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アリス

「これで武器は封じました!」

「ところがどっこい」


《悪魔龍皇剣》を手放して突っ込むたかだかその程度で動揺するアリスに呆れつつ、鞭を握る手を蹴り上げる。手が緩むけど鞭を手放しはしなかった。だから


「秘剣天の型ーー震天!」

「っ⁉︎」


速度を乗せた掌による打撃。元々単発重攻撃だから問題無い。そもそも技名なんて一々覚えてないし。フィーリングでその場でつけてるもん。


「続けての円天!」


カポエラー的な感じで逆立ち蹴り。吹っ飛ぶ体を追いかけつつ、降って来た《悪魔龍皇剣》を掴む。逆手に持ったそれを高速で振る。迫る鞭を的確に弾いて


「逆手は速度を、両手は威力を、順手はハーフ、分かりやすいでしょ?」

「……っ!」


足元から顔を目掛けて飛んで来た鞭をバク転で避けて距離を置く。アリスのリーチに移動する。それに笑みを浮かべたアリス。


「聡明だと思っていたんだけどなぁ」


聞こえないように愚痴りながら鞭を避け続けていると


「《ウィップソード》! 《クイックリープ》!」

「おぅ?」


鞭が束ねられ、剣の形を取った。そして突進単発攻撃。慌てて《悪魔龍皇剣》を片手に持ち替え、裏からもう片手で支える。それぐらいしないと防げない気がしたから。


「っう……マジ?」


動きが速くなっている。それどころか力も強くなっている。


「一体何をしたのさ?」

「レベルを100くらい上げただけ」

「……」


スキルレベルを上げた分、プレイヤーとしてのレベルが上がる。つまりスキル一つを最大レベルまで上げた? でもそれは経験値を圧倒的に使うし……まさか⁉︎


「適当にスキルを習得して必要経験値が少ないのを……上げたの?」

「正解ですよ」

「……とことん真逆だなぁ」


アイテムの力に頼って経験値を得た彼女とアイテムの作製などで経験値を得た僕。その差はあんまり無いのかもしれない。だけど


「嫌だよ、そんなレベルの上げ方は」


《悪魔龍皇剣》を両手で握る。真上から振り下ろされる鞭剣を避けて距離を詰める。2歩、3歩。しかし鞭剣は意外と速く、手元に戻った。と、いうか元が鞭だから伸ばせるんだ。


「だったらどんなレベルの上げ方が良いのですか!」

「さぁ?」

「っ⁉︎」


鞭剣を避けずに、左手を差し出す。元が鞭なぶん、切れない。ダメージはあるけど


「思い通りだ」


手首をクルクル巻きにされた。それを思いっきり引っ張ると同時に駆ける。その途中で伸びた鞭を思いっきり蹴り飛ばす。地面に倒れ、引きずられるアリス。そのまま引っ張って


「ボールは友達って言うよね」

「友達はボールじゃないけど⁉︎」


蹴りを両腕を交差させて防いだ。そのお腹を踏みつけて


「アリス、レベルが高いからって強いわけじゃないんだよ?」

「五月蝿い!」

「……」


鞭を手で掴む。言っても分からないなら見せる。魅せる。


「なっ⁉︎」

「綱引きだよ!」


引っ張り、振り向き、釣り竿のように振る。ポーン、と浮かぶアリスの表情は驚愕に歪んでいる。


「そんな虚ろな強さじゃ僕には勝てないよ」

「黙れ!」

「やだ」


口が悪くなりつつあるアリス、それに違和感を覚えつつ《悪魔龍皇剣》を振るい、吹き飛ばした。だけど中々硬いし体力も多い。それを面白いとも思いつつ追撃で蹴って街の壁に叩きつけた。ダメージは大きい。残り体力は3割も無いだろう。


