから解析の終わったプログラムの内容に目を通して


「達也!」

「どうしました、舞宮さん」

「このプログラムを。私の予想が正しければ間違いなく問題です」


旦那の達也に確認してもらうと、短い嘆息が。


「どこから引っ張ってきたプログラムですか?」

「アリアさんのアイテム欄からです」

「……ソーニョの、ですか」

「はい」

「視覚と意識への作用がある経験値アイテム……一体誰がこんなアイテムプログラムを?」

「分かりません」


達也は目を細くして


「外部から、ですか?」

「いえ、内部からのようです」

「俺たちの中で……ですか」


達也はそう呟いて周囲を見回して


「視覚誤認、VRでの実験をしたとこは無かったはずですが」

「はい、私もそう思います」


1時間後、アリアさんたちがリアルに戻ってきたのを確認してアリアさんにメールを送る。そしてアリアさんが何かを聞きたそうな表情で駆け寄ってきた。とりあえず


「アリアさん、あのプログラムの解析はしました」

「どんなプログラムだったの?」

「視覚誤認などの、悪意のあるプログラムです」

「やっぱり」


アリアさんはウンウン、と頷きますが


「何故それを?」

「《悪魔の肝》を使いまくってレベルカンストさせたプレイヤーが友だちにいるからね」


レベルカンスト、今現在の最大レベル2999に辿り着いたのは目の前のアリアさんともう一人、アリスwithテレス。つまり彼女が……?


「アリスさんとリアルでコンタクトをしたいのですが、できますか?」

「……それは私に言わないでよ。伝えるだけなら出来るけど……」


アリアさんは頭を振ってため息を吐いた。


「それよりも直接運営からメールを送れば良いじゃん」

「あ」


そう言えばそうだった。


*****


「ハロウィンイベントかぁ」


畑に生えている薬草、上薬草、ブルーベリー、ハイブルーベリーなどの合間にチョコン、とそれは存在していた。目立つオレンジ色に触ると硬い外皮、そしてずっしりと重いそれは


「パンプキン!」

「かぼちゃって普通に言いなさい」

「はーい」


マモンの言葉に頷きつつ、下手の部分を切って中身をくり抜いて包丁で皮を顔の形に切る。その真ん中に蝋燭を立て……光が地味だ。だから


「中にお皿を置いてそこに油、そして火って……火事でも起こすの?」

「ううん、このかぼちゃはなんでか知らないけど火を外に出さないようにしているんだ」

「へぇ」


マモンはかぼちゃに彫刻を施している。そして


「完成」

「おお」


かぼちゃの顔がしっかりとしているようになった。それに喜びながらくり抜いた内側の部分から種を取り除く。そのまま小麦粉などの生地の元と混ぜて


「かぼちゃのかぼちゃのかぼちゃのかぼちゃのかぼちゃのパイが、出来ました」

「やんばるロジック……」

「あれ見てからかぼちゃパイ食べるのが夢だったんだ」

「500円以下の夢……」


マモンの呆れたような声に苦笑しつつ、出来上がったかぼちゃのパイを食べてみると


「かぼちゃの味がしっかりしているね」

「でもあんまり甘くはないんだね」

「だって砂糖あんまり入れてないんでしょ? 甘さがはっきりしているのは基本的に砂糖よ」


あんまりそういうのは知りたくなかった、そう思いながら齧る。サクサクしている。濃い味じゃないけど美味しい。そう思いながら食べていると


「アリアちゃん、録画しているけど良い?」

「え」

「あまりにも可愛くてつい」

「良いけど……何に使うの?」

「動画投稿サイトにも上げるつもりだけど」

「むぅ?」

「ちゃんと宣伝しておくから」

「なら良し」

「どこが良いのよ」

「あ、お帰り」


帰って来たエミリアの言葉にマモンが苦笑していると


「アリア、お客さんよ」

「え?」

「アリスって名乗っていたわ」


ほうほう、と思いながら顔を出すと


「アリア、ちょっと良い?」

「うん、どうしたの?」

「天神に来いってメールが送られてきたんだけどアリア、何か知っている?」

「うん」


辺りをきょろきょろと見回して


「《悪魔の肝》に関することを運営側が聞きたいんだって」

「……私が一番使ったからって?」

「かもね」

「……行くしかないか。お金は向こう持ちらしいし」

「そうなんだ」

「ついでにとらとかメロンに行くかな」


アリスが何を言っているのか分からないけど頷いていると


「アリアって18越えて……いないね」


どうして確信したのか気になった。

ハロウィンイベントはとりあえずかぼちゃだ!

異論は認めない


次回に忘れられたプレイヤーたちを出す予定

キャラクターの案とかも欲しかったりする

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