空を飛ぶ
「で、その日本最強のアリアに質問なんだけど」
「なにー?」
「アリアはどうしてあんなに強くなったの?」
「んー、色々やってたから?」
「例えば?」
「内緒、ソーニョに来たら教えてあげる」
アヤコは苦笑して自由の女神像を利用して立ち上がる。そのまま支えありで10歩くらい歩いた。
「一気に伸びたね」
「そりゃ家でも練習しているからね」
椅子に腰掛けてアヤコは笑う。釣られて笑っていると
「楽しそうですね」
「んー? 優さん?」
「どうも、優さん」
「こんにちは、文子さん、アリアさん」
優さんがここに来たのは初めてだ。だから驚いていると
「リアルに戻った後、お時間よろしいでしょうか?」
「僕は良いけどアヤコは?」
「構いませんよ。何をするんですか?」
「リアルでのとこちらでの差異の確認をする予定です」
なるほど、そう思っているとアヤコはおもむろに椅子から立ち上がってふらりと揺れた。だけど立った。何にも触れずに、だ。
「クラアヤコが立った⁉︎」
「素で間違えそうになってたでしょ」
「気のせいだよ。でも凄いじゃん!」
「そうかねぇ……」
座ってため息を吐く。疲れているような挙動だけど実際は疲れていない。だからこそVR空間を利用した研修を行ったりするんだ。
「アリア、始めたら連絡するから迎えに来てよ」
「ん、良いよ」
「あんまりパワーレベリングをやられるのはちょっと……」
運営側の言葉にアヤコはちぇー、と笑いながら言った。それに2人で笑った。
*****
「実験結果は?」
「はい。まずはこちらのグラフを見てください」
「……」
「まず、左側の2つが開始時の最初の記録です。そして右側が現在の記録です」
ふーむ、と眺めて
「意外と差異はないみたいね」
「うん」
「はい。今現在で差異はほぼ0と言えます。アリアさん、ご協力感謝します」
「……」
「アリアさん?」
「え」
驚いて顔を上げると
「どうしました?」
「あー、うん。アヤコの場合は私だったから……うーん、多分人同士の相性も大事かもしれない」
「それはそうですね」
「アリアのおかげってのが大きいかもね」
アヤコに頭を撫でられる。そのままアヤコは何にも触れずに立ち上がる。そのまま地面に倒れそうになるのを支えて
「立ち上がれるのは何とかいけるよ」
「はい、モニターしていましたが生で見るのとは大違いですね」
「そうなんだ」
とりあえずアヤコを椅子に座らせて
「それではそろそろリアルに戻っても?」
「私は良いよ」
「私も」
三人で同時にログアウトして・・・…頭のデバイスを外す。そのまま職員さんと話して
「舞宮さんが呼んでいます」
「うん、知っているよ」
寝ているようにも見える直美と亜美を一瞬だけ見て……部屋を出る。そのまま案内されて
「この部屋に来るのも4度目くらいだね」
「そうですね」
「アヤコを手伝うのは最初2週間ぐらいだったよね?」
「はい。ですが向こうからの頼みで継続しています、アリアさんにも給料は出ていますよね?」
「うん」
優さんと離していると扉が開き、車椅子に乗ったアヤコと、それを押しているお母さんみたいな人が入ってきた。
「やっぱリアルの方が髪の毛綺麗だね」
「ありがと」
アヤコの言葉にお礼を言い、眺める。
「文子さん、準備は良いですか?」
「もちろん」
「ではモニターを開始してください」
優さんがどこかに指示を出した。そして
「立って良いんだよね?」
「うん、見せてあげなよ」
お母さんが絶句している前でアヤコはニヤリと笑って……車椅子から立った。それにお母さんの目から水が流れた。
「……あ、やこ……!?」
「母さん……」
