悪魔龍皇、墜ちる
「ひよちゃん!」
『ちぃ⁉︎』
ひよちゃんが被弾した。慌ててポーションの小瓶を割って中の液体をかけ、塗る。ぶっかけより塗った方が回復量が多い。まぁ、時間がかかるから一気にぶっかけた方が良いかもだけど。
「ひよちゃん……《女神の天翼》!」
背中から4本の翼が生える。それは僕のイメージ通りに飛んでくれる。だけどひよちゃんには勝てない。
「ひよちゃん、2人で挟むよ!」
『ちぃ!』
ひよちゃんが下に落ち、僕が上に飛ぶ。弾幕ゲーのように避けながら悪魔龍皇の頭に近づいて
「直美直伝顔面砕き!」
簡単に言えば顔面に踵落としだ。ちなみにシェリ姉が刺された後に直美がそれを繰り出して警察に怒られていたらしい。加害者が被害者みたいだって言われたらしい。
とりあえず悪魔龍皇の噛みつきを避けて背後に回り込もうとしたら
「っっ⁉︎ 危な⁉︎」
翼が羽ばたいて僕を殴ろうとした。ちなみに悪魔龍皇は羽ばたかないで浮いている。やだこの人浮いてる(物理)。
「に、してもさ!」
別ゲーの気分だ。かわして近づいて斬りつけて即座に離れる。そこだけなら完全にソーニョだけど弾幕を避けている感じはシューティングに近い。
「わわわ」
上下左右からのレーザーを避け続けているうちに悪魔龍皇の目の前に来ていた。慌てて噛みつきを防御して
「《レグルスネメア》ぁっ!」
光の槍が悪魔龍皇の体に突き刺さる。ダメージが大きい。やっぱりカウンターは強いんだ。
「続けての秘剣天の型ーー雷迅!」
*****
「アリアちゃん、頑張っているなぁ」
勝っても負けてもここに、カーマインブラックスミスに帰ってくると言ってそろそろ10分が経つ。あまりにも強ければ死んでいると思うんだけど……
「ん」
無意識に唇に触れていた。そしてそれに気づいて思い出した。今日の昼の出来事を。
「……いらっしゃい、瑠璃」
「どうしたの、直美。テンション低いけど?」
「え、分かるの?」
「そうね、長い付き合いだもの。大方告白の仕方とかに悩んでいるんでしょ」
図星だ。驚く間も無く
「直美が流沙を好きなのは知っているけど私も好きなのよ、譲らないわよ」
「こっちのセリフだよ」
ふっ、と笑って腰掛ける瑠璃。とりあえず飲み物を出して
「流沙はきっと……」
選ばない、そんな事を考えてしまった。そして
「いらっしゃい、流沙」
「なんで呼び出されたんだ?」
「まま、座って座って」
奥の個室に行かせて
「瑠璃も」
「分かってるわよ」
緊張している瑠璃の背中を押して進む。その後は色々あったけど……私も瑠璃も納得できる答えが出て来たので多少満足している。
「まさか、就職して生活が安定してから考える、とはね。凄い考えているみたいで安心したわね」
「同じく」
*****
「っあぁぁぁぁぁぁぁ!?」
痛いわけじゃない。だけど視覚的な痛みがある。噛み付かれて、振り回される。二本の剣で片目は潰したのにまだそんな元気がある……これが悪魔龍皇! なんて強さなんだ……
「にょわあぁぁぁぁぁぁぁっ!」
何とか引き抜いて顔を切りつける。不安定な体勢で斬りつけていると魔法が飛んで切るけど
「《獅子の咆哮》!」
直接口の中に撃ち込む。そのまま何とか開いた口から腕を引き抜いて
「っ、アストライアー!」
落ちそうになる体を何とか立て直して弾幕を避け始める。だけど隙が少ない。体力が減れば減るほど加速するみたいだ……
残りの体力は350万くらい……削りきれない量じゃない。二本の剣を握り締めて
「すぅっ……あー、あー、あ~っと」
声を出しながら避け続ける。そして
「空を見ていた」
詠い始めた。
「高く蒼い空」
避けながら前に出て
「忘れないよ」
剣を振りかぶり、翼の付け根に振り落とす。ダメージ量が一気に増えている。
