悪魔龍皇
「ひよちゃん! 距離をとって!」
『ちぃ!』
初見のモンスターに無謀な突撃はしない。だからひよちゃんに任せて見に回る。
14翼のドラゴンは僕を見つめて吠える。そして再び翼から魔法が飛来する。
「ひよちゃん!」
『ちぃ(アイスウォール)! ちぃ(ブリザードアクセル)!』
氷の壁が魔法を阻み、氷の竜巻に押されて急加速。そして
「……こんなに離れても全身が見えないなんて……」
目測で100メートルは離れたのに見切れている。なんて巨大なドラゴンなんだ……
虹色に輝くドラゴンは僕を眺める。まるで取るに足らないものを見るかのように。そんな上から目線が挑発のように見えて僕は
「ひよちゃん、突っ込んで!」
『ちぃ!』
あっさり乗ってしまった。あはは。
「っ、ひよちゃん⁉︎」
被弾して、揺れる。しがみつきながら顔を上げると
「ホーミング……っ!」
『ちぃぃぃぃ……』
まずい。このままだと一方的に撃ち落とされる……弾幕ゲーなら大丈夫なのに……
「……弾幕ゲー……」
何かが引っかかる。んー? アヤコが何か言っていたような気がする……えっと確か『ゲームで得た事は他にも活かせる』だったっけ……でもなんで……
「……弾幕、ひよちゃん……分かったよ」
『ちぃ?』
自分の体力を回復したひよちゃんにMPポーションをかけて
「ひよちゃん、僕の指示通りに飛べる?」
『ちぃ!』
「ありがと! それじゃお腹の方に突っ込んで!」
一瞬の躊躇いすらなく突っ込むひよちゃん。直後、翼から放たれた弾幕のような魔法が僕たちの背後を通り過ぎた。やっぱり予想通り翼から出るならお腹はガラ空きだ!
「右に少し行って落下! そのまま一気に上昇!」
『ちぃぃぃぃっ!』
「背後からのは僕が防ぐから!」
《獅子天翼剣レグルスネメア》から放たれる光線と魔法が相殺する。そしてひよちゃんの高速の飛行は14翼のドラゴンを驚かせたのか、一瞬の隙を作った。
「秘剣月の型ーー月読!」
スキルは使わない。全力の袈裟懸け、横薙ぎ、切り上げの3撃はドラゴンのお腹の鱗を何枚も弾き、お肉を覗かせる。そのお肉にひよちゃんが氷の槍を連射して
『ちぃ!』
距離をとる。やっぱりひよちゃんは弱体化している……優さんたちの言ってるのも間違いじゃないけどさ、やり過ぎだよ。
「上上右! そのまま降りて左下に回りこんで一周!」
『ちぃぃぃぃぃ!』
遠心力に必死に耐えながら高く飛ぶ。そして
「やぁっ、てやぁっ!」
すれ違いざまに二回斬って……飛び乗る。幸い体力はあんまり多くない。10Mくらいだ。ソロでも削れる値……じゃないよね、うん。多過ぎる。ソロ限定でランダムに遭遇できるのにソロじゃ狩れない数値……あはは、笑いが漏れる。
「僕が最強だから……負けられないんだ!」
ひよちゃんから跳んで魔法を避ける。そのまま落下しながら切りつけ、地面に落下する。だけど一切怖くない。
「信じていたよ」
『ちぃ!』
僕の両足を足で掴んだひよちゃんは魔法を避け続ける。揺られ揺られれおろろろろ。
「ま、こっちには三半規管なんて無いけどね」
14翼のドラゴンの頭に飛び乗る。忌々しそうに首を振っても僕はもうそこにはいない。既に首を駆けて翼の根元に移動したんだから。そのまま《真炎王龍の天魔剣》《真風王龍の天魔剣》を振りかぶり
「秘剣華の型ーー天照!」
根元で連続した上からの振り下ろし、左下からの切り上げ、右からの横薙ぎ、左からの横薙ぎ、交差するように斬り降ろしで6回切り、そのまま根元に二本を突き刺して……広げるようにして切り裂いた。合計八連撃だ。
「残り800万くらいかぁ……」
根元には余り傷がつかなかった。部位としての耐久が高いのかも……だけど翼を斬りおとさないと苦戦は必須だ。
「ひよちゃん、低空からの急上昇!」
『ちぃ!』
「左右から来るのは僕がやるから正面突破!」
《真炎王龍の天魔剣》を鞘に収めて
「《獅子の咆哮》! 《女神の加護》!」
光の光線が魔法を薙ぎ払い、光のヴェールが魔法を消し飛ばした。そしてひよちゃんが14翼のドラゴンの頭を越えた。
「秘剣天の型ーー」
撃てば明らかに隙だらけになる技だ。だけど今の落下しながらなら確実に隙が無くなる!