「どれだけレベルを上げても届かない……そんなわけない!」

「え」

「もっとレベルを上げて……!」


そう言っている間にもレベルがどんどん上昇していく。既にレベルは1000台を超え、2000を突破した。とんだレベル厨だ。


「レベルをカンストさせたって僕には勝てないよ」

「五月蝿い五月蝿い五月蝿い!」

「……なんなんだろうなぁ」


今日のアリスはおかしい。最初と最後が全然違う。怖いくらいに違う。だから


「アリス、約束して欲しいな」

「……何を?」

「僕が勝ったら《悪魔の肝》に手を出すな」

「……なんで?」

「なんでも、だよ。今のアリスはアリスらしくない」

「……私らしいってなんですか」


え、と声を漏らすと


「私ってなんなのさ……」

「アリス……」

「たかだかゲームなのにアリアが憎い」

「え!?」

「羨ましくて妬ましくて憎らしくて……分からない」

「……」


悲しい。アリスにそう思われているだなんて……


「友だちだって、思っているのに」

「……」

「約束、飲んでくれる?」

「……良い」


アリスは底冷えのする笑みを浮かべて鞭を構えた。そして


「私が勝ったら何がある?」

「なら最高の装備を揃えてあげるよ」


アリスの笑みが一層深まる。そして


「《巻きつき》!」

「おっ!?」


手首に巻きつかれた。手首で引っ張るのは難しい。だから素直に持ち替えて駆ける。なのに


「《ウィップスラッシュ》! からの《ウィップトルネード》!」


袈裟懸けの鞭を避けようとすると、広範囲薙ぎ払いに切り替えられた。咄嗟にもう片手を差し出す。そして両手を巻き取られてから気づいた。両手を拘束されたら蹴るしかなくね?


「まさか鞭二刀流とはね」

「勝つためならなんだってする」


そう言って鞭二本を片手で持ち、新しい鞭を装備した。そしてそれで僕を叩こうとする。それを何とか避けて跳び上がる。すぐさま鞭二本によって地面に叩きつけられそうになるけど空中で体を回転させる。そのまま緩んだ拘束から抜けて


「秘剣龍の型ーー龍爪!」

「《ウィップクロス》!」


鞭が拘束で振られる。交差するように振られる鞭を両手の指で弾いて、開いた隙間に飛び込む。そのまま


「秘剣龍の型ーー龍翼!」


広がる翼のように蹴りと手で打つ。だけどアリスはいつの間にか回復していたのか全損しない。だから続けて僕の間合いで攻撃を仕掛けていると


「《ウィップスマッシュ》!」

「わっ!?」


ぶっ飛ばされた。そして追撃の鞭を何とか避け、弾く。さらに続けての鞭を避けると


「《ウィップスラッシュ》!」

「ち、《居合い・神風》!」


鞭による斬撃を回避すると同時に加速しての居合い切り。さらにアリスの胴を薙ごうとするけど


「《ウィップシールド》!」

「《スターダストスプリャッシュ》!」


若干噛みながらもスキルを放つ。アリスの鞭を連続切りで逸らして《悪魔龍皇剣》を逆手に構え


「秘剣華の型ーー露草!」

「っ!?」


鞭に多少防御されたけどダメージはきっちり通った。まだ、スキルと同等程度の性能しかない自作技、まだまだ伸びしろがあるんだろう。そう思うと、もっと強くなれそうだ。


「僕はレベルだけが強さじゃないって思うよ」

「綺麗事を言わないで」

「綺麗なんかじゃないよ。汚くても泥臭くても強くなったんだから」


だから


「僕が最強なんだ」

「その名前、奪わせてもらいます!」

「《ミーティアリープ》! からの秘剣華の型ーー紫苑!」


紫苑の花、花言葉は君を忘れない。そんなロマンチックなことを考えながら鞭を《真炎王龍の天魔剣》と《真風王龍の天魔剣》で弾いて前に出る。上下左右から迫る鞭を確実に捌いていく。


「私は負けないっ!」

「僕だって負けない!」


鞭剣を振り下ろそうとしているアリス、それに向かって


「秘剣星の型ーーデルタテロス!」


夏の大三角形の名を冠する技は、アリスの鞭をあっさりと切り飛ばし、アリスごと全損させた。

アリス強い

次回も引き続き登場するよ!

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