何故か2人で抱き合って泣いている。だけどまぁ、長いことは立てないし、向こうと違ってこっちだと体力があり、筋肉も疲れるから倒れそうになるわけで
「危ないよ」
「っと、悪い」
「座ってたほうが良いかもね」
「そうするよ」
笑いながら泣いて、アヤコは車椅子に座りなおした。そのままお母さんと抱き合いながら泣いている。
「アリアさん?」
「親子水入らず、だよ」
部屋から出る。そのまま目元をハンカチで拭った。
「良かったね、アヤコ」
*****
「アリアちゃん、お好み焼き作って~」
「お母さん……うん、頑張ってみるよ」
「よろしくね~」
お母さんは疲れた様子で部屋に戻っていった。やっぱり仕事は疲れるんだろう。確か今の仕事は……工場機械整備、だったかな。安定はしないけど仕事が入れば一気にお金が入る、らしい。緊急なことが多いらしいけど。
「とりあえずっと」
向こうだとニンジン、ピーマン、キャベツ、豚肉をお好み焼きこと水を混ぜたやつを焼く。だからその通りにやっていると
「あ、ホットプレート出していないや」
慌てて取り出した、すると
「あ、お姉ちゃんだ」
「エミ、お帰り」
「ただいまー」
エミはそう言ってテレビをつける。そのままチャンネルを替えているのを横目にお好み焼きを焼いていると
「あれー?」
「どうしたの?」
フライ返しでお好み焼きをひっくり返し、そっちに目を向けた瞬間噴き出した。テレビを見ているのは良いよ? でもさ、でもさ、どうして画面の向こうのカーマインのツインテールのこと私を見比べているの!?
「お姉ちゃんに似ているねー」
「そ、そうだね」
「名前も同じみたいだよ、凄いねー」
「ソウダネー」
やばい。そう思っているとエミは録画を開始した。なんで!?
「本当にお姉ちゃんに似ているね」
「そうだね」
「シェリ姉にも見せてあげるね~」
あの……もう止めてください。
「んー? アリアちゃんがテレビに映っているの?」
「にょわ!?」
いつの間にかリビングに来たお母さんの言葉に驚いていると
「まんま、そっくりね」
「あ、あはは……たまたまだよ」
「で、こっちはシェリちゃんに似ている、と」
お母さんは楽しそうに呟いて
「たまたま、似ている人が姉妹なのね」
「偶然って怖いねー」
「そうねー」
完全に分かっている表情でお母さんは笑っている。だからお好み焼きに集中しておく。焼き終えたのをお皿に移していくと
「美味しいねー」
「そうね」
一瞬でお母さんとエミがテレビからお好み焼きに移ったのには驚いた。ちなみに帰ってきたシェリ姉がエミにテレビを見せられて絶句していた。そしてお母さんはずっとニコニコ笑っていた。
「もう、帰ってきて早々驚いたじゃないの」
「私に言われても困るよ」
「それもそうね」
シェリ姉はため息を吐いて
「それでね、アリアちゃん」
「ん?」
「私も空を飛んで見たいんだけど」
「グラシュでも作れって言うの?」
「グラ……なんて?」
「アンチグラビトンシューズ、だったかな。空飛ぶ靴って思って良いよ」
「へぇ」
「原作エロゲだけど」
シェリ姉の容赦ないチョップが私の頭を打った。とりあえず顔を上げると
「でもね、空を飛ぶってきっとみんなの憧れで、夢なの。アリアちゃんも飛んでみたいでしょ?」
「や、私もう飛んだし」
「え」
「え?」
「いつ!?」
「えっと……悪魔龍皇戦だけかな」
「どうやって!?」
「《アストライアーの慈悲の羽衣》の能力で」
シェリ姉ががっくりと肩を落とした。
タイトルビミョー
もっと他にありそうなんだけどね、作者の発想が貧困でね、このしまつ
アンチグラビトンシューズは蒼の彼方のフォーリズムで出てきます
興味のある方は検索の際に最後にエロをつけて画像を見ると幸せになれるかもしれません