「雷迅!」
高速の二本の突きが落下速度も加えて、14翼の根元を刺し貫く。そのまま
「《解放》ぉぉぉっ!」
爆炎と烈風が内側から14翼のドラゴンにダメージを与える。そしていくつかの翼が弾け飛んだ。だけど半分以上残っている……残り9本……、炎の両翼と風と光、闇が一本ずつ弾け飛んだみたいだ。
「ひよちゃん、追撃!」
『ちぃ(ブリザード)!』
「《ミーティアメテオ》! からの秘剣華の型ーー雪月花!」
突進して叩きつけ、そのまま連続して斬りつける。さらに突いて切り上げる。残り600万、それを確認した瞬間、弾き飛ばされた。
「っ!?」
『ちぃ!?』
落下する僕の体を掴んで飛び立つ。そのまま眺めていると
「っ、《獅子の咆哮》!」
咄嗟の判断で抜いた《レグルスネメア》の剣身でレーザーを弾き返し、ひよちゃんが避ける。そのまま眺めていると
「……翼だけが大きくなって……本体は縮んだのかな」
驚きも束の間、元14翼のドラゴンもとい現9翼のドラゴンが吠えて再びレーザーが放たれた。それを避けて防いで
「動きが速くなっているし範囲は狭くなったけど数が増えた、かぁ」
見に回っているから落ち着いて眺められる。とりあえずポーションとMPポーションで僕とひよちゃんの体力を回復させる。地味にダメージを受けていた。もしかするとレグルスみたいにオーラによる継続ダメージなのかもしれない。地味に虹色のオーラが立ち上っているし。
「うーん……《ソニックブーム》!」
剣を振り、その斬撃が飛ぶ。それは9翼のドラゴンに当たったけど大したダメージが無い。さっきまでのを考えるとおかしいってくらいまでに減っている。
「なんて硬くなったんだ……」
『ちぃ……』
『チイサキモノヨ、オソレトトモニソノミニキザメ』
「え!?」
喋ったぁぁぁぁぁ!?
『ワガナハアクマリュウオウ』
「悪魔龍皇……?」
悪魔ってイメージからかけ離れてカラフルなんだけど。常に色が変わり続けているんだけどね。虹色の波を眺めているととても綺麗だ。
『ワレヲココマデオイツメタノハホメタタエヨウ。ココデヒケバミノガシテヤロウ』
「……?」
『ムロンタダトハイワン』
人間臭い……? それが最初に気づいたことだった。
『恐れと共にその身に刻め』『追い詰めたのを褒め称える』『引いたら見逃す』『代価がある』……うーん……やっぱり人間らしい。機械とは、AIとは思えない感情が込められている気がする。ただのプラグラミングされた言葉じゃない気がする。
「……やだ!」
『オロカナ……ナラバシシテクヤメ!』
悪魔龍皇は吠えると同時に背後の翼からレーザーを放った。それは今までを越える数だ。だけどひよちゃんはそれに臆さない。有り体に言えばビビらない。だから
「前に突っ込めーっ!」
『ちぃぃぃぃぃ(ブリザード)!』
吹雪に包まれるようにしての急加速、それは弾幕を背後へと追いやった。そして
「秘剣華の型ーー向日葵!」
最初の華の型が9翼のドラゴンを7翼のドラゴンへと格下げし、体力が500万をきった。
悪魔龍皇(強そう
ネーミングはリアルの友人が元ネタです
明日彼に何か言われるの覚悟済み
アヤコの出番が無かった件について
地味に気に入っているキャラなんですよね
黒髪ロングの眼鏡黒目の純日本人
身長は165、体重は44と普通
これ以上はネタバレになるので書きません
次回予告
激しくなる悪魔龍皇の攻撃
避けきれないほどの弾幕に被弾するアリアたち
そして悪魔龍皇の本体も動き出し……
次回「悪魔龍皇、墜ちる」デュエルスタンバイ!