「光る星、輝く太陽、笑う月」
詠い続けよう。だけどそんな隙も許さないかのように魔法が雨霰と降り注ぎ、さらに翼や口での攻撃が再開された。ちなみに悪魔龍皇には脚はあるけど手は無い。
「忘れないよ」
《真炎王龍の天魔剣》と《真風王龍の天魔剣》を広げる。まるで翼のように構えて飛翔する。避けられないなら斬れば言い。だって僕が最強なんだから。
「見下ろす奴らを笑ってやろう」
人間はお前達に手が届くんだって。はるか昔に神のような扱いをされたそれらに。幻想の対象に。
「希望はあるんだって言ってやろう、絶対に諦めるかって叫ぼう」
幻想の産物であるドラゴンにも、悪魔龍皇にも宣言して
「人間は強いんだから!」
斬って飛んで避けて蹴って殴って斬って切って切って避けて飛んで回り込んでひよちゃんと戯れて
「秘剣華の型ーー紫陽花!」
花開くかのような連続斬りが次々と悪魔龍皇の鱗とかを吹き飛ばす。そのまま肉を切り刻む。空中だから力を込め辛い。だから遠心力を乗せて回転に乗って切り裂き続ける。残りの翼が5本。
『ちぃ(ハイヒール)! ちぃ(ブリザード)!』
ひよちゃんのおかげで体力を回復、ひよちゃんの氷の槍が悪魔龍皇の翼をさらに吹き飛ばした。残り、4本だ。
『チイサキモノヨ、ナゼアラガウ』
「え」
『ナゼアラガウノダ』
「そりゃ負けたくないからだ!」
加速する。歌の力が残っている間にケリをつける。二本の剣を構えて回転しながら翼の付け根を切りつける。そのまま悪魔龍皇の背中を蹴って距離を取った。
『オロカナ』
「馬鹿だって良いもん、毎日楽しいから」
理解できない、と言うように首を振る悪魔龍皇。そしてその色が変わり始めた……? 綺麗な虹色がどす黒く染まりだし……漆黒に染まった悪魔龍皇が吠えた。その風圧で体が押される、強制的に距離を取らされた。地面に着地し、驚きながら目を向けると悪魔龍皇の体力が減り続けているのに気づいた。
『ワレノイノチヲモヤシ……サイゴノタタカイダ!』
「……うん」
人間だ、この悪魔龍皇は。だったら僕も全力で戦ってやる!
「《真炎王龍の天魔剣》、《真風王龍の天魔剣》、《解放》!」
そして
「《アストライアーの慈悲の羽衣》、お願い」
守りの力を片寄せる。《慈悲》の力で装備の、そしてステータスの数値を自力で割り振れる。つまり
「agiとstrにがん振り!」
四桁後半に上った二つのステータスに目を細めて
『コイ、チイサキユウシャヨ』
「行くよ、大きな悪魔龍皇!」
歌の力はまだ残っている。だったら全力を尽くすしかない!
「っあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫して駆け出す。降り注ぐ魔法のレーザーを避けて地面を蹴る。そのまま飛び上がり悪魔龍皇の真下へ。そのまま《解放》した二本の剣で尻尾から切り裂いていく。漆黒に染まった尻尾は硬く、剣でもダメージが少ない。だけど確実にダメージはある。
悪魔龍皇は避けるついでに反撃しようとしたのか回転した。そして尻尾が僕に触れそうになる。
「《獅子の咆哮》!」
カウンター、そして悪魔龍皇の真上まで飛んで
「ひよちゃん!」
『ちぃ(ブリザードアクセル)!』
ひよちゃんの足を蹴って急落下、さらにひよちゃんに加速させてもらって
「秘剣天の型ーー」
全力で剣を振りかぶり
「天震!」
思いっきりその顔面に叩きつけた。
140話にして14万アクセス
多いのか少ないのか……
タイトルのせいで何があったか分かりますよね?
とりあえず悪魔龍皇はレベル2000程度だとあっさり負けるくらいには強い
しかし現在2700後半のアリアにはかなわなかった
一対一でしか遭遇できず、他のプレイヤーが戦闘に加わった瞬間に範囲絶対死の攻撃が飛んでくる




